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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第四十九章 これからの俺達

 蓮さんがそう聞くと、スクルドは少し困った顔をして、おずおずと口に出す。


「実は、アカデミーが明日にはセレニア大陸の上空に到達するのです」


「それって、明日出発しなくちゃいけないってこと?」と俺が尋ねる。


「いえ。でも、セレニア大陸の上空にいる期間は、明日から四日程度になるかと思います。その間にここを立つべきでしょう。アカデミーから外に出る為には、下に陸地があることを確認して、一時停止が必要になります。通常ですと外に出ることは簡単ですが、一度出ると再度アカデミーに入るには計算をしなければなりません」


「計算?」


「はい。アカデミーは通常ですと一定の軌道上を運行しています。速度もゆるやかです。だからそれに先回りすれば、アカデミーに接触することは難しくはありません。ただ、ワンタイ諸島のような決まった停泊地以外からのアクセスは、アカデミーの関係者が持つアラームが必要になるでしょう。これがあれば、自分の存在をアカデミーに伝えることができます」


「そうか、それがあればスクルドがアカデミーに戻る時も大丈夫なんだ」


「はい。通常ですと、運行状況は分かりますので。運行状況は、大きなギルドや街に行けば分かるという話です。私は記憶しているので大丈夫ですけれど……」


「もしかして、アカデミーから出るの、初めて?」俺がそう質問すると、スクルドは少し考えてから「何度かはありますよ」と返す。もしかしたら、ここに来てから長期間アカデミーから離れることはないのかもしれない。


「スクルドとしては、出発の時期の希望はあるのか?」そう蓮さんが尋ねた。スクルドは少し時間を置いてから言う。


「二、三日後に、アカデミーを立つ準備をしていただけたらと思っています。旅に必要な道具や食料品などの補充は早めに済ませておいていただけたら。アカデミーに売店がありますし、私に言ってくれても大丈夫です。食料品は、降りた地点から首都のカフェットラまで一日か二日、闇葉の地下墓地まで二日程度でしょうか……そこまで心配しなくても大丈夫だとは思うのですが……」

 

 少し心配そうにスクルドがそう言った。でも、冒険者ではないのに何日で目的地につくとか補給はどこでするかを頭に入っているなんて、俺は密かに感心していた。感心していたというか、彼女の真剣さが伝わるのが、何だか少しだけ嬉しかった。そんなスクルドに蓮さんが穏やかな声をかける。


「わかった。ありがとう。非常食を持っていれば、その位の日数なら食べ物は心配しなくてもいいだろう。僕はすぐに出る準備を既にしている。日程はアポロやスクルドに任せるよ」


「はい。ありがとうございます」とスクルドはにっこりとして口にした。


「じゃあ、スクルド。用事が無いなら一緒に、売店に行って食糧を準備しない? お金なら俺が出すよ」俺がそう提案すると、彼女は明るくそれを快諾してくれた。


 でも、どこか、スクルドがいつもよりも元気がないような気がしたけど、考えすぎかな。彼女だっていきなり言われた側なんだから、少し混乱しているのかもしれないな。初めての冒険になるから、色々と心配事もあるだろうし。


 ふと、自分が旅立った時のことが頭によぎった。ああ、俺ってすごい無鉄砲というか考えなしだったなあと、一人で苦笑いをしてしまった。そんな俺を見て、スクルドが「どうかしたの?」って聞いてきた。俺は小さな笑みを浮かべながら「なんでもないよ」って言った。


「蓮さんもよかったら、一緒に売店に行きませんか?」


「ああ。行こう」


 そうして三人でアカデミーの売店へと向かう。これからしばらくは、この三人でパーティを組むんだよな。何だか、不思議な気分。ふと、蓮さんともスクルドが自然に会話をしていることに気が付いた。スクルドは誰とでも仲良くなれそうだし、蓮さんは一部の人を覗けば人当たりが良く、とても優しいし。うまくやっていけそうな、そんな気がする。


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