表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第七巻 空中都市のアカデミーと運命の三姉妹
142/302

第八章 工匠トカシア

「え? なんで? 俺達会うの初めてだよね?」俺は驚いてそう返すと、彼女は真剣な顔つきになって言った。


「知恵の林檎が教えてくれたの。式典の最中に……太陽神の名を持つ、強大な力を持つアーティファクト使いの少年に出会うって。ねえ、姉さまは? あの式典の時に何の預言を受けたの?」


 式典って……多分ルディさんが少し前まで行っていた儀式のことだよな。そして、この少女も何かを感じ取ったらしい……


 ルディさんは少し間を置いてから、優し気に話し出す。


「そうね。そのことも後でゆっくり話さなきゃならない。でも、少し待って。私もすぐに決断することができないこともあるから。でも、そんな固い顔しないで。そうだ、スクルド、アポロにアカデミーを案内してあげて。彼らにはしなければならないことがあるけれど、数日間ここに滞在するそうだから」


 すると彼女の顔がぱっと輝き、俺に駆け寄ると、両手で俺の手を握った。少し冷たくて長い指。ほのかな香水の香り。自分で自分の顔が熱を持っているのを意識する。でも、彼女はそんなことは構わず楽しそうに、


「私の名前はスクルド。このアカデミーで世界史・伝承学を専攻しています。アポロに会えて嬉しいです。今日は私がアカデミーを案内させてもらいます。気軽に話しかけてね。よろしく、アポロ!」


 俺が緊張しまくりながら、つい仲間の顔を見てしまうと、エドガーはにやにや顔。蓮さんはいつもの穏やかな顔で「アポロ、楽しんできなさい」


 た、楽しんでと言われても……いや、楽しいんだろうけれど……


「そうだ、スクルド、アポロもそうだけれど、蓮をトカシアの元に案内してあげて。彼は凄腕の侍なの。トカシアがきっと彼の力になってくれるわ」


「はい、姉様。蓮は不思議な恰好をしているのね。きっとジパングの方よね? よろしく」

そう言うと、彼女は蓮さんの手も握った。ああ、これは挨拶で皆にするんだよな……当たり前だよな……


 って! 何考えてるんだ! あーもう恥ずかしい! 今更手のひらに汗をかいてるのに気づいて、ズボンでそれを拭く。ふう……女の子と手を握るとか、いきなりだとやっぱびっくりする……


 ああ、蓮さんとスクルドが和やかに、楽しそうに話をしている。エドガーもそうだけれど、蓮さんも、もてそうだからなあ……


 いや、何考えてんだ! 俺たちはそのトカシアという人の元へと向かうことになった。スクルドの話しでは、優れた工匠と言うことだ。武器でも宝石細工でも何でも得意の職人らしい。


 カモミールの庭を横切り、爽やかな香りの中を進むと、前方に大きな建物が見えてきた。赤レンガ造りの無骨な建物で、煙突からは黒煙がもくもくと上がっている。工場? 工房だろうか?


 その入り口近くには大きな木製のテーブルがあり、そこにはいかにも大工や職人みたいな、筋骨隆々で動きやすそうな洋服の人達が休んでいるようだ。でも、様子が少しおかしいような……


 この場所には少し場違いな、線の細い銀縁眼鏡の、アカデミーの制服姿の青年が目についた。どうやら彼が、アカデミーの制服姿らしき女性に怒られているらしい。


 その女性は褐色の肌にまとめた黒髪。ヴェルさんとは違う意味でグラマラス……というか、貫禄のある身体の女性。アカデミーの制服姿であるが、丈が短く動きやすそうだ。ブレザーは着ていないしリボンもしていないが、シャツの胸元には炎とハンマーの刺繍がされている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ