第二十四章 魔法について
「アポロ、君が使える魔法を一通り教えて欲しい」
急にマルケスがそう言った。少し俺は困ってしまった。そういえば、俺、魔法っていうか、太陽の紋章の力で力を発動していたような……マルケスにそれを説明した後で、ライトや初歩の水系統の魔法も使えると告げる。
「そうか。アポロには魔法の才能がないか、或いは未だ眠っているのかもしれないな」
「才能がないって! 一応俺結構巨大な炎を出したりできるんだけど! 見せてみようか?」
ちょっとムキになって俺がそう言うと、マルケスが冷静な声で「ああ」と返した。
俺は右手の紋章に力を込め、魔力が集中してくるのを感じると、天に向けて放つ。勢いよく放たれた業火に、自分でも少し得意げになる。
俺は集中を解くと、炎も消えた。当たり前、なのか幸いなのか。壁など、この空間に被害はなさそうだ。
「じゃあ次は水の回復呪文を見せてくれ」
何だか試験官みたいだなあと思いながら、俺はマルケスに近寄ると、ヒールウォーターを彼の身体に降り注いだ。で、これ以外は魔力感知やライト位しかできないぞ……
なんて俺はちょっと気まずい気持ちを持て余していると、マルケスが尋ねてきた。
「詠唱はいつもしないのか?」
「あ、そういえば。俺、ちゃんとした魔法スクールに通ったり、古文書とか魔導書を読んでないから、そもそも詠唱ってよくわからなくて……」
「分かった、ならそこから始めよう。魔法を使う者たちの間でも、大きく分けると詠唱を必要とするものとそうでないものに分けられる。詠唱の言葉と言うのは、精霊やら悪魔や神との契約の言葉であったり、魔導書等の力を引き出しているものであったり、自己集中の為であったりする。そして、高位の魔導士であればそれを省略することもできるだろう」
「え、てことは、俺が強い炎の呪文を詠唱なしで使えるのって、俺がすごい魔導士ってこと?」
「違う」とマルケスが即答する。なんだよ……ちょっとボケただけなのに!
「魔法には幾つかの領域がある。代表的なのが火と水、土と風、光と闇、といった所だ。これにより高度な領域である幻、妖、召喚(召還)、時間、機械、血(命)といったものがある。アポロが使った水の術は、魔法が使えるものなら、ほぼ誰でも使えるものだ」
「え! うそ! 俺、あれをジェーンっていうかなり力のある魔法使いに教えてもらって、自分なりに結構練習して、やっと少しは使えるようになってきたんだけど……」
「だから言っただろ。アポロには魔法の才能がないのか、またはまだ眠っているのがあるって」
「そんなこと言われたって……じゃあさ、さっきも聞いたけど、俺が炎の魔法を使いこなせるのはどういうことなの?」
「それは君自身が知っているんじゃないか?」
「俺が、飛陽族だから?」
「そうだ」
「え? あれ? もしかしてマルケスは飛陽族を知ってるの!! 教えて欲しい! 些細な事でもいいから!」