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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第二十五章 アポロの旅

 もやもやした気分のままパーティが進む。確かに木々の織り成す風景は美しいのだが、それを味わう余裕はない。コモンで話す約束になったはずなのに、誰もしゃべろうとしない、重い雰囲気のままだ。俺は五十螺と侍に、その試練の詳細について尋ねる。


「五人集まって助かりました。五行の精霊を静める儀がおこなわれるのですから」


「五行って……蓮さんが口にした、風水という術のことだっけ?」


「そうです。木、火、土、金、水。それぞれの精霊を一人ずつ静めることで平穏が訪れる、とのこと」


「おい、どういう意味だ、詳しく説明してくれ」とエドガーが話に加わる。


「言葉の通りだ。石碑の封印を解き、その霊に同調することで、それぞれの精霊との交信ができる。それは一つの石碑につき一人ずつしか行えない。お前達の人数と自分と五十螺を加えて五人になる」


「おい、それって一人きりでそのよくわかんねー精霊と戦うってことか? 一人が失敗したらどうなるんだ? 聞けば危険そうじゃねえか。ろく……蓮はともかくよ、見ず知らずの俺とちびっ子アポロ君も頭数に入れて平気なもんなのか?」


 それは、確かにそうだ。一人きりで正体が分からない怪物に立ち向かうというのもそうだが、相手側がそれを見ず知らずの俺にも頼むと言うのは何だか妙な気がした。侍はエドガーの問いかけに、やはり無機質な調子で返す。


「碌典閤が連れて来たということで、ある程度の強さは証明されている。それにこの儀はジパングの血が入っていない者の方が良い。近しい血の混じり合いがあると、精霊に身体を乗っ取られるという報告がある」


「ってことは、侍さんは西京の人じゃないの? え? 五十螺と蓮さんはジパングの出身だよね?」


「自分の出自はジパングではない。五十螺と碌典閤は風水の精への耐性があると聞いた」


 侍がそう答えると、エドガーが人差し指で自分の耳をかきながら言う。


「教皇には会えないにしても、それ以外は話がすんなり進んであやしいな。鏡が欲しい俺らはともかく、お前らが手を組んでるのがよく分かんねえな」


「だとしても僕らは行く。そうだろ」蓮さんが前を向きながら静かにそう言った。エドガーは少し間を置いてから言った。


「アポロ。いけんのか?」


「できるよ」と俺は反射的に答えていた。その後で、自分の語尾が震えていたことに気付いた。また少し間があってからエドガーが口を開く。


「あの、よ。あの太陽の祭壇の時は、お前しかそのブラッドスターを扱えないらしいし、俺も頭が回んなくて、お前とあの天使の少女を二人で行かせた。今回は一人きりでよくわかんねー怪物と戦うんだ。恐らく逃げることができない」


そう言うと、エドガーは少し黙り込み、声を上げた「おい! その闘いで、その石碑との同調を途中で中断することは出来るのか?」


 エドガーの問いかけに侍が「恐らく、無理だ。倒れた西京の同士は、戦いに敗れるとその身を喰われてその姿は無くなっていた」


「その、よくわかんねーが、ジパング生まれの人間が不利だとしても、お前らの中でも選ばれた者がその試練、儀に挑んだんだろ? ちょっとばかしアポロには荷が重いんじゃねーのか? なあ、蓮。もう一人補充してもらおう。こいつ、攻撃に回るなら一撃は見込めるが、防御はからきしだろ。こんな場所に出すのは早い」


「そうはいかない。出兵は叶わない」


「は? どういうことだよ! 西京で災いが起きてるんだろ。なんで西京から仲間を呼べねえんだ? お前たちの中にだって、その霊に強い奴がいるはずだ。俺と蓮はいいとして、もう一人はそいつに任せればいいだろ」


「出兵は叶わない。これは西京の問題ではない」


「は? 西京の問題ではないってどういうことだよ」


 ここで五十螺が「つまり、彼、飯綱いずなは西京に属していながら、今は教皇の命ではなく動いているということです。それ以上はよろしいでしょうか?」


「よろしくねーよ。こっちも命がかかってんだ。きっちり説明してもらわねーで、犬死なんて御免だ」


「大丈夫だ。僕一人でもその儀を行う」蓮さんの言葉にエドガーが声を荒らげ、


「は? 一人でその五体の精霊だかと闘うのか? それこそ無茶だろ! またお前はすぐにそういうことを言いやがって!」


「そうだ。人数が多い方が好ましい五体の精霊に対して、ここにいるのが五人の戦士。これで立ち向かうのが得策だ」飯綱がそう告げると、エドガーは舌打ちをして、俺の肩を掴んだ。


「言っただろ、お前は残れ。四人いればどうにかなる。そうだろ、お侍さんよ?」


 すると飯綱が俺を見て冷たく言い放った。


「おい、お前はなんで旅をしているんだ?」


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