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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
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第十四章 これが講義

そんな俺の考えを吹き飛ばすような、恐ろしい咆哮がした。身体中がしびれて、うまくしゃべることすらできない。先程のゾウもすごかったが、比べ物にならない。これが、ドラゴン。奴がその大口から炎を出したなら、どう考えても助かる見込みがない。


しかし、身動きすらとれないのだ。俺はどうなる? アカデミーの人達は?

あ……今頃この場所が倒壊するらしい音が聞こえる。しかし粉塵が多く視界が不明瞭で、動くこともできずに……俺はこんなところで……死ぬ?


必死で手の甲の紋章に力を意識する……いや、意識しようとしているのに、紋章が光らない。どういうことだ? 力が失われた? こんなこと今まであったか? 俺は……一体……


「宿星の導きを知らぬ 時の折り手よ 

 新しい軌道を告げよう

 天を逆さにめくり

 地の理に抱かれ

お前の旅は終わり始まる

アスターニャ・ケーニャ・ロウド・ライヒ

目覚めよ そして忘れよ

オーディナル・アスターニャ・エイド・ラウダ」



ぱっと、視界が開けた。天井があった。石壁があった。そして、ドラゴンはいなかった。


「ネスミスのチビ・ドラゴンに優秀点をあげましょう」


 ぼそりと誰かが口にすると、拍手が巻き起こる。そして、黒い肌の青年が少し照れくさそうにしながら、卵の殻を頭にかぶった、小さなトカゲ? いや、ドラゴンらしき生き物の背中を撫でている。


 なんだってんだ……


放心状態の俺にマルケスが「中々面白いだろう」と得意げに言った。俺は少し混乱状態ではあるが、何とか言葉を絞り出す。


「あのね、ええと、これで死者とかけが人とか、建物が壊れたりとかなんでないの?」


「いや、ある時はある。事故だ」


「ちょっと! そんな危険なことをこのアカデミーでは普通にやってるの!? しかもあの双頭のドラゴン!! 何あれ! あんなのに普段出会ったら、死なない方がおかしいよ!」


「ああ。そういう時もあったそうだが、まあ平気だろう。ここ数年はそういう事故はないそうだし、幻術と空術の権威の教授が講義の担当をしているからな」


「魔法で生み出したってこと? 彼らモンスターの正体は、幻? 召喚獣みたいな?」


「それに近い。学生の思い出の品から、びっくり仰天! ゆかりの何かが生まれるんだ。それらはこの空間の力と、先ほど言った教授の魔法を触媒として、かりそめの形を得るんだ。楽しいだろ」


 なんて言ったらいいんだろう……これを平然と「授業」だか「講義」だかで行っているアカデミーを改めてすごいなと思ってしまう……ここではなんでもありなのか。先程マルケスがやらかしたビーブル爆弾とか言うのが、被害は知らないがかわいいものに思えてくるぞ……


 学生の中にいる、白い長髪を後ろで一つに結んだ老人がこちらに手招きをした。どうやらアカデミーの教授らしい。胸には見たことが無い幻獣らしき刺繍。


「スクルド、いいかね」


 落ち着いた細い声。しかしざわついていた空間がすぐに静寂を取り戻した。彼の声で、先程の幻を地に還す詠唱をした人だと気づいた。スクルドはすぐに返事をして、続いて俺らに言う。


「ごめんなさい、私マガタ教授に呼ばれてたんだった。少し長引くかもしれないから、マルケス。アポロを案内してあげて」


「ああ。構わない」という返事をマルケスがすると、スクルドは笑顔で「また後でね」と言ってその年配の教授の元に駆け寄る。あのマガタ教授というのが、マルケスの言った幻術や時空術のエキスパートってことだろうか。


「じゃあ、俺らは行こうか」とマルケスに告げる。すると、彼はなぜかぼんやりした顔で返事をしない。俺は不思議に思って彼にもう一度同じことを告げると、彼は気のない返事をして歩き出した。


 あれ? 俺、何か彼を怒らせたか? でも、さっきまで普通に話していたしな……


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