表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
184/302

第五十一章 虹のつまった指輪

 マルケスは言いよどんだ。頭に手をやり、薄紫色の髪をいじり、その手で小さなバッグから、小さな指輪を取り出した。


「これは?」


「僕が作った」


 彼の手のひらにあったのは、乳白色のリングで、、光の加減で七色に変化する、小さな丸い宝石がはめ込まれていた。


「こんなのも作れるんだ! すごい! この宝石も作ったの?」


「そうだ」


「へー! マルケスは細工職人にもなれるよ!」


「まあ、僕なら大抵のものになれるよ。それで、この指輪は、精霊を呼び出し使役する力がある。もっと正確に言うならば、精霊使いやシャーマンの技能である交信の力を得るということか。虹のつまった指輪だ。中々だろ」


 そう言うと、マルケスはそれを俺の手に握らせた。


「ん? どうしたの? え? くれるってこと?」と俺が半信半疑で尋ねる。


「あげないよ」


「え。じゃあどういうこと?」


「貸すんだ」


「貸してくれるというのは嬉しいけれど、でも、俺もうすぐアカデミーを出なければならないんだ。だからさ、ありがたいけれど、受け取れないよ」


「だったら返せばいい」


「いや、だからさ! マルケスも分かってると思うけれど、こんなこと言いたくないけどさ! 返せない可能性もあるだろ! もし、そうじゃなくても、いつアカデミーに帰ってこられるかも分からないし……」


「だから、返すんだ。悪いけど僕は忙しい。出発の際に見送りには行かないよ。実技試験の課題が発表されたんだ。純度が高いミューシ結晶の精製をしなくちゃいけない。アタノールにつきっきりにならなきゃいけないから、時間が惜しい。それじゃあ」

 

 マルケスは言いたいことだけ口にして、俺に背を見せ歩き出す。なんだ? 勝手な奴だ! まあ、そういう奴だって分かってるけどさ……


 俺の手のひらには、虹のつまった指輪。淡い光を帯びたそれ。小さな宝石は七色の輝き。


「あ、ありがとう!」俺は、そう大声でお礼を口にしていた。マルケスはぴたりと立ち止まり、俺の方を見ずに片手を上げ、手のひらをひらひらと振り、また歩き出して行く。


 ちぇっ。素直じゃないというか、子供っぽいというか……


 でも、ありがとう。戻って必ず返すよ。今度は俺がお土産持ってさ。


 色々な人からもらってばかりだ。それが嬉しくも気恥ずかしい。俺も、みんなの力になりたいし、なるからさ。ゼロ。待ってろよ。俺は再び決意を新たにする。小さな指輪を小指にはめ、もらったアーティファクトのことを思いながら部屋へと向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ