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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第四十章 蓮の思い

「半分本気で半分冗談だ」と蓮さん。エドガーはわざとらしい大あくびをして、


「へいへい。まかせてくださいでございます」と投げやりに答える。というか、俺はいまいち話についていけていない点がいくつかあり、思いついたことを質問してみた。


「あの……そもそも、聖なるとか外法とかいまいちわかってなくて……エドガーみたいな悪名高い勇者様……あ、いや、実際一緒にいたら結構いい人だと分かったんですが、スケベお兄ちゃんが聖なる力で、蓮さんみたいな真面目な人が道から外れているみたいなのは何だかしっくりこないんですけれど……」


「おいてめー調子乗りすぎだぞ!!」とすぐさまエドガーが俺の首を絞めてくる! おっ、おえっ!! う、く、苦しい!! 死、死ぬ!!!


 すると喜撰が大笑いをして、エドガーの手がわずかに緩み、なんとかそこから脱出する。いや、ほんと、苦しかった。「げほ」と思わず息が出た。俺は涙目のまま喜撰を見る。


「坊主、その通り。聖なるもの、邪なるもの、外法だといってもそれと品性とはまた別の問題じゃよ。言ったはずじゃ。力あるものが正義。聖も邪もその前ではただの戯言になる」


「……それが、喜撰さんの意見だってことですよね」


すると彼は薄っすらとした笑みを浮かべ「そうじゃよ。人の数だけ真実があり歴史があり正義がある。碌典閤が外法の者であっても気にすることはない。恐らくお前さんらは喰わないじゃろうしな。ふぁははは!」


くっ。ほんとやりずらいお爺さんだなあ。ジパングのトップの人達の話は疲れるよ……


すると、蓮さんがかしこまった声で言った。


「騙すような真似もした。色々と迷惑やら心配やら、すまないと思っている」


 するとすぐさまエドガーが言った。


「それ以上言うな。いいな」


「ああ」と蓮さんが短く返した。そして二人ともちびちびとお酒を飲んでいる。そうだよな。これでいいんだ。色々と分からないことも、飲み込めないこともあるけれど、それでも旅をしてくのが俺らパーティだって。


 そんな風に俺が一人で自分の意見を整理していると、エドガーが何故か俺の肩を叩き、しかしその眼は蓮さんを向き、俺を叩いていた手で自分の頭をかき、


「あのさ、お前の名前の由来って……いや、何でもねえ」とエドガーが言葉を口にして、自らそれを終わらせる。しかし蓮さんはそれに答えた。


「幻の地、鳳来山に咲くという蓮。それで上皇が僕の母を口説いたそうだ。裏・村正の命名といい、恥ずかしい話だな。もう、どうでもいいから、気にならなくなったのだが」


「どうでもいいわけないじゃろ。碌典閤の生きる目的は奴の首なんじゃろ? 愛憎入り混じる大事な宿敵じゃあないか」


 喜撰の歯にもの着せぬ言葉に、思わず身が冷える。父親の殺害が目的の人生? 俺はじっと、言葉を待つしかない。


「そうだったかもしれない。でも、僕だって変わる。たまにそんな気がするよ」


 それは穏やかな声だった。誰も茶化しなんてしなかった。修羅の重みは彼しか知らないものだ。だけど、今蓮さんがここにいること。それだけで十分なんだって、今はそう思うんだ。



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