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柊学園の関西人  作者: 天月ゆかり
第1章 双子と幽霊
8/9

クライマックス (?)


「ねえ、キリ、セーラー服は絶対に破らないでね。後、その関西弁もやめて。」



「分かっとるって。なっさんこそ、学ランは破らんといてや。後、関西弁喋らなあかんで。」



夕食後、僕とキリはコソコソと制服を更衣室の前で交換する。


やはり背の高さは同じぐらいだが、キリの学ランは少しだけ裾が余った。

僕は余った裾を丁寧にまくり上げてから、そっと更衣室を出る。勿論、『私って美人?』と、聞けるぐらいの大きなマスクをつけるのも忘れない。


キリの学ランからは少しだけ、思春期の男の子の匂いがした。

うちのお兄ちゃんたちも中高生の時にはこんな匂いがしてたなぁ〜と、ぼんやり思い出していると、丁度、キリが更衣室から出てくる。



「………………」



「なんや。なんか言えや。」



「いや…意外と似合うんだね。見直したよ。」



「こんなことで見直されてもな。嬉しくない。」


キリは仏頂面だが、もともと中性的な顔立ちのキリにはセーラー服がよく似合っている。



「なっさんも似合っとるで。男前やん!」



「いや、全然嬉しくないから。」


僕はフルフルと手を振って、少し考えてから言う。



「じゃあ、キリじゃなくて、なっさん。頑張ってや。」



「お……おう。俺…ボク!…頑張るわっ!」


僕の真似をしているのだろうか?

全然似てないし、キリの演技が下手すぎる。






寮の前で別れる僕とキリ。

僕は男子寮に入るときは少し戸惑ったが、キリは女子寮に堂々と正面玄関から入っていった。


なんか楽しそうだったのは気のせいではないだろう………


あの変態関西人!と、僕は心の中でキリに毒を吐かずにはいられなかった。



***********



夜の12時ちょうど、一人のセーラー服を着て大きなマスクをつけた男子中学生ー神原桐人と、一人の怪しげなオカルトグッズをジャラジャラと身につけた女子中学生ー日暮凛が葉月の寮室から少し離れた廊下の角に身を潜めている。


凛は小さく、あの有名なスパイ映画の曲を口ずさんしまう。



「シッ!なんか聞こえるで。」


桐人に言われ、慌てて口を塞ぐ凛は『ギシギシギシ……』という音を耳にして、霊と通信するポーズをとりながら、音のする葉月の寮室の方へ向き直る。



しばらくすると、葉月の寮室のすぐ手前の天井板の一枚がパッカリと開いた。

それを見た桐人は口元を吊り上げ、「やっぱりな……」と、呟く。



そこから出てきたのは………



「そこまでよ!観念してお縄につきなさい!」


急に向こう側の廊下からかっこいいセリフと共に登場した、学ランを着て大きなマスクをつけた女子中学生ー日向夏に驚きを隠せない桐人、凛と、天井裏から出てきた人物。


「あなただったのね……喜多川葉月さんを怯えさせて寝不足に追い込んだのは!彼女が倒れたらどうするの?!天使顔を拝めなくなったらどうするの?!」



「はあ?!なんでなっさんがここにおるねん?!」



「ちょっと今、いいところでしょ?キリは黙ってて!」


夏は桐人に怒鳴り、その人物に向き直ると、不敵な笑みを浮かべる。



「フッ……もう、逃げられない。……ミナさんこと、古川美奈子ふるかわみなこさんっ!」


って誰だよ!と、心の中でつっこむ凛はふと、思い出す。


ーああ、そういえば、彼女は菜月と同室の…?



その時、葉月の寮室のドアがいきよいよく開け放たれ、葉月ーではなく、木村友利が顔を出す。

美奈子の姿を確認した瞬間、彼女の顔が青ざめた。



「木村友利さん。あなたも美奈子さんとグルね!」


夏は友利の顔をビシッと指差す。


今の彼女は推理小説のクライマックスシーンの探偵。

誰も彼女を邪魔することが許されない。


「さて……どこから話しましょうか?……」


と、探偵お決まりのセリフを言いかけた時、どこからともなく、教師の怒り声が聞こえてくる。


今の彼女は寮の脱走がバレてしまった生徒。

誰も逃げ出そうとする彼女を止めることができない。


いや、一人だけいる。

桐人だ。


彼はその場から逃げ出そうとする夏の首根っこを掴み、ズルズルと引っ張る。



「なっさん?これはどういうことなん?」


ドスの効いた声を夏の耳元で囁く桐人は怒りで震えている。



「いや〜あのね、キリ。昔、僕と一緒にお化け屋敷に行ったことあったでしょ?その時にさ、キリったら、お化けが怖くて暴れまくって、二階建てのお化け屋敷を崩壊させたじゃない?あれを思い出して不安になって、キリの元へ行こうとしたんだけど……先生に見つかっちゃったみたい。」


「そんな昔のこと……俺たちがまだ小学校1年生のときのことやろ。今はもう大丈夫やで。」


「ちょっと、神原くんになっちゃん!今は思い出話してる場合じゃないでしょ。幽霊の正体見たり古川美奈子だったんだから、私はもう帰るわね。先生に見つかったらめんどくさいことになるし。」


すでに、怪しいオカルトグッズをジャラジャラいわせながら走り出している凛に指摘され、ハッとする夏と桐人は転がるように、その場から離れる。



後に残されたのは幽霊の格好をした古川美奈子と、青ざめた顔の木村友利。



「なんだったの……?」



嵐のように登場して嵐のように去って行った三人の後ろ姿を見つめながら、友利は呟いた。

詳しい謎解きは次回です。

つ……つかれたぁ……( ´Д`)y━・~~

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