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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第二巻 機械仕掛けの天使と 永久の別れ
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第五章 潮風の匂い

「おい、お前、のぞき見なんて趣味悪いぜ」


と、歌を中断させて、いきなりエドガーの声。彼の眼はどこについているんだ! 俺は大人しく下りて、自分も練習中で、あと、エドガーの歌声が意外で、綺麗で、聞きほれていたと正直に言った。


 大きな身体のエドガーは困ったように笑って、


「俺、歌う時とか高音も出せんの。でもそう言う声だとなめられるだろ」


「ねえ、エドガー、今の曲なんて言うの? どういう意味の歌詞なの?」


「バカ、知らねーよ。歌詞に意味なんてねーよ。歌いたい気分だった、それだけだ。ガキはさっさと帰って寝ろ」


 俺は大人しくその言葉に従っていたけれど、あの、切なくも甘い歌声が、頭から離れなかった。でも、俺がこれ以上何か聞き出すのは、無理と言うか、何故か野暮な気がした。大人しく宿のベッドに向かうと、蓮さんが部屋で刀の手入れをしていた。俺は、エドガーの歌が、とてもうまいことを言うと、蓮さんは微笑み、


「エドガーは、剣の練習をしながら歌うのが好きでな。でも、身体に似合わず、ロマンテイックな、甘い歌声だっただろう? 十年以上前からそうでな。剣を教えていた時も。『英語』と言う、昔使われていた音楽の歌を好んでいた。勉強は嫌いだが、その『歌』は好きだと言っていた」


「へえ、意外だったんですよね。でも、あの歌でお姉ちゃんを口説いてるのかなと、今思いました」


 蓮さんは笑って、そうかもな、と言った。俺は続いて、


「蓮さんの国の歌ってどんなものがあるんですか」と質問すると、少し間があって、


「僕は、その、音痴なんだ。だから、ジパングの歌にはあまり詳しくないんだ」


「蓮さんが音痴、というのも意外だ。エドガーが音痴で、蓮さんが甘い歌声ならピンと来るのに」

 

 どす、ドスドス、と、足音がして、蓮さんは「そろそろ寝ようか」と口にして、俺も寝たふりをすることにした。その足音の主が部屋に入る。彼はベッドに腰掛け、剣を下すと、


「アポロ、あいつ、ヤベーな。あんな成長の仕方してる奴初めてだ。ちゃんとアイツの魔力や飛行能力とかを伸ばしてくれる、師匠がいればいいけど、さすがに飛陽族だっけ、それだと難しそうだな」


 俺は、それを寝たふりで聞いていて、密かに、物凄く感動していた。エドガーは、ちゃんと俺のことを見て、考えてくれていたんだ。いつも憎まれ口しか叩かないのに。


 俺が感動していると、話しは蓮さんとの数年前、もっと前の話になり、聞いた誰でもが分かること、二人にしか分からない話をしていて、俺は興味深いけど、いつしか眠りに落ちていた……


 カーテンを開き窓を開け、差し込む光は肌を熱く優しく照らす。最高の出航日和に、顔がにやける。朝はアサリとペペロンのパスタで、朝からがっつり、元気いっぱいになる!


 買った船のチケットは一等船室だという。楽しみだ! 船着き場に行くと、俺ら以外にも大量の人、これから船に乗る人、見送る人、降りる人等がいて、その騒がしさがまた、俺をわくわくさせた。


 出航には未だ時間はあるけれど、荷物を置きに、チケットの一等船室に向かうと、


「え? なんか狭い?」というのが第一印象だった。いや、部屋の中が悪いという訳でもないのだが、男三人、うち二人が結構な長身なことを考えると、というか、単純に船室ってこんなものなのか? でも、エドガーも「一等を取ったのに、ちょっと狭くねーか?」とぼやく。


「まあ、二日の短い船旅だ。この間なら十分だろう」と蓮さん


「でも、この部屋にヤロー三人もいるのは、むさ苦しいな、別にどうでもいいけど甲板にでも行くか。そろそろ出港だぜ」


 それを聞いて、三人、船出を見る。いかりが上がり、ゆっくりと、船が陸から離れていく。別れを告げる人がいるわけないけど、街で手を振る人々に、俺もなんとなく手を振る。ほんの少しだけ、センチメンタルな気分になる。また、父さんとの出会いと別れを思い出してしまっていた。


 これから先、俺がもっともっと強くなったら、また家族の、同じ飛陽族の皆と会えるように、自分から探せるようになれたらいいな。そんなことを考えていると、出航する船の、潮をまとった風が肌の上をすべって、すごく気持ちが良かった。そうだ、俺はまた、旅に出ているのだ。


 太陽の光を浴びた海面はきらきらしてとてもきれい。乗客は、冒険者と一般人が半々といった所だろうか?


 気持ちがいい、けど、暇だ! エドガーと蓮さんが、部屋で休んでいるのか寝ているのかしているのかが分かった気がする。当たり前だけど、ここじゃあ飛んだり魔法の練習もできないからなあ、かといって、何かできる部屋もないし、あーあ、今夜の晩御飯が楽しみだ……


 と、そんな俺に声をかけてきた人がいた。中々屈強そうな戦士だ。彼はにこやかな顔で、君も冒険者だろう、どこへ行くのか、と尋ねてくる。ちょっと迷ったが、正直に天使の里と告げると、彼は、


「そうだよな。実は俺のパーティもそうなんだ。君はエドガーと鳳来蓮と一緒だから気が楽かもしれないが、それにしてもなんだかうさんくさいクエストだよなあ」


「そう、ですね。天使? 天使の里の人? が、こっちの大陸まで募集をかけるというのも謎ですし」


「そうそう。報酬もそうだが、かなりの高難易度な要求をされるのかもなあ、まあ、ここまできて考え過ぎるのも良くないからな、それじゃあ、また、会う機会があったら!」


 そう言って冒険者の人は移動していった。うーんそうなんだよなあ。でも心配して解決できるようなものならそうするし、俺もそんなに心配しないで行こう。

 


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