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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第六巻 日の沈まぬ国の四季皇と外法の歌
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第十二章 停滞

「てかよお、これで三日か? さすがにそろそろ返事が来てもいい頃なんじゃねーのか? それとも、こんなに返事がねーなら、その目的の鏡があるっつー西京に直接行くのも視野にいれといた方がいいんでねーの?」


 この旅籠、宿に泊まって三日目。宿での暮らしは快適だけれども、流石にここで足止めされると文句を言いたくなる気持ちも分かる。でも、良く分からないけれど、国王、上皇への謁見って、簡単にはできないと考えるのが普通なんだけどなあ。エドガーは何か策があるのか尋ねる。


「ねーよ。ただ、黙ってゴロゴロしてるのは性に合わねーんだ。蓮だってそうだろ?」


「これから先、何があるか分からない。休める時にしっかり休んでおくほうがいい。それに、僕らが力づくでどうにかしようとして、どうにかなることではない」


 するとエドガーはいきなりむっくり起き上がり、大きな声で、


「そうだよ! 目的のカガミは西京にあるんだろ? 元々魔道馬車でそこに行けば良かったじゃねえか。あーもう今更おせーけどよ」


「魔道馬車から降りた後、どうなる? 僕やエドガーは生き延びる可能性はある。しかし、馬車が止まり不可侵領域を失うと、他の者も馬車自体も塵になるぞ」


「おいおい、西京ってのはそんな地獄みたいな所なのか? 勘弁してくれよ!」


「そうではない。八咫鏡を祀っている聖域へみだりに侵入すると、そうなる可能性があるということだ。その為に、なんとしても四式朱華に親書をしたためてもらわねばならない」


「なんかほんとお前のお国はよーわからんな。敵の大将が書いた手紙で、神器だか国宝だかを譲渡してもらえるのか?」


「譲渡なのかもしれない。取引なのかもしれない。とにかく、彼の助けは必要だ」


「わーった、わーった。もう任せる。おい、アポロ。稽古つけてやる、庭みたいな広いところあっただろ、ついて来い」


 エドガーはそう言うと、俺の返事を聞かずに歩き出して行く。ちらりと蓮さんを見ると穏やかな声で「行ってきなさい」と言う。俺は小さくうなずいて、エドガーの後を追った。


 普段は物干しに使われているのだろう。高い棒と棒の間が紐で結ばれている、宿の外れの場所に俺らは向かった。エドガーはそこにあった木の棒を拾うと、なんと、それを氷の棒に変えて見せた。


「エドガー! いつの間にそんな氷魔法が使えるようになったの?」


「いや、こりゃあ多分魔法じゃねえな。銀龍騎士、サファイアドラゴンの力で、冷気を操れるようになった。でも、ダイアモンドブレス以外はまだまだ実践レベルじゃねー。そんな時にふと思い出した。おい、アポロ。お前の炎の魔法はレーザービームのように照射できるか?」


「え? どういう意味?」


「お前がいつもするように、小さな火を使うか、それか強力な炎をぶちかますか。それだけだと炎をきちんとコントロールしていることにはならねーだろ。違うか」


「それは……エドガーの言う通りです……」


「そこでだ。俺は魔力があるわけでも教えてやるだけの能力があるわけでもねー。ただ、どうせ暇だし、これからのことも考えて修行に付き合ってやる。俺が作り出したこの氷の棒、俺は足を動かさねえで立ってるから、お前の魔法で溶かしてみせろ」


「そ、それは! あの、修行としては願ったりかなったりだけど、下手したらエドガーに怪我をさせたり、周りの建物に引火させてしまうかも……」


「おい! そこまで出来の悪い奴と旅をしてる覚えはねーぞ! とにかくやってみろ。俺様が炎の魔法をくらう位なら、龍化すればどうってことないし、どっかに引火しても弱いブレスを吐きゃあどうにかなる。とにかくやるぞ」


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