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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第三十六章 君もなの?

俺はそう言ったけれど、トカシアの顔色は変わらない。うーん。からかわれているのか……


「それじゃあ頼んだよ。生憎だがもう少しで講義が始まるんだ。呼んでおいて悪いが席を外してくれないか?」


「あ、はい。ありがとうございました」と俺は反射的に口にしていて、何だか不思議な心持で部屋を後にする。頼んだ、ってなんのことだろう。蓮さんの身体についてか、調律についてかな? うーん。でもなあ、正直自分の力について、何か分からないけどできた、みたいな曖昧さがあるんだよね。


 ここの学生とか教授みたいに、しっかりと講義、授業を受けたわけじゃない。だから、なんとなくできるとか、試したけどできなかったとかそんな感じだ。


 でもさ、俺もパーティの役にたったことだってそれなりにあるし。新しい能力だって手に入れたみたいだしな!


 俺は一人で落ち込んだり立ち直ったりしながらルディさんの館へと戻る。ダイニングに向かうと、夕食の準備ができていた。ルディさんが「あら、丁度いいタイミングね」と銀のトレーで食器を運びながらほほ笑む。学長としての仕事もしながら料理の用意までしてくれるとか、つくづくすごい人だなあと思う。


 テーブルの上には大きな鍋。真っ赤な色で、野菜がごろごろ入った煮込み料理らしい。それと大きな皿には白パンが沢山。おーこれを見たらお腹がすいてきたぞ。


 アツアツの鍋。おいしそう。そして鍋敷きが見たことがない感じだ。マーブル模様の石みたいでなんとなく聞いてみると、とても優れた保温効果がある物らしい。さすがアカデミーですねと俺が言うと、ルディさんは「アカデミーは関係ないの。山岳民族ご愛用の一品よ」と笑って言った。


ささやかなルディさんの手伝いをしながら少し待っていると、エドガー、蓮さん、スクルド。呼ばれたように全員がテーブルの周りに集まってきた。


スープにスプーンを入れ一口。ジャガイモに人参にとろとろの牛肉。うーん、おいしい! 口の中に味が残っているうちに、ちぎった白パンを口に放り込むと、パンがうまみを吸い込んでこれまたおいしい。


あー美味しいなあ。これは材料がいいのもあるだろうけれど、スパイスが独特な気がする。今まで食べたことがない不思議な後味がするんだ。おいしいけど、ちょっと例えようがない初めての味なんだよなあ。気になるけど色々聞きたいから、食事が終わったらルディさんに聞いてみようかな。


そんな風に俺が考えていると、エドガーが大きなパンを両手でちぎりながら言う。


「でさ、俺は卵に入るから、お前ら二人でリッチだか天使だかぶっ飛ばしとけよ」


「え! それ決定したの! というか、今言うのそれ!」


 そう俺が驚いて口にしたが、蓮さんの反応は薄い。まあ、蓮さんは了解したって話だけど……それに俺もエドガーが一度決めたんだから、他の人が何を言っても仕方がないんだって分かってたけどね。分かってたけど、ルディさんやスクルドもいるんだし、もっと落ち着いた時間に言うべきだと思うんだけどさあ……


「二人じゃないです。三人です。私も同行させてください」


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