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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第三十一章 ふしぎな卵

 聞きなれた声。声の方を見ると、軽装のエドガーがいた。俺は学園の周囲をふらふら歩いていたらしい。ちょっと話があるんだと言って近くのベンチに腰を下ろすと、エドガーは素直にそれに従ってくれた。


 俺は先程あったことをエドガーに話した。彼は真剣そうな顔をして黙ってそれを聞いてくれた。俺が喋り終えると、彼は少し間をおいて「まあ、手掛かりができてよかったな」と言った。俺はそれを聞くと何故だかほっとして「うん」と返した。


 すると、エドガーは急にニヤニヤした笑みを浮かべ「お前、マガタってじいさん知ってるか?」と聞いてきた。


「マガタ教授だっけ? 幻術や時空術のエキスパートとかいう人のはずだけど」


「そうだよ、そのじいさんが眠りの期間を短くできるらしい」


「え? どういうこと?」


 するとエドガーは少し困ったような、でも嬉しそうな笑みを漏らす。


「俺もよく分かんねーんだわ。まあ、龍人、龍族の長い眠りってのは、ただ眠るということもあるけれど、俺の場合は眠りの中で夢魔を殺し続けると目が覚めるらしい。まあ眠りという名の夢の中での試練ってことらしいんだわ。ここまでの話は喜撰に聞いたことだ。そんでよ、マガタってじいさんにたまたま会って色々話したらよ、あいつは龍の試練もはらたまも喜撰のことも知っていて、自分の時空術で眠りの中の時間を現実の時間よりも早い流れにできるらしくって」


「えーと、つまりどういうこと?」


 俺がそう尋ねると、エドガーはポケットから手のひらに収まるくらいの、灰色の卵を差し出して見せた。これは……「アーティファクトだ……」


「そうだ。お前なら使えるはずだろ。マガタのじいさんの力で、俺はこの中で眠りに入る。そんで、お前が力を開放すれば俺はこの卵から出られるってことだ。だからよ、俺は眠りにつこうかと思うんだけど。ああ、蓮にはもう話は通した。蓮は良いってよ。ただなるべく早く頼むって。まあ俺も一か月位でどうにかできねーかって思ってるんだけどな。知らねーけど」


 そう言いながらエドガーは笑った。え! 今、エドガーがいなくなる、というかパーティから外れるってこと? それは……いつかはそれをしなければならないにしても、単純に旅を続けるのに大きな痛手になりそうだ……


 なんて返事をしていいか分からない俺に、エドガーは軽い調子で話し出す。


「だからよ、普通なら短くても半年とか一年とかかかるらしいんだわ。それがマガタの魔法をかけてもらって、しかもこの卵のアーティファクトの中で眠るなら、数日とか……まあ、数日はないだろうけど、とにかく早く終わるのは確実、らしい! だからよ、チャンスなんだよ。一年……あと十ヶ月? 後にリッチとの約束の時が来る前に、俺はどうしてもこの眠りを経なければならねーんだ」


 そう熱っぽく語るエドガー。話は、分かる。別に変なことは言ってないと思う。でも、俺は簡単にそれに賛同できなかった。


「それは……便利だと思うけれど……もし俺が力を開放できなかったら? 旅の途中で俺がそれを無くしてしまったり……俺が、死んじゃったら……」


「ああ大丈夫だ。眠りが終われば、卵が壊れて自力で出られるらしい。アーティファクトの力を借りた眠りだから。お前なら強制的に俺を眠りから覚ませるらしい。その時も卵は壊れるし、マガタの術だって解けるから最終手段ってところだけどな。まあそんな深く考えんなよ。心配したらきりがねーんだしよ」


「らしい、らしいって……いやーこれは色々悩むだろ」という言葉を飲み込む。蓮さんが良いって言ったんだし、エドガーが自分の意見を変えるとは思えなかった。俺は渋々「分かった」と返事をした。エドガーは俺の肩をばしばしと叩き、


「おう。さっさと帰ってくるから安心しろ。明日か明後日、マガタに卵の中に入れてもらうから、その時はアポロも来いよ」


「うん」


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