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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第十八章 アカデミーの謎

ベッドに腰かけてぼんやりしていると、ルディさんがやってきた。彼女は穏やかな笑みを浮かべながら俺の身体の心配をしてくれた。俺は自分が不用意な行動をしたことを謝ると、彼女は手の甲で優しく俺のおでこを叩いた。


「マルケスが謝ってきました。自分が悪くて、アポロは悪くないって。でも、古代魔術師たる者、アカデミー内で不用意に封印を解いたり、力を開放したらだめよ」


「……すみません……あの……マルケスは……」


「怖い教授に怒られている最中。でも、いつものことだから」と軽く笑う。しかし急に真面目な顔になったルディさん。


「でもね、あの子からも説明があったと思うけれど、知恵の林檎は特別なアーティファクトなの。アポロが知恵の林檎に触れて気を失ってしまったけれど、アカデミーの誰もが、あのアーティファクトの力を本当に引き出すことはできない。できることはただ、預言を受け取ったり言葉を読み取ることだけ」


「預言……ルディさんたちは運命の三姉妹って……」


「そう。私たちは知恵の林檎に選ばれた、運命の三姉妹。長女のウルズ姉様とは、今面会はできないのだけれど……それで、今は私が学長を勤めているの」


 聞きづらい疑問が幾つか頭に浮かぶ。しかし俺は一つの疑問を口に出すことにした「このアカデミーは、本当は何なんでしょうか?」


「そうね。少し難しい問題だわ。文献には、ここが古代の巨大戦艦だとも、神の避暑地であるという記述が読み取れる。未だにこのアカデミーでも意見が分かれているの。それと、アポロやエドガー達が知りたがっていることについても、少し調べなければいけない。少し時間をくれないかしら。必ずあなた達の力になるわ」


 ルディさんはそう言って柔和な笑みを浮かべた。俺は慌ててお礼を言う。すると、銀のトレーを手にしたスクルドがやってきて、俺に紅茶を手渡してくれた。湯気と共に香る、ほのかな林檎の匂いが心地良い。


 俺がゆっくりと紅茶を味わっていると、ルディさんは少し首をかしげて、


「やっぱり歳が近い者同士がリラックスできそうね。スクルド、アポロをよろしく。それじゃあ夕食時にまた会いましょう」


 ルディさんはそう言い残すと、さっと部屋から出て行った。残された俺はスクルドと二人きり。ええと、何を話せばいいんだ……何かしゃべらなきゃと思うのに、口にするのは紅茶ばかり。カップの中は空になってしまった。


「アポロ、よかったら私の部屋に来ない?」


「え!!」と思わず声が出てしまって、しかしスクルドの表情は変わらない。お、女の子の部屋に入るとか、俺、はじめてなわけで……


 いや、そういう意味じゃなくて、やましい意味とかじゃなくて、でも緊張しているわけで。


 俺が考えも視線もきょろきょろしていると、スクルドは空になったカップに紅茶を注ぎながら言う。


「貴重な物や強力な物はないけれど、アーティファクトや魔道具もあるの。暇つぶし位にはなるわ。いこう」


「うん」と俺は反射的に口にしていて、急いで紅茶を口にして、スクルドに笑われる。俺はぎこちない笑みを浮かべる。


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