表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
180/302

第四十六章 演習 新しい地へ

 館には誰の姿もなかった。蓮さんの提案で、エドガーの荷物をまとめて商人の寝床にいれておくことにする。エドガーの装備品や、様々な道具が入った大きなデイバッグ。持ち運ぶとしたら大変だったから、助かるなあ。


 部屋の中で少し、スクルドを待っていたが、来る気配がない。なので、俺は太陽の外套の作り上げる盾の強度を調べるため、蓮さんにお願いをすることにした。蓮さんはそれを気軽に受けてくれる。

 

 館の外に出て、二人で少し開けた場所に向かう。俺は太陽の外套の力を起動して、近くの空間に、小さなホテルの窓にかかるカーテンのような壁を生じさせる。


 蓮さんはそこにゆっくりと向かう。持っている物はない。素手で叩くってことか? そういえば蓮さんが素手で戦う姿って見たことないな……

 

 なんて思ってみたが、よく見ると右手には食事で使ったナイフらしきものが握られている。蓮さんはそれで光の壁を軽くついている。


「これは、石、とまではいかないが、樹木程度の硬度がありそうだ」


「へーそんなものですか」と俺が口にした次の瞬間、壁は音もなく消え去っていた。あ、そうか。樹木程度の硬度があるとしても、その程度だと実践ならほとんど役に立たないってことだよな……


「すみません! じゃあ、次は小型の盾を生み出すので、それをお願いします」


 俺はそう言うと、力を込め、自分の手元にステーキがのるような、それなりに大きな皿(盾としては小さいけれど)を生み出した。


さすがに自分で蓮さんの攻撃を受けるのはきついな、と思い、腕をその空間から「離す」と、その盾は宙に浮いて存在していた。そっか、カーテンを生み出せるんだし、自分にくっつけたり離したりできるよな。


 蓮さんは再びその盾に触れ、ナイフでついてチェックをする。


「これは先程のよりも堅そうだ」


 そう言うと、ナイフで一突き。盾の姿は変わらない。俺がほっとすると、次の一突きで盾の姿は霧散してしまった。がっかりだ。


「まだまだ駄目みたいですね……」と思わず口から言葉がこぼれる。


「そうでもない。このスモールシールドならばそれなりに助けになってくれると思う。できたら、盾で相手の攻撃を受け流し、その隙に炎の魔力で反撃をする。アポロは魔法使いだ。防御手段を得たことは良いこと。ただ、防戦には向かないだろうから、あくまで攻撃する際の補助手段として、このアーテイファクトの力を用いるのがいいかもしれない」


「なるほど……そうですね。盾を生み出せても、敵の攻撃が続いたら俺は対応できなくなると思います。一応これからもこの力というか、盾の能力が上がるようにはしてみたいと思っています。ありがとうございました」


 俺がそう言うと、蓮さんは軽くうなずいてみせた。そしてなぜか後ろを向く。そこにはスクルドの姿があった。彼女は俺達のことを少し離れた場所から見ていたらしかった。蓮さんの仕草で、スクルドはゆっくりとこちらに向かってきて挨拶をする。


「あ、どうしたの?」


「館に戻ったら声がしたから、こっちまで来てみたの」とスクルドは返した。俺は早速、蓮さんから聞いたことをスクルドに問いかけてみた。彼女も臆することなく語り出す。


「うん。当たり前だけど、言葉を受けるのはいつも急なんだ。私は、アポロ達に会う前後に、様々な言葉を受けた。その中で、今日の朝の預言は、『闇葉の地下墓地の祭壇で 赤き翼の天使に跪き祝福を与えよ』って」


「赤き翼の天使! それって……」と俺があの倒すべき天人の姿を連想してしまうと、スクルドは困ったような顔をした。


「その天使が、アポロ達が倒そうとしている人物と何の関係があるのかはまだ分からない。それに、預言の言葉が私たちにとって不利な状況を生み出すものだとはどうしても思えないの。ただ、私はその赤き翼の天使に会わなければいけない」


 そうなんだよな……必ずしもあの天人と関係しているとはいえないんだけれど、でもなあ……俺も気になるというか、どうしても似たような存在だと勘ぐってしまう。


「蓮さん。俺達もやはり、その地下墓地に向かう方がいいのかなって思うんです。俺達が倒すべき存在と関係しているか、確かめたい」


「ああ。僕もかの地で闇の者との接触ができたなら、睡蓮八卦鏡の力を完全にしたい。どちらにしろエドガーが復活するまで時間を潰さねばならない」


「そういえば……あまり考えてなかったんですけれど、もし、エドガーの眠りの試練とかスクルドの預言がないとしたら、次の目的地候補はどこかあったんですか?」


 俺はそう尋ねてみた。すると蓮さんはちらりとスクルドを見た、気がした。ん? 気のせいか?


「ちょっと危険な場所に行こうかという案が出ていた。でも、エドガーがいないことだし、闇葉の地下墓地にいくということで話をまとめてもいいかな」


「お願いします」とスクルドは即答した。俺もそれにならった。でも、危険な場所ってどこだろう? 蓮さんが口にするってことは、相当な場所なんだと思うんだけど……


「蓮さん、参考までに聞いておきたいんですが、その危険な候補地ってどこなんですか?」


「僕が生まれた場所」


「え!」と思わず声が出てしまった。あんな思いをした場所に、ジパングにまた行かないといけないのか? なんで? 


 俺がよほど慌てた様子をしていたのか、蓮さんは苦笑いをしてみせる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ