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第十二話

6月26日、改変


下の街道からのざわめきによって目が覚める。外にはランタンを持ち心配そうに道の先を見つめる人々、だが特に気になったのは忌々しそうに空を見る人々だった。それにつられて見た空にあったものは、大量の雲の様な物と光を遮る何かだ。


「ふぁーぁ、…あれまだ夜ですよ」

「夜じゃないよ、只暗いんだ。ほら空を見てみなよ」


空を見たリィナの顔は凄まじい驚愕に染まった。そのままぶつぶつと手のひらに作ったレンズ状の結界に言葉を呟き、それに空を透かす。


「ここまでの道は地の割れ目を下ったと」

「ああ、昨日も言った通りそうだけど」


レンズを崩し、空を指差す。


「あれは雲なんかじゃなく霧です!、霧で隠れているあの光を隠している何処にも繋げられていない空間。あの時お祖父ちゃんのお墓を盗っていった、あれ…」


お祖父ちゃんのお墓と言う言葉で、様々な点が線に変わっていく。だが今はこの青くなった顔、震える身体を抱き寄せ、「──大丈夫、大丈夫」と背中を撫でる。落ち着いてきた頃を見計らって聞く。


「リィナ、君のお祖父さんって風の翁って言わない?」

「…はい、全部持っていかれちゃったんですけどね」


そう言うと何処か寂しそうにする。やりたいことリスト更新だ、霧から全部取り戻す。そう思い直すと──


「っ!嫌です! 着いていきます!」

「なんて?」

「…破天荒なお祖父ちゃんのことで何かあったのではと…思って。それにおばさんもおじさんもいるので置いていかれるのかと」


強く抱きついてきたリィナはそこまで言うと俺の顔から勘違いと悟ったのか、顔を赤くする。あのおじいさん、孫からこんな風に思われているのか。


「ヒューヒュー!、熱いねぇガキンチョども」

「誰だ!」

「誰って、窓から左さね」


そこには目だけそらして道の先を見る、薄く髭を生やしたエルフがいた。水晶でできた様な左耳にヒビが入っているのが見える。隣の住人か。


「熱いのは良い、あのクソを晴らしてくれる。…ほら向こうを見てみな、おじさんが誰かよーくわかるぞ」


指し示す指の先、昨日入った小さな門とは違い大きなそれ。そこから入ってくる多数の傷だらけの兵士たち、引かれた荷馬車に大量の荷物を積んでいる。


「出口を探す、人を見つける。探索、探索、探索。んでこれだ…なにやってんだろうなぁ」


ヤスリにかけられるようだと吐き捨て。右耳と右目のない、その傷だらけの姿をまじまじと晒してくる。


「仕事しなきゃここで生きていけねぇでも戦役だけはやめときな」


隣の住人は「もう一眠りするか」と部屋に頭を戻したが、俺たちは眠る気にはなれなかった。


一階に下りて二人の挨拶もそこそこに、軽い食事を取る。燻製した肉と野菜スープ。


「おじさんは変わったみたいだけど、料理は変わらなく美味しいです!」


リィナが言うのもわかる、調味料はあまり使ってはない様だけどうまい。


「変わったとは?」

「そうです。おじさんってあんなに強く無かったと思うんですが?」

「神子様それは護身としてエルフたちに武術を習っております、時間だけはあったので」


こんな広い所を運営しているのに時間がある?そんなわけと思っていると。


「あれは、人形か?」

「ええ、私たち二人だけだとここは維持出来ないもの」


手だけが精巧に作られた、木製ゴーレムが向こうで掃除しているのが見える。…気になる、【解析】を使い中を見る。


「ごちそうさまでした」


いろんな意味でな。あのゴーレムを動かす魔力の流れは見えた、後で実験してみないと。

 街に出ると周りの人々はひどくざわめき話しかけることはできない、話も早々に急ごうとミーリアの所に一直線で向かった。


「昨日はごめんね、嘘言うことになっちゃって。今戦役の帰りが遅かったのと空のあれで今、皆てんやわんやなのよ」


そう言うと一冊の本を渡してくる、だがその状態はこちらに目線も向けず無数の本と魔法陣の様なものを纏わせ世話しなく何かを書き続けている。


「中に仕事内容が書いてあるから」


二人でテーブルの椅子に座り、中身を見る。荷物運び、ポーションの作成、治療術士求む、狩猟役求む、そして戦役求む。求む系には研修もあるらしい。


「俺は狩猟役求むに行こうと思う」

「どうしてですか?」

「あれを見ていきなり戦役にはなれない、でも外に行ける狩猟役なら。それにこのマントを…あの杉の枝をもらった時の約束があるんだ」


【迷宮領域作成】と合わせて防音空間を作る、不思議そうな視線が向けられるが特に問題ないだろう。


「そのマント、やっぱりお祖父ちゃんの…。その約束で私を助けたんですか?」

「いや、約束は墓を取り戻すってこと。リィナを助けたのは…初めて自分の考えで決めたことなんだ」


そう言うとリィナは顔を赤らめている。言われたことばかりしてきた俺が命をかけて誰かを助けるのは、初めて自分で動けた様な気持ちだった。


「…んっ。えっと私も狩猟役にします、本当だったら治療術士のほうが良いんでしょうが。私も自分の考えで決めます!」


治療術ができるのか、だから狙われてもあの位の傷で済んでいた。


「俺も出来ることを言うから、リィナも教えてくれ」

「は、はい」


リィナは結界術とまあまあの治療術が使えるそうだ、そしてある程度の植物の知識も。結界術はかなり凄い、結界の形を変え使いこなすその腕は神子と呼ばれるだけあると思う。リィナにそう言うと照れたようにはにかむ。

 俺の能力──と言うか良く使いなれてわかったスキル、闇の魔力とか夢魔法とか──を話すとかなり驚いていた。魔法は境界を越えると言われ、使える者はあまりいないそうだ。


「あれ?」

「どうしたんですか?」

「いやあんなに倒したのにレベルが上がってなくて」

「狩人型はほとんど人形ですから倒したところで微々たる物ですよ」


━━━━━━━━━━━━━━━━

【ジーク】年齢:【0】

レベル:【15/9】種族:【悪魔族】階位:【下級子悪魔『1』】

職業:【ダンジョンマスター】【夢使い】【錬金術師】【死霊術士】

種族スキル:【肉体再生】【契約】【魔力耐性】【闇属性】

ステータス

筋力:【65】耐久:【68】俊敏:【101】

体力:【95】精神:【135】魔力:【133】

器用:【118】

━━━━━━━━━━━━━━━━


「さて、もう行こうか」

「はい、行きましょう!」


外を見ると空は割れた蓋の様に穴を開けて光をこぼす、少しずつ霧も解けて行っている。もうそろそろ行っても大丈夫だろう。


昨日と同じようにページに手を置き、頭に地図が浮かばせると外に出る。


街道は門から城に繋がる道から反れるほど荒れている、荒れと言っても石畳が割れて段差を作ったり剥がれていたりするくらいだ。

 その道に入って少しすると周りの建物からは何処か視線を感じる。それをリィナもわかるのか手を繋いでくる、そのまま多少の地面のヒビを錬金術で埋めながら走り、先に進むと。大きな空き地に出た、そこで何人もの人がトレーニングをしている。


「お前たちがあたら──おわっと!」


突然後ろから現れた不審者を蹴り上げようとするが、足を押さえられる。そのまま足から闇の魔力を叩きつけようとするが──


「すいません、来る途中狙うような視線があったので」


掴まれた足に痛みが走り始める、そのまま蹴り抜く前に離された。


「くび……あぁウォル隊長」

「ヒュー、ちゃんと出来るよな」

「…はい」


無理やり塞き止める様な無表情のまま挨拶をしてきた。


「俺はヒューだ」

「ジーク」

「リィナです」


挨拶が終わると、後ろの腰に提げたバックからメモを取り出すと。後ろを指差し、「とにもかくにも全力疾走、話はそれからだ」と背中を押し走ってこいと急かす。


「はっはっはっ」


息を短く吐きながら走る。

 俺は今まで十、三十、五十分と速度を下げずに走り続けている、周りの目は面白いものを見る目だがずるをしているような気になる。でも今は探索拠点が欲しいと、更に加速する。

 リィナも合わせて走れているが、走っては休み走っては休みを繰り返している。それでも結構走れている様だが、もう限界近いな。


「はっ…はっ…はっ」


だが後ろから追いかける音と軽々とした息が聞こえてくる、それがどんどん加速するが俺も負けじと魔力を噴きながら更に足を上げる。途中で影が前にかからなくなるのと合わせ曲がっていくと、誰かが横を凄い跳躍力で走路を飛び越え追い抜いた。


「ア、アーサー!?」

「そう!アーサーさ!」


追い抜いたこと、前の緑眼イケメンがアーサーだと言うこと、それは問題ない。だけど──


「前に立ち塞がるなよ! うわぁ!」

「えぇ!ちょっ! ぐふっ」


急には止まれないんだ。

 そのまま両方しりもちをつく。俺に痛みはないがアーサーは頭が高速でみぞおちに当たったんだ、そりゃ吹くだろう。「二人とも大丈夫ですかっ!?」とリィナの心配も他所に周りから笑い声が響いた。


ぶっ倒れたアーサーを地面から作った台に乗せ服を捲り上げて見た、大きめの内出血が出来てる。それをリィナの治療術と夢魔法の幻覚の応用で簡単な痛み止めをして、すぐアーサーの目は覚めた。


「やあ、君たちも狩猟役になったんだね! そこの女の子は挨拶まだだったね。俺はアーサー、アーサー・トライ」

「は、はい…あのそんなに無理しないほうが」

「そうだよ、痛み止めもどこまで効くかわかんないんだからさ」


アーサーは、跳ねる様に起き上がると手を使ったジェスチャーを交えた挨拶を始めた。倒れたばかりなのに元気が良い、それを見て直ぐに心配は消えた。


「俺は魔具、あー魔法や力がこもった道具が好きなんだ。で──」


そこまで言うと俺に振り向き。


「昨日は隊長のせいで言えなかったけど…その短剣見せてくれないかなぁ!?」


凄い勢いで顔を近づけてくる、目がキラキラしてなんかビームが出そうだ。兜がないからよくわかる。動く度に腰に差してある夢喰いに視線が動くから、腰に視線が向けられている様で……。とりあえず夢喰いを手に取ってアレ的になる前に防御だ。近づけるとアーサーは「ぁあ~!」と笑って夢喰いは…なんか震えてる様な。


「…舐めそうだから駄目」

「いきなり舐めたりしないよ! でも、そっかぁ~」


怖がってるなんて言ったら変に思われるから、ドきつく言ったら舐めることは否定しないのかよ! ああ良かった渡さなくて。 


「男の人の世界は不思議です」

「多分アーサーだけだと思うよ」


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