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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第十六章 エッグ

 俺は生唾を飲み込む。あの物体が何であるのか。一度わきあがってしまった誘惑には勝てなかった。ゆっくりとガラスケースの中の林檎に近づき、手を伸ばすと、見えない壁がその邪魔をする。


 しかし少し力を入れるだけでその壁は崩れてしまって、誰かの声がした。


声?


いや、何かの音楽かもしれない初めて聴いたはずなのに、どこか懐かしい気がする、この曲は……


気持ちが良い。意識がうつろう。俺の眼の前は真っ暗になる……


 青い花と天使に彩られている見慣れない天井。天井? ここは……


 ふと、俺は自分の手が握られていることに気が付いた。俺の視界には……少女……俺を覗き込んでいるのは「スクルド?」


 そう声を発したつもりだったが、言葉にはならなかった。その代わりに彼女は小声で「よかった。大丈夫だよ」と言った。伝わる彼女の体温。それが何だか心地よい。


俺は、どうやらどこかのベッドで寝ているらしい。慌てて上半身を起こす。


「いいよ、未だ寝ていて」と少し慌てた様子でスクルドが声をかけてきた。


「いや、あの……何が何だか……あ……ごめん……多分だけどさ、俺とマルケスが、何かしちゃいけないことをしたってことだよね……記憶が飛んでしまって、気が付いたらベッドの上で……」


 スクルドは困ったように笑った。


「さすがのマルケスでも、今回の件は悪戯じゃすまないかもしれない。でも、発見者が私だったの。だから私と姉様……学長以外は知らないはずだから、放校とかにはならないと思うし……」


「そっか、事情をあまり分かってないけどさ、入っちゃいけない場所に入ったってことだよね。誤って済む問題はかは分からないけれど、ごめん。軽率だった」


「ううん、アポロは何も知らなかったんだから、しかたがないよ。でも、マルケスは目を離すとすぐにこんな風なの。学園一の問題児で優等生」


 そう言ってスクルドは軽く微笑んだ。マルケスは今学園長か誰かに怒られてるのかな? マルケスのことだからうまく切り抜けているといいんだけど……でも……あの場所って……


 俺は思い切って、スクルドにあの場所が何かを聞いてみることにした。彼女は小さな沈黙の後で窓辺に視線を移して、静かに語り出す。


「様々な、アーティファクトや魔道具や貴重な文献や、アカデミーの教授たちでも分からない物が保管されている場所。エッグって教授は呼んでいて、一部の学生は開かずの宝物庫って呼んでる。あの場所は、普通の学生や教授ですら開けられないの。でも、やっぱりアポロはできたんだ……」


「あれ、ちょっと待って。あそこはアーティファクト反応があまり感じなかったというか……それを言うと、このアカデミー自体が何だか不思議な建造物みたいな気がして……たまにすごいアーティファクト反応を感じたり、感じなかったり……」


「それはね、この建物、空中都市のアカデミー自体が巨大なアーティファクトだから。そして、その力を十分に開放しているわけではない。ここにある様々な施設、設備、アーティファクトもそう。力を制御されている」


 多少、勘づいていたことだった。しかしそれを明言されると、少しだけ心が揺れた。頭によぎるのは、あの「存在してはならない帝國」のこと。でも、それは「存在していない」はずだった。


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