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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第三十五章 気が付けば海上

「見世物って……あーはいはい。俺らが五十螺や飯綱やらと戦わされて、その殺し合いを見ていたってことかよ。悪趣味もここまでいくと清々しいもんだ」


 エドガーが心底嫌そうに口にする。そうだな……国同士のあれこれもありそうだ。ちゃんと状況を理解していないけれど、そういうことなんだ。道具を手に入れるための余興。彼らから見て、血のつながりのある者同士での殺し合いを娯楽にするなんて……分かんないし分かりたくもない。


「すまない」と蓮さんが小さく呟いた。俺はなんて言ったらいいか分からなかった。するとエドガーが何故か俺の頭を叩き、思わず「いてっ」と声が出る。


「もう辛気臭いのはなしだ。さっさとこの国からおさらばしようぜ。それでいい」


「……そうだ、エドガー、空中都市でよかったよな。確か接近しているのは……」


「えーと、ギルドで調べておいたんだがこの分だと軌道が……そう、ワンタイ諸島で待つのでいけっかな。ジパングからなら、船で一日くらいだろ? 丁度いい。おい、爺さん。船の準備頼むぜ!」


爺さんと呼ばれた喜撰は苦笑いをして「碌典閤に勝るとも劣らない礼儀知らずで無鉄砲な馬鹿者とはなあ。恐ろしい恐ろしい。類は友を呼ぶといった所か……よしよし、案内してやるからついてまいれ!」


そう言うと喜撰は弓月の背を軽く叩き、どこかへと歩き出し、蓮さんとエドガーもそれに続く。俺もわけがわからないまま彼らの後を追う。


また、空間に裂け目? と言えばいいのだろうか? 妙な穴が開いて、そこに喜撰が入り込み、皆がそれに続くから俺もその中に入る。すると、鼻孔を海の匂いがくすぐった。


「え? 海?」


 思わず俺はそう口にしてしまっていた。海。しかも見渡す限り。どこもかしこも海。正確に言うなら、俺達はいつのまにか海原を進む船の甲板にいた……みたいだ……どういうことだよ、これ! ゆっくりだが景色が動いて、風も感じるってことは、船の上にいるんだよな……また幻覚とかってことはないんだろうな……さすがにもうついて行けない……


「なんなんだ……」俺がそう口にしてその場にへたり込むと、何故か俺の顔を喜撰が覗き込んで大笑いをする。ああ! 唾が顔にかかる!!


「よしよし坊主! 童は素直なのが一番じゃ。驚いたろ!」


「はあ……」と俺が腑抜けた返事をする。しかしそれをかき消すような威勢の良い声がする「トサカアジのなめろうがありますよー! 皆様お召し上がりください!!」


 何のことだ? と思うと、体格が良い、動きやすそうな丈の短い和服を着たお兄さんが笑顔で大皿を手に現れた。彼に続いて、似たような姿の男性が数人現れ、俺達にコップを手渡し、すぐにお酒をついでくれる。


「お、なめろうなんて食べるの久しぶりだなー」とエドガー。彼は箸を受け取り、大皿に盛られた、茶色くなった魚のミンチみたいな謎の物体を口に入れて「あーうまい」と言いながら酒をあおる。


 ついて……いけない……


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