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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第二十七章 バプテスマ

「そういえば、ゼロのことに気づいたの?」そう俺が質問をすると、優し気な声が室内に響いた。


「突然ごめんなさいね。私も同席したかったのだけれど、他に講義があって、今時間が出来たので声だけで失礼します」


「この声はルディさん? それでこれは……」


 何だ? 魔法? 機械? 俺が状況が分からないままうろたえていると、ルディさんが言葉を続ける。


「アカデミー内の施設は中を見たりこちらから会話や魔法での干渉ができるようになっています。あくまで安全の為に行われていることであり、その権限は私にしかありませんから、安心してくださいね」


 どういった仕組かは分からないが、まるで近くに彼女がいるような声の感覚に少し戸惑ってしまう。俺がなんて言ったらいいか分からずにいると、ルディさんが続ける。


「そこで少し待っていて下さい。声だけでは失礼ですし、少し早くなりましたが話もあるので、今から向かいますね」


 そう言うと、声が止んだ。俺は反射的にマルケスを見たが、彼はそれがどうしたの、とでも言いたそうな冷静な表情。


 プロジェクト・ゼウス。にわかには信じられない話だ。ゼロ? 君は一体……


 俺は胸から下げている宝石を軽く握る。しかしそこから何も感じることはなかった。


 俺とマルケスは黙ったまま。少し時間がたち、ブレザー姿のルディさんが現れた。そのブレザーには星と太陽と樹の刺繍がされている。彼女は「ここで話しをはじめてもいいかしら」と穏やかな声で告げ、俺はうなずいた。


「ありがとう。何から話せばいいでしょうか……まず、マルケスが言った通り、アポロが胸から下げているペンダント、ゼロというアンドロイドの青年は、プロジェクト・ゼウスと深いかかわりがあるものだと考えて間違いがないでしょう。プロジェクト・ゼウス。それはあくまで歴史に刻まれた計画であって、目の当たりにするとは思いませんでした。しかし、計画者、或いは計画を発動する、発動して別のことに転用する者がいるという確率が高いと見ていいでしょう」


「それは……誰ですか? リッチ? 朱金の天人? もしかして、俺ですか?」


ルディさんは小さな沈黙の後で言った


「それは、今は未だ分かりません。しかしその宝石、ゼロは普通の人物ではその力を開放できないはずです。リッチは『封印』ができたようなのですが、それの力を引き出すことはできなかった。できたならば、リッチか朱金の天人が、その宝石を戦いの最中に奪っていると考えるのが自然でしょうか」


「つまり、いや、やっぱり俺がゼロの力を引き出せて、そして、プロジェクト・ゼウスの力を引き出せる俺は、この計画の発案者ということでしょうか……」


 俺は、案外冷静にそう口にしていた。そう考えると、話の筋が合うような気がした。


「そういう考えもできます。しかし、私は別のことも考えています。この計画は一人で行われたものではないということが、古文書の記述に残っています。アポロはその計画に近しい存在であったか、何らかの理由によりそれを発動する才能を持っているということになります。アポロ。あなたは自分について深く知る覚悟はありますか?」


 真剣な口調で語られた、ルディさんのその言葉に、俺は臆することなく答えた 


「はい。俺は知りたい。知るべきだとも思っています」


 彼女はいつもの微笑を浮かべ言う。


「わかりました。マルケス。バプテスマの準備をお願いします」


「はい」とマルケスは言うと、少し歩き、部屋の壁に触れる。すると、その手には大きなガラスのゴブレットが握られていた。


そのゴブレットにはアーティファクト反応があった。しかし俺はそれに触れようとはせず、身を固くする。


マルケスがそれをルディさんに渡す。それを手にしたルディさんがゆっくりと俺に近づいた。


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