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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第五十章 アカデミーで買い物

 売店で、食料と消耗品を補充する。アカデミーなのに、冒険に必要な道具は一通りそろっていたのは驚いた。いや、アカデミーだからなのかな。普通の店には見られないようなものもある。魔道具とまではいかないけれど、耐水性のインクペンとか固形燃料とか、質が良い物が揃っている感じがする。


スクルドに「アカデミーの人も外に出るの」と質問をしてみた。彼女は手にしていた小瓶を棚に戻し、少し考えるような素振りをしてから言う。


「基本的には、教授や学生はあまり外に出ないと思う。でも、アカデミーには決まった年数学んで、自分の国に戻る人が多いから。だからそういう人達の為にも、こういうショツプが必要なんだなあつて、今更そんなこと考えた」


 スクルドは、戻る故郷がないと言う。そして、時間がないとも。でも、アカデミーの学生達は、ここで学んでそれを故郷で生かすのか。ふと、俺は、この天人との問題が終わったらどうするのかなという思いがよぎる。飛揚族については、このアカデミーですらあまり分からなかった。ゼロについては謎が深まった。

 一人、旅に出るのかな。それとも、アカデミーで学ぶことができたら……


 なんて考えを振り払う。今は前に進むことを考えなきゃな。


 買い物をすませて、スクルドは色んな教授に挨拶をしにいくと言って、蓮さんもトカシアに会いに行くということで、俺達は一度解散することになった。俺は今買ったばかりの物を商人の寝床に入れる。ああ、ほんとこれは便利だなあ! この先の旅が身軽になるし、エドガーの持物の心配をしなくてもいいのがほんと助かる。


特に目的もなく、ふらふらと歩きながら売店近くを歩き、とても安い値段で紅茶を売っていた店を見つけた。そこでレモンオレンジの紅茶を買って、外に置かれている小さなベンチに腰を下ろしていた。口に入れると、爽やかな酸味で気分が軽くなる。アカデミーの学生達が、たまに目の前を歩いて行く。


 ちゃんと授業を受けることはできなかったな。でも、もし、仮に体験入学的なことができたとしたら。自分がここで何かを学びたい気持ちが芽生えるのかもしれない。それは悪いことではないし、むしろ、俺のこれからの大きな助けになってくれるだろう。


 今は、無理だけど。


 今。この問題が片付いたら……


 いけない。またこんなこと考えちゃってる。スクルドと違って、もしかしたら、もう二度と来ることがないかもしれないんだよな……


 多分、俺はアカデミーという物に密かに憧れているのかもしれなかった。冒険者になるのが夢だった。その夢がちょびっとだけかなった。いや、まだ夢の途中だけどさ。そうしたら、自分のこと、自分の一族や力のこと、もっと知りたくなった。色んな事を学びたいと思った。


 なんだろ。急に出発することになったからか、名残惜しい気持ちが生まれてきたのかな。


 あーでもしょうがない! 俺は冒険者だ! これからも色んな場所をこんな風に名残惜しむのだろう。もし、俺が本気で行きたいなら、きっとまた行けるさ!


 なんて風に思って、俺は立ち上がり大きく伸びをした。背中の羽にも力を入れ大きく動かす。うーん気持ちいい!


「わっ」という声がした気がした。声の方を見ると、しかめっ面をしたマルケスの姿。どうかしたのかと尋ねてみると「急に羽を動かすから驚いたじゃないか」と言われ、軽く謝った。


「それは、いいんだ。探していたから丁度いい」


「ちょうどいいって、何の用?」


「用と言うほどのものでもないのだが……」


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