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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第二十八章 哀しい再会

「何で! 何だこれは!」と俺が反射的に叫び声を上げてしまうと、アイシャは落ち着いた声で返す。


「私は災いの天使。何故なんて聞かれても答えられない。それが私だから。ほら、あの人もじきに駄目になる」


 彼女が両手で首を抱いたまま、人差し指で示す。その方向には巨大な龍が寝そべっていた。どことなくレヴィンに似ている、サファイアのように輝く美しい身体。そして鉱物のような固い銀の鱗に覆われた巨大な龍。


 俺はその龍を初めて目にしたはずなのに、心がざわつく。


「エドガー?」俺はそう口にした。しかし返事はない。俺は大きな声で問いかける「エドガー!!」


「彼はまだ死んでない」そうアイシャが口にした。


「アイシャ!」


 俺は、不安と恐怖と怒りと悲しみで、わけが分からなくって、泣きそうになるのを堪えながらも聞かずにはいられなかった。


「何でこんなことを! アイシャ、本当にお前はアイシャなのか? いいや、違う。アイシャがこんなことをするわけない! お前は幻だ! 魔法だ! そうだ、ここの精だろ! 悪霊! こんな、こんなことをするなんて!」


 俺はそう言うと右手に力を込めて火球を作り出す。俺の身体は魔力を生じさせることができていて、自由になっているのに、でもそれを目の前の人物に放つことは、できなかった。身体が熱を持っているのに震える。


俺はわざとそれを別の場所に放つ。火球は消えてなくなり、アイシャは身動き一つしない。


「彼を助けたくないの? あの寝そべる龍。放っておいたら、死んでしまう」


「どういうことだ! エドガーが? なあ、何で? 何だって言うんだよ、何で、何で!」


 俺の嘆きに似た叫びが辺りに響く。状況が分からない。身体中から湧き上がる不安と疑問。それらに押しつぶされそうになりながら、俺は平静を保たなければいけないと思う。俺がしなければならないのは、仲間を助けることだ!


「エドガーを助けるにはどうすればいい?」


「さあ?」


 俺がくってかかりそうになりながら、力と言葉を飲み込む。彼女は表情一つ変えずに続ける。


「私を殺せばいいと思う。私は災いの天使。でも、私を破壊するのは貴方では無理」


「何を言ってるんだ! さっきのは、脅しだ。俺が本気を出したらどうなるか、分かるだろ!」そう口にしながら、俺は目の前にいるのが本当のアイシャなのか精霊が見せた幻覚なのか分からない。


 あ、あれ? そう、アーティファクト反応が、ない? いや、あるけれどわずかだ。そう、

感じるアーティファクト反応は蓮さんの腕にあったそれだけ。強大な一人の者が発するそれとは違う。


 どういうことだ? アーティファクト反応はあるけれども、それは「部品」のような気がした。エドガーが貸してくれた道具のような……そうだ、それはあの時のアイシャや人間形態のゼロが発している物とは違う、はずだ。


 でも、そうだとしてもそれが何を示すのか分からない。それに目の前の精霊らしきものがアーティファクト反応を出しているのが、本来ではありえないことのように思えた。ジパングの風水の力を受けている精霊が、アーティファクト反応を示すなんて考えにくい。


 つまり、やっぱり俺の眼の前にいるのは、アイシャなのか? 


「アイシャ? なんで、何でそんなことを……」


「理由なんてない。私は災いの天使。災厄の天使。私を殺さなければ災いの連鎖からは逃れられない。ただそれだけ」


 そう口にするアイシャは、まるで出会った時のように俺に心を閉ざしているようだった。出会った時のように? 目の前にいるのは、本当にアイシャなのだろうか。その姿だけは、太陽の祭壇で力を取り戻した時の彼女のようだった。


 だけど。ひっかかるのは、何だろう。俺がこの状況を理解していないからなのか、理解したくないからなのか。今は精霊を鎮めなければならなくて、何でアイシャが……


「考えている間に、あの龍も息絶える。急がなくていいの?」


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