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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第十五章 修行

翌日も伝令は来ずに、エドガーは朝から俺の修行の手伝いをしてくれる。黙々放つ炎と、溶けない氷。二人とも黙ったまま。でも、つきあってくれているエドガーには本当に感謝している。


まれに、いけそうなこともあった。そう、氷の棒にヒビが入ったのだ。でも、エドガーによると、これじゃあ実践だとダメだろ。ということだ。


とはいえ、色んなことを試しているから、ただのまぐれ当たりかもしれないけれど、その経験が小さな勇気を生む。それは、俺のこれからのやる気に繋がる。小さな自信を積み上げて、形にする。それしかない。それには、努力が必要だ。


幸い、と言っていいのだろうか。次の日も伝令は来ない。俺はエドガーにお願いをして練習につきあってもらう。いける、ような気がして、実際はそうでもないのだけれど、続けることが自信につながる。とにかく繰り返す。負けたくないから。


覚悟が決まると、何故だか炎の扱いも多少うまくなってきたような気がする。今までは当てることすらできなかったのに、鞭のように魔力をしなやかに扱うイメージ、矢を放つようなイメージ。そういったものを意識して放つと、明らかに俺は炎を操れる精度が高まっているのが分かるのだ。


 何日も同じことを繰り返す。めんどくさそうにしながらも、これに付き合ってくれるエドガーにすごく感謝する。俺に足りないのは、こういう時間だと思う。ただひたすらに、同じことの繰り返し。


 エドガーが「まあ、諦めが悪いのは認めてやる」と口にした。俺は空元気で「はい!」と声を出す。あたまのふらつきも、荒い息も何だか気分がいい。諦めない気持ちは俺を前に向かわせてくれる。


 旅立ちの前に、仕事を終えてから何度も剣を振るった日々を思い出す。何かに向けてまっすぐに向き合う事。余計な雑念が消えて、俺は何度も繰り返すことができるんだ。


六、七日目だろうか。練習がいつものように始まり、いつもよりも集中しているような気がする。そして糸のように力を細く長くこめて、炎の矢を浴びせ続けると、ついに氷の棒を溶かすことができた。


「やった!! できた!!」と思わず口にすると、エドガーは大きなため息をついて、


「はいはい、お疲れさん。後は自分でやれ。風呂でもいってくるわー」とその場を後にするエドガーの背に小走りして、


「エドガー様! お背中おながしします!!」と言うとさも嫌そうな顔つきで、


「てめーよー気を使って美人のねーちゃんでも呼んで来いよ。ガキのおもりはもうたくさんなんだよ」


「はいはい!! 分かりましたーまっててね!!」


 と俺は浮かれてその場を速足で後にするが、そのお姉さんのいるお店? とかがさっぱり分からず、部屋に戻って、瞑想をしているらしき蓮さんに声をかけてみると、蓮さんは片目を開け、


「アポロは真面目に修行をしていたかと思っていたのだが、女遊びが出来るほど気持ちに余裕があるとは、見習いたいものだ」


う! 単純に怖い! というか俺は必死で言い訳じみた言葉を口にすると、蓮さんは苦笑して「さすがにしとねを共にしても、背中だけを流す花魁は聞いたことがない。高価な着物が濡れてしまう」


「しとね? って何ですか?」すると蓮さんは立ち上がり、首を軽く回すと、


「遊女に金を払って、肌を温めてもらうんだ。退屈していた。いい機会だ、僕が案内しよう。着いて来なさい」


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