表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第一巻 廃墟に降り立つ太陽王アポロ
10/302

第十章 朱金の翼の勇士

「ならばかの地にて、お前が我々の遠い子孫だと証明してみろ」


 次の瞬間、俺は広大な場所にいた。空は晴天で、正直とても暑い。枯木や変な緑のスライムみたいな植物? があるが、生き物の気配はないようだ。


 ここは、どこだ? あの遺跡の中の幻影なのか? それとも、本当に遠い時代のことなのか?とても広大で、見たこともない景色。何て言えばいいのだろう。乾いた大地が延々と続くような。


 歩けども歩けども景色は変わらず、俺は思い切って飛ぶことにした、へへ、やっぱり気持ちいい! 先程までの暑さも、肌の上をすべっていく風で、かなり軽減される。でも、どこに行けばいいんだ? 試練があるとしたら、何なんだろう? 


 俺は集中してみる。アーティファクト使いなら、飛揚族なら、できるはずだ。


 南東、とひらめいた。でも、いつものような強い確信ではない。でも、俺はとにかく飛び立つ。


 俺はしばらく飛んでいると、変な地形を見つけた。変、というか、僕はそれを確かめるために、かなり高く上に飛ぶ。そこにあったのは、あの巨大なシェブーストよりも大きな、岩だった。


 にわかには信じられなかったが、俺はそこに人影らしきものを見つけて、降り立った。

白い獣のベストに派手な赤い首飾りをした、赤い髪に赤い瞳。おそらくエドガーと同い年位なのに、少年のような若々しい快活さで、少し幼さの残る表情をして、俺のことを見ている。


 そして、その背中には、金と赤に縁どられた、雄大で大きな翼があった。


「おい、アポロ。いつまで待たせるんだ。ここまで来れたってことは、試験は合格ってことかな?」


 俺は、その声を聞いて一瞬で、理解してしまった。この人は俺の、お父さんだ。


 声を出したい、父さんの声を聞いたら、少年時代の恨みや憎しみや寂しさなんて全て消し飛んでしまった。何か、喋りたい。でも、俺の両目からは涙しか出なかった。


「おいおい、どうしたんだ。らしくねーな」そう言いながら、父さんは俺を優しく抱きしめてくれた。


「お前も15歳になり、成人の儀式に合格した。親としてこれほど誇らしく、喜ばしいことはない」


 そう言うと、父さんは身体を少し離して、俺の両手を自分の両手で包む。熱い、いや、温かい。見える、空を飛ぶ鷹、そして、太陽が。アポロ。僕と同じ名前の太陽神。美しく、歌とイタズラが好きな、神様、神々しい、光そのものでもある神様。


 ふっ、と我に返る。僕の左の手の甲にあったのは、鷹の紋章。右の手の甲にあったのは、太陽の紋章。


 父さんは自分の両の手の甲を見せながら笑う。


「やっぱり優秀な俺の子だ。俺と同じ紋章が出てきた。おめでとう。アポロ。そしてこれが、親から子へ受け継ぐ、ブラッドスターだ」


 そう言って、父さんは服の中から首飾りを出して見せる。それは、黒の中に、たまに赤い光が発光する、不思議な宝石だった。父さんはそれを俺の首にかけ、


「じゃあ、明日からの狩りはお前がリーダーだな、せいぜい楽させてもらう」と笑顔で言って、消えた。消えた?


 俺がいたのは、あの、遺跡の中だった。


「父さん!!!! 父さん! お願いだ、返事をしてくれ、俺、ずっと、会いたかったんだ、ずっとひとりぼっちだったんだ、父さん、母さん!! 返事を、してくれ、よぉ……」

 

 俺はボロボロ泣いた。意味なんてないって、分かっているのに。でも、叫ばずにはいられなかった。涙は止まらなかった。父さん、あんなに暖かくて、強そうで、こんな、一瞬だけ会えるなんて、残酷すぎるよ……


「おめでとう。見事試練を突破して、その紋章を手にしたアポロは、飛揚族にふさわしい。私は次の飛揚族が来るまで、眠りにつく」


「ちょっと待ってよ、まだ、聞きたいことが」と涙声の僕が言っている最中に、彼は、天へと昇り、消えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ