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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第二十二章 情けねえよな

そこを抜けた先は、森の中だった。周囲を見回すと城が見えるが、かなり遠くだ。一気にワープしたということなのか? 彼女が移動手段に長けた術師ということなのだろうか。


 いつもは質問をするけれど、さすがに今は聞けない。


「碌典閤様。少しあちらでお話ししたいことがあるのですが、よろしいでしょうか? お連れの方は、申し訳ございませんが、ここでお待ちいただきたいのですが」


「この場所なら和語で喋ればいい」と蓮さんは告げた。しかし彼女は顔色一つ変えず、自分の言った言葉を繰り返した。蓮さんは黙ってどこかへと歩き出すと、やはり音も無く彼女もその後に続く。俺はエドガーとこの場に残された。


「情けねえよな」二人の姿が完全に見えなくなり、ぽつりとエドガーがそう言った。エドガーはそのまま地面を見つめながら、


「俺さ、強い奴がいるとやっぱわくわくすんだ。でも、あの上皇って奴も蓮も、やべーな。ほんとに。それにさ、俺、あいつのことそこそこ知ってるつもりでも、なんも知らなかったんだな」


 俺は何を言えば良いのか分からなかった。ただ、緊張の糸が切れて一気に言葉が出てしまった。


「その鏡って、本当に手に入れなくちゃならない物なのかな? 世界がどうにかなるって、リッチの放言なんじゃないのかな? 蓮さんが辛い思いをして、もしかして、パーティだってどうにかなっちゃうかもしれなくて、それでも、西京って所に行かなくちゃいけないのかな?」


 エドガーは少し間を置いて、俺の眼をしっかりと見て言った。


「リッチの言ってることの信憑性は、誰にも分からねえ。俺達をかついで、邪魔者を消そうとしているだけなのかもしれねえ。ただ、あの朱金の天使が、俺らを無力化する力を持っていて今後もああいったことが起こるなら、対抗手段は持つべきだ。何より、蓮がその鏡を必要としている。奴は一人でもそれを手に入れようとするだろう。だからよ、とにかく今はついていくしかない、ような気がすんだ。あーもう! 俺だって分かんねーよ!」


 エドガーは感情的な声を出した後、苦笑いをして、なぜか俺の頭をくしゃくしゃに撫でる。


「お前に今回は留守番だって言っておいて、俺も蓮から留守番なんて言われたら世話ねえな」


 俺は何て言ったらいいのか分からなかった。弱気なエドガーなんてエドガーじゃない。でも、エドガーの気持ちの一部は俺も分かる気がした。置いて行かれたくなんてない。力になりたい。でも、それは無理なのか。お荷物になってしまうのか。


「エドガーは、どうするの?」俺はたずねると、エドガーははっきりと言った。


「行く。当たり前だろ」


「俺も!」と反射的に声が出ていた。エドガーはにっこり笑い、


「ならなんも変わらねーな。これまで通り旅をする。八咫鏡も手に入れて、この居心地悪い国からもおさらばだ!」


「あ、そうだ。せっかくその鏡を手に入れて、肝心のあの天使? の居場所は分かるの? その鏡って、相手の術だか結界だかを無効化する効果なんじゃないの?」


 エドガーは少し黙り、雑な感じて、


「知らねえよ。あの蓮がもらった指輪とかでどうにかなんだろ! そもそもその鏡の力を詳しく知ってるのは蓮だろ。ともかくその鏡を手に入れればいーんだよ!」


「そんな、適当な……」と俺が思わず口にしてしまうと、エドガーは改まった口調で言った。


「言っただろーが、物知りの人間には心当たりがある。ただその前に、今回の問題を解決しなくちゃな」


 その言葉に、俺が何を言っていいのか分からず黙り込んでいると、二人が戻って来た。五十螺が自分の後についてきて下さいと口にして、俺達はそれに従う。


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