第四章 港町での買い物 勇士の歌声
エドガーは舌打ちをして「いいだろ! これも交渉の内だ! 店員がアーティファクトだと分かっているなら値段を元から高くすればいいし、気づかずに売るのはタダのアホだ」
「そうカリカリするな。別に悪いとまでは言ってない。それに、僕も久しぶりに港町に流れ着いた、道具を見てみたい」流れ着いた? あ、色んな冒険者が港町には来るってことか。でも、やっぱ、何にせよ楽しみだな!
少し古びた薄暗い店内、ガラスケースの中には、分かりやすい宝石やアクセサリーの類もあるが、どう使えばいいのか全く分からない商品もかなりある。エドガーが俺に目配せする、のだが、どうやらここにアーティファクトはないようだった。
それをアイコンタクトで告げると、エドガーはとたんにやる気をなくしてしまったようで、外に出てしまう。だけど蓮さんは一つの商品を真剣に見ていた。それは、緑色のアクセサリーらしく、蓮さんはそれを購入していた。少し珍しかったので尋ねてみると、
「これはジパングでは勾玉、と呼ばれるお守りのようなものだ。おそらく翡翠だと思うが、まあいい。たまには、お洒落をするのもいいかなと思ってな」
蓮さんはそう、少し照れたように言って、それを財布へとひもで結びつけた。
その後は今夜の宿探し、と言っても港町、宿には困らない。
適当な所をエドガーが決めて、それから夕食を食べにくり出した。
その店が当たりだった。もう、海産物は何でもおいしいし、値段もリーズナブル(払っていただいているのは、エドガー大先生ですが……まあ、俺も当分タダ働きだろうけどね!)だし、個人的にはこのキキンキの煮つけが本当に美味しい! 口の中に入れるとほろりとほぐれる、濃厚だけど、くどくない。白身魚のうまみを引き出してる。うまい。
エドガーと蓮さんはタホタテの酒蒸しがお気に入りらしく、すんごい貝殻の数が皿に積みあがっている……やっぱ戦士タイプの人は、好きな物なら食べる量も半端ないんですね……。
それからはみんなで宿に戻り休憩、ということだったのだが、俺にはやることがあった。そう、飛び方は結構すぐに慣れたのだが、二つの手の力の能力を学ぶこと。
薄暗く、空に半月が綺麗な夜、俺は部屋を出て、人気のない所で翼を広げ、上空へと飛ぶ。左手の鷹の力を意識して、放つ、すると衝撃波のようなものが出せた。でも、それに応じて僕も強い反動で、空中で倒れそうになる。
うーん、もしかしたら、僕の全体的なレベル、身体の能力、筋力が足りないせいかなあ? この左手を使いこなすには、まだ時間がかかりそう。
一方で、右手の太陽の紋章は、それなりに自信があった、というか、まあ、使いこなせていた。多分こちらは魔力に依存した能力なのだろう。それと、おそらくは、飛陽族、太陽を信仰した、加護を受けた一族だったからか、炎の力とは相性が良いみたいだ。
右手に力を込め、人気のない、平地へと放つ。光線のような炎も、俺の前方を覆うような、盾のごとき炎も、ファイアーの魔法のような火球も、すんなり出すことが出来た。
ただ、ものすごい、疲れる、精神力が削られる。飛ぶのだって、ふらふら。そうだよな。この力もレベル、魔法力をあげてから、使いこなせるものだもんな。
少し休もうと、僕がふらふら地上へと下りようとした時、エドガーを見つけた。最初は何をしているのか分からなかった。でも、よく見ると、なんと彼は音もなく、あの巨大な剣を曲芸師がお手玉を投げるように投げては振り回し、おまけに、歌を歌っていたのだ。
エドガーの歌。それは甘い声で、切ない曲だった。
昔詩人さんに聞いた。天使は、祈りの歌を歌いながら剣を振るうんだった。
俺は、かすかに聞こえる、エドガーのその甘い歌声に酔いしれていた。
but not for me/Chet Baker
(※一部意訳です バット・ノット・フォー・ミー チェット・ベイカー)
They're writing songs of love, but not for me,
人々は愛の歌を書いているけれどさ,俺に向けて書いている訳じゃない
A lucky star's above, but not for me,
空には幸運の星が輝いているけれど,俺のために輝いている訳じゃない
With love to lead the way, I've found more clouds of grey,
俺の恋の行く末には,暗雲が立ち込めていた
Than any Russian play could guarantee.
それはもう「どこかの国の演劇」なんて目じゃないくらいのね
I was a fool to fall, and get that way,
恋に落ちて,その上こんな風になっちまうなんて,俺ってなんてバカだったんだろう
Heigh ho! Alas! And also Lackaday!
やれやれ……あー! もう、嫌になる!
Although I can't dismiss, the memory of his kiss,
あのキスは忘れられないけどさ
I guess he's not for me.
あの人は俺のものではないみたい
「おい、お前、のぞき見なんて趣味悪いぜ」




