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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第二巻 機械仕掛けの天使と 永久の別れ
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第二章 新たなアーティファクト 海へ行こう!

「人魚の涙?」と俺。すると、蓮さんが説明してくれる。


「アーティファクトだと言われているが、一般の人にも扱える。とても美しい深い青の宝石らしい。身に着けると、いつまでも水中で息ができるとか。古代魔術師や人魚たちが本来の力を引き出すと、何かが起きる、らしいが、エドガーはどうしたんだ? こんなロマンティックな物を欲しがるなんて」


「単純だろ。ずっと呼吸できるとか、いいだろ。海で戦う時や難破した時にも役に立つかもだし」


 ロマンティックのかけらもないなあ、と思っていると、エドガーは俺の両肩を握って、


「どっかの誰かさんが、俺みたいな人間でも飛べるかも、って可能性を奪ってくれたからなー。その分も働いてもらうからなー」


 と俺の肩を握る、痛い……です、でも昨日疲れているのに、俺に買ってくれた高価な鎧の背中に、翼が出し入れ出来るように、ちゅうちょせずに剣で切れ目を入れてくれたのだ。やっぱり、優しい……痛い……!!


「それで、僕への報酬はどうなる? 情けない話だが、持ち合わせが少ないから、刀の手入れや雑費が必要だ。裏・村正を研ぐには、専用の砥石が必要でな」


蓮さんがそういうと、エドガーは手を離して、申し訳なさそうに、


「そりゃそうだ。この前も了承の上とはいえタダ働きだし、剣は男の命だからな。ただ、宝石をもらいたいとは蓮もおもわないだろ? あ、そうだよ。さほど価値はないだろうが、小さなアーティファクトをいくつか俺持ってるし、こいつに試させてみようか。必要ないなら売ればいいんだし」


「効果を確かめるのはいいと思うが、アーティファクトは、思わぬ所で役立つものだ。だから簡単に手放さない方がいいだろう。特に今は魔法を使えるのがアポロしかいない」


「確かにそうだな。俺らのレベルに釣り合う奴がいねーんだよ、なあ、れべる3のまほうつかいくん!」


「レベル12です!」と訂正しながら、投げられた白い球体に軽く力をこめる、と、人も建物内も何もかも、ホテル内が一面の銀世界になっていた。俺が呆然としていると、


「逃げるぞ」とエドガー! その背を捕まえ「逃げるな」と蓮さん。

 俺は、軽く力を入れていただけだから、今度は逆に力を吸収して消え去るようにすると、景色は、瞬時に元に戻っていたようだった。慌てる周囲の人々、そして、俺。


「お前は、本当に飽きさせないな」とエドガーが苦笑いをして、俺の頭を優しく叩いた。


 今度は外で試そう、というということで、次は、竜の瞳のような、そう、あの遺跡で使ったような物があった。これを手にしてみると、その瞬間に緑色の光が出た。でもそれに温度や攻撃力はなさそうだ。何かを探すツールなのだろうか。


 続いてはカギの形のペンダント。一見アクセサリーにしか見えない。のだが、これは一応アーティファクトだと、古代魔術師の僕には分かった。でも、これは、おそらくしかるべき特定のカギを開ける物か、それ以上の力があるなら、万能のカギではないか、と二人に言ってみた。


 さらに、これで最後だと見せてくれたのが、あの、以前見せてくれたレクイエムを流す箱に似ている、小箱だった。僕が手に取り力を入れると、それもまた、何かの音楽を奏でていた。でもこれは何の音楽か分からない。魔法の力がある、とはなぜか思えなかった。でも、これはアーティファクトだとエドガーに告げる。


「なんだよ、やっぱデカいのが強力なのでいいのか? 前に手に入れたの、売るんじゃなかったなー。でもよ、その氷を発する玉は、使い方によっては結構強力な攻撃手段になるかもな。全範囲攻撃でも、俺と蓮ならどうにかできるだろうしな、貸してやるから、アポロが持ってろ、貸してる、からな。貸して、やるからな!」


 うう、分かってるよそんなこと。でも、それ以外にも、エドガーは小物扱いしているけど、他のアーティファクトだって十分すごいと思うのだが……


 そして蓮さんへのお金は、自分で宝石を売りに行く(金持ちの冒険者は、かさばるお金をあまり持ち歩かないで、小さな宝石にする人も結構いるらしいのだ)から、二人で、ギルドで依頼の受領と、確認をしてきてくれ、ということになった。


 蓮さんと二人ギルドに行くと、なぜかもう話はついているのか、窓口で「乗船券は個人でお買い求めください」との声。そこでようやく気付いた。隣の大陸、つまり、船旅なんだ! 海が見れる船に乗れるひゃっほー!! 俺初めてなんですよ!! と翼を広げそうな勢いで蓮さんは困ったように笑い、


「そうだな、海はいい。荒んだ心を、静かに、解きほぐしてくれるかのような」


 うっ、言った俺が馬鹿だったのか、修羅道にいる御方に振る話題じゃなかったのか?

 ま、まあでも、蓮さんも海が好き、と言うことでいい、のかな?


「あ、でも、海の食べ物も楽しみですね! モンモンイカとか、オクトパシーとか、焼いて塩だけでも美味しいらしいですよ」


「そうだな。僕も島国生まれだから、海産物は好きだよ」といつもの笑顔に戻ってくれてほっとする。そこにエドガーがやって来て「ほい」と渡し「ありがとう」とさっと懐に入れ、まるでスリの様な素早さで、宝石を換金したお金を渡していた。長年の信頼? というか触っただけで金額が分かるのか? まあ、いいや。


「エドガー、窓口で、乗船券を買ってくれって」


 ちなみに今回の移動はここから馬車で一日のシュクートと言う港町に行き、乗船券を買って、あちらのエンゲージ大陸の港町ロッコに向かい、そこからは、向こうのギルドに話を聞く……徒歩で良く分からない森を歩く、気がする……が詳しくは分からないというか、エドガーの強力な交渉術で、どうにかなればいい。


 それより、海! 船! あー、浜辺で飛んでめいいっぱい太陽を浴びたいな! そんなことしてたら確実にエドガーのげんこつが飛んできそうだが!


 俺らは食料やら旅の道具の補充をすませると、馬車に揺られる。一日、というのは流石にお尻が痛くなるなあ、馬車に揺られながら、エドガーも蓮さんも、慣れたものか、無口で瞳を閉じている。でも、俺は暇なわけで、


「ねーねー、二人とも船何回乗った? それと、今までどんな冒険したの? そういえば聞いてなかったから教えてよ!」


 エドガー様は安定のシカト。蓮さんが瞳を開き、少ししてから、


「これ、というのはすぐに出て来ないのだが、ああ、若い頃、丁度アポロ位の歳かな。鳳凰をわが身に宿す儀式をしたのは印象的だった」



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