第十四話
7月24日 改変
リィナに今日はとりあえず魔術を教えてもらうことにした、この世界の動物まあ魔物なんかは数が多くて複雑らしいから即興でいける魔術に注目する。
ミーリアさんの受付ある建物の二階、そこに置かれた大量の本を借りたいと話すと。
「いやったー! やっとあたしの所にもキター! もう文句言われないわ!へっへぇーん!ざま……あっ」
とんでもない素が見えてしまった、一瞬命の危機! と思ったが「言ったら逝ってもらうわ」なんて脅しをかけられるだけですんだ。だけど階段を上りながら今までの愚痴を聞かされることは思っても見なかった。
いくらたっても図書館が再建されないから図書館をやるためにこの建物を用意するのに受付と魔具の整備や作成を押し付けられて大変だし、本は皆読みに来ないしそのせいで上から他のほうには来るとねちねち言われるから借りにも行けないそうで。
「くふふ。でもこれで文句言われないわー! さぁここがあたしのパレスよ!」
暖かい木目調の本棚と適切な配置のランプが本を読み続けても目を悪くしない配慮。一冊一冊丁寧に掃除や修繕された本。本棚の中心にテーブルと、長く座っても身体を痛めない様にクッションのついた椅子。
「確かにパレスだ、ありがとうミーリアさん。借りるっていったけどここで読んでも良いかな?」
「ジークちゃんもリィナちゃんも好きなだけ居て構わないわー」
鼻歌を歌いながら下りていった、あの調子じゃ本を借りなくてもいつかはバレてただろうな、素。
「うーん」
「どうしたの? リィナ」
「いえ、あの様子だと脅される人が増えそうですね。と」
「ぐっ」
鋭いな、噴きそうになったよ。
(さて)
リィナが本を見つけてくれている間、手持ちぶさたに近くの本をペラペラとめくる。
さてこの世界の英雄伝説はどんな感じかな。こういう時は子供に分かりやすい絵本、それも古い奴が良い。
少し図書館を探して整理はされているがページが欠けていたり、逆にページの束だったりとするものが納められている本棚を見つけた。
「さあどんな感じなのかな」
と本を見ていると途中ピリッとした霊魂のようなものを感じた。
「これは、絵本か? 手作りみたいだ」
まぁここにある本全て手作りに近いが、これは一般人が作ったような拙さだ。内容は伝説の魔槍を探す二人の少年の話だ、ページが欠けているからよくわからないが少年の一人が周りからいじめられている。それから、二人か三人の意思を感じる。確かめていると、……中からディールスの力を感じた。
「ジークさんどうしたんですか?」
「あっ、いやこの絵本が気になってさ」
「見たことない絵本ですね、題名は削れていますが。読めるところだけだと夢見ですか。気になるなら後で一緒に見ましょう!」
絵本を戻し振り向くと、リィナが何冊もの本をテーブルに置く。さぁ気を引き締めろ、今までの知識とはまるで違う物が始まるぞ。
「うーん……」
「何か分からないところでも?」
「いやわかる、わかりすぎて感覚と合わないと言うか。前にも欲しかったと言うか」
「?」
リィナはなかなか教え方が良い、なんと言うか秀才って感じの教え方だ。それと合わせて解析の力が凄い、もう一人に一台クラスに欠かせない。
属性は魔力と生命力であるマナに持ちそれぞれ性質を持つ。属性は基礎として火・水・風・土・光・闇の6つの属性がある、でそこから呪術や錬金術と言った魔術が派生していく様だ。
ついでにスキルも教えてもらった。スキルは肉体・精神・魂魄に作用し、出来ることを強めるらしい。
「教本はこれが良いと思います」
そう言って本棚から三冊抜くと渡してくる。
「でも不思議です。錬金術は火の系統に属した魔術です、でも錬金術だけが使えるなんて」
火の魔力があるだけでも基礎魔術系は使えるから、そういうタイプでしょうか?と口からこぼしている。かなり珍しいんだろうな。
どの本にもステータス的な『職業』は無かった、職業からのスキルだからぽっと出なのか。誤魔化そうと思えば誤魔化せるだろうが、まあ一番の秘密はもろばれな訳だし。
言った方がいいな。
「リィナ。俺、実はこの世界の生まれじゃない」
「っ! いつまで一緒にいられるんですか?……私を…て」
「大丈夫……帰らないし、帰れないから」
そこまで言うと安心した表情をした後、悪いことを言った様な顔になった。そんなに涙を溜めると目が溶けちゃうぞ。頭を軽く撫でると、気持ちよさげに落ち着いたようだ。
「異界せ──いえ、この世界の生まれではないことはあまり言わないほうがいいです」
「……やっぱりそうかな」
「はい」
有無を言わさない様に強く見つめてくる。心配を多く含んだその表情に笑みを返し、「わかった」と答える。
借りる本以外を片付け、時間を確かめる為に外を見る。
「もうちょっと時間がかかると思ったけど案外早く終わったな」
外を見るとまだまだ日が高い、今帰っても何もすることがないな。
余った時間にさっき見つけた、絵本の本棚の方にリィナと足を向ける。
「この絵本はさっきの本でしたか。風の力で風化させられている? それにページも欠けているじゃないですか……これはもしかして。探してみませんか? 隠された伝説の魔槍に何か関係しているかも!」
リィナは俺がアーサーの話から伝説の魔槍が気になっていると思っているな? まあ、勘違いでもないし良いか。
ついでにディールスのことが何かわかるかもと、リィナと共に軽く本棚を漁っているが特に見つからず。ミーリアさんにこの絵本と教本を借りることと、他に本がある場所を聞く。
「720Mのお支払いと、他の図書館の場所ね。えっと──」
紙幣の変わりに魔力で支払いが出来るのは楽だ、まあ今こんな状態で金は役にはたたないよな。教えてもらった場所は結構遠い、急いで行かないと。
門の直通の道から少し離れた建物、多少荒れた道を直しながら進むとそれが見えてきた。
「あーあれか? 壁にヒビが入っているな」
大きめの二階建ての建物に入ると薬臭さを感じた、ポーション屋って奴か。無数のポーションの棚に囲まれて女性が、「クー…クー…」といびきをかいている。
肩を揺らし起こすと、ぱちんと言う音と合わせて全身が固まって動けなくなった。やった張本人は呑気にあくびをして薄目を開けている。
(いきなり触れたのは悪かったが、リィナは関係ないだろうが!)
強く息んで力を込めると薄赤い粒子の混じった黒いオーラが身体を抑えつける魔力を融かす。漏れ出た陽炎の様にくすぶる魔力に驚いた女性が、魔力弾を投げようとして──。
「ご!ごめんなさぁい! 今解きます解きます!?」
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「それで、どうして、いきなり、攻撃、してきたのですかぁ?」
リィナも流石にムカッときたのか言葉に刺がある、出してもらった椅子に座りながら彼女──ミアの話を聞いた。
「いあーそれがお客さんなんか誰一人来ないし本もだーれも読みに来ないので。もう泥棒用魔法かけて寝ちゃえー!なんて、……ごめんなさい」
誰も読みに来ない? 何故だ娯楽でもあるだろうに普通来るはずだろう。でもこの喋りかた、本当に来ないんだな。
「最初は手伝ってくれたのに今は上からはねちねち言われるし、ポーションも花の人たちに負けるし、他の人には来るのに、来ないし。もう寝るしかねぇー!……なんて」
「最初はって?」
「そう、受け取りに行ったら本は山分けになってたんだよねー。他の人には行ってるって言うからムカッと来て行けないし。戦役ばっかりで道の整備は門と一直線しかしないし、たまに本借りようと思ったのに道が陥没、家が崩落で危ないのなんの」
最初から選別されていた?、ミーリアさんは他の受け取りに行った人のほうに来ていると言うがこの人の言うことは真逆だ。…お互いに近づけないようにしているのか。
それに戦役はまだ見ていないが、そこまで金かけているのか。
「それで、ご用は?」
一瞬で身なりを整え、まるで深窓の令嬢だ。…落差が強いな、一瞬幻術かと思った。
「あー本を見たいんだけど」
「はい!どうぞ!」
夢は儚いな。
売り場と工房の間の階段を上がると、緑の装飾が多い本棚が周囲を埋め尽くす。本棚は城壁の様に魔力によって変性した生木で作られている。
それに樹液がおかしい、魔力のこもった薬品の様だ。それが本そのものを癒すことで劣化を消している。
周りに窓はなく天井に、小さな太陽の光が照らしている。
「じゃまた後で!」
本棚からページの束を探す、探す、探して。
「見つかりませんね、ここにはないのかも」
それに、と口ずさみ。
「郷土史とか歴史書とかミーリアさんの所と合わせても全く見当たりません」
確かに両方とも見つからない。何か関連しているのか、それともひとつに集められているのか。
でも絵本のページはある。この本がそう言っている、死霊魔法で何か感じたなら──
「…絵本が光ってます」
【死霊魔法】で調べられる。絵本から光線が飛び、本棚を何個か通りその裏を指す。それに合わせて本棚の裏から、小さく何かが擦るような音が聞こえてきた。
「ネズミが持っていったんでしょうか?」
そう言うとリィナは本棚に近付いていった。ネズミの割には生命力は意外に感じないな、隠れるのが上手いのか?
「この奥にあるみたいです……でも手が届きませんね」
腕が詰まって奥まで入らないし本棚が根を張っているから動かせない。と考えていると突然リィナの視線が腰に向かった、なんだろう嫌な予感がする。
「その尻尾、奥まで届くような気がします!」
あぁ、また痒くなるのか──
リィナも嫌ならやめて違う方法を考えようと言ってくれたが、他に思い付かないししょうがない。
「どうしたんですか?…やっぱり止めても──」
「いや、大丈夫だよ」
ごそごそと動く音と光線が逃げる前に、防護服を纏った尻尾を隙間に突っ込む。そのまま紙の様な感触を引っ張り出すと。
「「うわぁ!」」
意味は違うが同じ言葉が俺達の口から出る。その目線の先、音をたてていたのはネズミでも何でもなく動く紙束だった。
絵本に近づけると拒むように蠢き、更に近づけると魔力弾を打ち出そうとしたから即座に離す。
「まあ…これ借りようか」




