第二十五章 優秀ですから
「申し訳ないが、僕が知っているのはその種族がはるか昔に、メサイア大陸で暮らしていたということ位だ。彼らの生活の多くは謎に包まれているが、錬金術とアーティファクトの技術に優れていて、どうやら、あまたの太陽神の中でもアポロとホルスとインティに関連があるという記述が残されている」
ああ、やっぱり、俺の種族は「昔」の種族なのか……どこかで分かってはいたけれども、こうやって物知りの人から口に出されると少し落ち込んでしまう。でも、俺みたいな生き残りというか、血は途絶えていないはずなんだよな……そう思わないと、何だかくじけそうになる……
意気消沈している俺に、マルケスは変わらず冷静な声で質問をした。
「アポロ、君のその名は受け継いだモノなのか?」
それを言われるとすごく恥ずかしい気持ちになってしまった。まさか、神様の名前を勝手に名乗ってますとはねえ……でもしょうがないからそれをマルケスに伝える。しかし彼は茶化したりなんてしなかった。
「でも、ただの偶然かどうかは分からないが、君は強力な炎の力、太陽の力を授かっているようだ。さっき君には魔法の才能がないかもしれないと言った。しかし、君には強大な魔力とアーティファクトに関する才能はある。そして、詠唱という点で言うならば、君の魔法技術は龍や精霊の行使するそれに近い。ドラゴンが炎を吐くのに呪文なんて言わないし、シルフが風を操るのだってそうだろう。君はその種族の力で魔法を操っているんだ」
な、なるほど。正直理解していない部分もあるのだが、そう言われると確かにそんな気がしてきたな……ジェーンや実物提示教育の教授が難しい魔法を使うのはモンスターではなく人間だから。って! その理屈でいくと俺って! モンスター!?
その質問をマルケスにぶつけてみると、彼はやれやれと言った表情を見せ、
「アポロ。モンスターというのは人間側がこちらに害をなす種族を総称して言っているだけだ。君のその勢いだと、場合によっては天使も精霊もモンスター扱いになる。雑草と言う名の植物はないのだよ、アポロ」
「は、はあ……でもさあ、それだと、俺とかの種族がとても得してるってことなのかな。詠唱なしで魔法が使えるし、詠唱ありのなんか高度な魔法だって学べば使えるようになるってことでしょ?」
「そこが難しい所なんだ。大雑把に言うが、人間の魔導士は学習や修練により徐々に魔法力を高めることができる。しかし特殊な種族は魔法力を学習によって高めることが困難な傾向にある。そういった種族は何らかのイニシエーション、儀式を経て、魔法を習得するケースが多いとされている。例外は勿論あるが、人間は日々の鍛錬で、個人差はあるが『レベルアップ』が可能だ。しかし特殊な種族は飛び級で何かを習得できる代わりに、普通の修行では効果が薄いということだ」
「う、そ、そうなんだ……それはいいのか悪いのか分からないけれど……それにしてもマルケスってやっぱり物知りだね……まるで教授みたいだよ」
「そうだよ、僕は教授だ」彼は顔色一つ変えずにそう言った。