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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第十四章 パーティ

「何で! 俺だって行くよ! それが神器だとして、その本当の力を解放できるのは俺だけかもしれないし! それに、俺だってこのパーティ唯一の魔法使いだ! 確かに経験も浅いし、エドガーや蓮さんに比べたらヒヨッコだって分かる。でも、そんな、お留守番なんて……そんなの……とにかく嫌だ!」


 俺が感情に任せて言葉を吐き出す。エドガーは立ち止まった。そして俺の方を見ずに、


「ぶっちゃけ、最初はお前のことなんてどうでもよかった。空を飛べるというアーティファクトの噂を聞きつけて、そんで一時的にパーティに入った。そんだけ。だけどよ、なんだかんだでこうやって、同じパーティにいるわけだ。お前だって、根性見せて他の奴らが逃げ出すような俺らについて来てる。そこは、まあ、スゲーと思ってる」


 そこでエドガーは一度言葉を切り、


「でもな、勇気と蛮勇は違う。お前は自分がいかに恐ろしい戦いをくりぬけてきたか、多分本当には理解していない。今回はマジでヤバイ。冒険者の勘って奴。てかさ、蓮がな、あの俺のクソオヤジよりも強いなんて口にするのは、明らかにヤバイ。しかも、奴は人の魂を喰らうらしいだろ。それに耐えうるのは、人間離れした精神力が必要だ。リッチと一緒にいて命拾いしただけでも奇跡的なのに、お前はもうこれ以上首を突っ込むな」


 エドガーの言ってることは何一つ間違っていなかった。でも、でも! 俺はここで立ち止まるわけにはいかないんだ、だって!


「俺はゼロを元の姿に戻す、そしてその、親族らしき人に会わなくっちゃいけない。ずっと考えてた。自分が何者かを。それを知るチャンスなんだ。だから、本当に危険な所では身を引く。でも、お願いします。エドガー。同行させて欲しい」


 俺はそう言って頭を大きく下げた。様々な思いで胸がぐちゃぐちゃになる。でも、不安で、悔しくって、未だ俺は出来るんだって変な自信もあって、頭に血が昇ったままだった。おいて行かれるのだけは、嫌だったんだ。


「お前確か言ったよな。これから俺らが殺そうとしている相手は、お前の親族、親かもしれないってこと。お前に父親を殺せる覚悟はあるか?」


 俺は、エドガーの真剣な眼に射抜かれた。とっさに言葉が出なかった「それが答えだ」とエドガーの言った言葉が胸に突き刺さる。


「てかよ、俺もお前に嫌味を言いてえわけでもねーんだ。でも、ハンパな気持ちで挑めるものでもないこと位分かるだろ。パーティてのは、相手の命も預かるもんだ。今までなら俺らでカヴァーできそうだが、今回は嫌な予感がすんだ。いいか。今回の旅について来てもいい。お前には見届ける義務もあるような気がする。ただ、俺がこれ以上は来るなって言ったら、従え。いいな?」


俺は頭をうなだれ「はい」としか答えられなかった。エドガーがいかに俺のことを考えてくれているのか、身に染みて分かる。そんな俺の頭に大きな手を乗せ、


「分かったとりあえずまだ付き合ってやる。今はやれることをやれ」


「はい」


 でも、何度やってもだめだった。何度も「今日はもういい」と言うエドガーの言葉に反抗していたが、何度目のそれで、折れた。


「明日も暇なら付き合ってやる」とエドガーが口にしたのがせめてもの救いだった。当然と言えば当然のことだ。普通なら魔法スクールに通って、専門の魔法使いにきちんと教えてもらうことなのだろう。


 自分一人で強敵に立ち向かった、倒した経験が無かった。それを思うと全身の血液が冷え、それから顔に血が昇る。俺は、弱くない。でも、このパーティにいられるほどの強さはないのかもしれない。


俺はその怖い考えを振り払う。でも、似たような考えが何度も去来する。一応俺も装備が揃って魔法も使えるようになった。もしかして、別の俺のレベルにあったパーティに……そんなの嫌だ! 嫌なんだ。でも、何が最善なのかなんて分からない。


それに、リッチが言った言葉だって、実際に詳しい話をしたのはあの二人みたいだけれど、どこまで信じていい物かも分からない。本当にあの輝かしい朱金の翼を持つ者が、世界に災厄をもたらすものなのだろうか? それならば、もしかして俺も? 答えは出ない。なのに考えは止まらない。その夜はよく眠れなかった。



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