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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第二十三章 戸惑い、鳥居

ただ、蓮さんの背中が視界に入ると、変な気持ちになる。それは恐れとか畏怖とかに近い感情なのかもしれない。しかし、それには妙な魅惑をも感じていた。死への望みのような、初めての錯覚。


蓮さんも朱華と同じ力を持っているのだろう。彼がその力を俺達に向けないという、幼い確信を抱いていながらも、その力と可能性は甘く俺の胸に残っていた。恐ろしくも離れられない存在。


それは優れた冒険者のエドガーが口にする「強い奴と会いたい」という感情に似ているのだろうか? 


もしかしたら少し近い物なのかもしれない。強くなりたいって、いつだって俺は思っている。蓮さんが話してくれた、あまりにもおぞましく痛ましい行為の一片を知ったとして、俺は蓮さんへの印象が変わっていないことを改めて思う。


 でも、蓮さんは俺達と距離を置きたいのだろうか? 彼が一人で生きていきたい、自分の意志を成したいとしたら、それを俺はもとよりエドガーですら止められないだろう。


 ふと、蓮さんが離れることが、この先決まりきったことのように考えている自分に気付いて寒気がした。そんなわけない。いや、そんなことは分からない。だって、そう、少し前までは高難易度ではあるけれど、ドタバタ大冒険を切り抜けてきていて、それはこの先も続くはずだった。いや、終わりなんて考えていなかった。


 ここでパーティがばらばらになったら。


 この先のことを考えると、それぞれのしたいことの為に解散することは十分ありえる話だ。でも、それは今ではないはずだ。ゼロを元に戻すことも自分自身を知ることも、一人きりで出来るとは思えない。いや、単純な話だ。はなればなれになるのが嫌だった。


 その可能性を始めて真剣に考えてみても、でも、やはりそのことについて深くは考えたくなかった。


 だめだ。悪いことばかり頭に浮かぶ。俺が物思いにふけっていると、蓮さんとエドガーは普段通りに、短い言葉を交わしながら歩いている。俺はそれに気づくと何だか安心感が身体に満ちてきていて、我ながら単純だなあと思いながら、黙って彼らの後をついて行った。

 

 こういうのが、これからも続いていくんだって思いながら。


 朱色の背の高い門のような奇妙なオブジェクトが、ほぼ同じ大きさで何十個も配置されている。しかもそれが緑あふれる景色の中にあるから、違物感が強い。俺が説明を求める前に、五十螺が穏やかな口調で言った。


「こちら鳥居と申しまして、かの国ではポータルと呼ばれているものでしょうか。今回は西京とへの移動となりますので、私がその役を務めさせていただきます。西京は気難しい方々の集りですので、この地よりもさらに言動に注意した方が良いかと思います。何より、西京では碌典閤様の命を狙う者もいるでしょうから、お付きの皆様もご留意くださいな」


 何気軽に、命の危険について語っているんだ? 俺がそう驚いてしまったが、蓮さんは「余計なことはいいから、早く移動を頼む」とさらりと口にした。五十螺もあっさりとそれに従い、俺達に自分の近くに寄る様に伝える。


「では、この鳥居をくぐりますから、このまま立ち止まらないで下さいね。うつつのはざまで迷うと、戻れなくなってしまいます」


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