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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第二十章 師弟

俺とエドガーは何も言わなかった。或いは言えなかった。それを知ってか知らずか、蓮さんは勝手にしゃべり出す。


「四式朱華には数十、数百の愛人と子供がいた。その中でも能力を認められたものは、穴に入れられて殺し合いをさせられた。僕は、生きたいと思った。初対面であったり多少は面識のある家族を手にかけた。何人も、何十人も。屍の上に立った僕は自分が修羅の加護を受けていることを知った。名前がなかった僕は修羅の力を得て、自分が碌典閤という刀の後継者になった」


「少し話がそれるが、ジパングの近くには華国という失われた国があったという。その国では風水という術が使われており、それは木、火、土、金、水、という五つの力と陰と陽、光と闇の力の組み合わせによる秘術だった。僕は、碌典閤。その五つのことわりから外れた六つ目の力、外法を持って生まれていた。朱華の血と、僕の母、西京の教皇の娘の力の禁忌の混じり合いによるものかもしれない。人を殺す為に、人の道から外れる為に生まれ、名を力を刀を得た。それが僕だ。ろくてんごう。外法を身に持って死闘の中で生き延びて、修羅を選んだ者。それが僕だ」


 頭が、ついてこれない。ついてこれないことを意識できているいうのは、もしかしたら俺の頭は平常に近づいているのかもしれなかった。ただ、蓮さんが幾ら人を殺していたとしても、俺にとっての蓮さんは、蓮さんのままだった。きっと、俺の隣にいる彼にとっても。


「おい、蓮」とエドガーが声をかける


「碌典閤だ」と蓮さんが返す。


「でもよ、おかしくねえか? 冒険者に登録したんだろ? 鳳来蓮。立派な名前があるじゃねえか。それによお、修羅って言うのも登録されたって、おかしな話だろ。そんな、職業に登録されるほど有名な者なのか? いや、俺はお前しか知らねえけど……」


 エドガーが弱々しくそう言うと、蓮さんは微かに笑った。


「銀竜騎士も古代魔術師も相当珍しい職業、種族のはずだ。ギルドで使われている、あれを判断できる物は八咫鏡の模造品のような物だ。名称だけは分かっても、その本当の力までは分からない。だからジパングの一部の人間以外には、修羅と言っても侍なのだという反応しかできないだろう」


 そして蓮さんの語気は強まり、


「僕は人殺しだ。良き人間も、悪人も自分が生きる為に数え切れぬほど切ってきた。村正とは西京の教皇が持つ聖なる力を持っている刀。碌典閤を裏・村正などと名付けたのは、僕の気障な悪趣味だ。ここまで口にする気はなかった。この場に連れて来た僕が愚かだった。頼む。手を引いてくれ」


「うるせえ! お前は碌典閤じゃねえ。鳳来蓮って言う立派な名前があるじゃねえか! 戦いてえなら受けて立つぜ師匠!」



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