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柊学園の関西人  作者: 天月ゆかり
第1章 双子と幽霊
5/9

葉月の話

「幽霊ですって?!」



これを叫んだのは僕ではない。

もちろんキリでもないし、菜月でもない。

じゃあ誰が叫んだのか?


意外なことに凛だ。


ここで少し僕のルームメイトの日暮凛について説明を挟もうと思う。


彼女はしっかりものの姉御肌。

ポニーテールにしたサラサラの黒髪に切れ長の目、健康そうなスベスベ肌に羨ましい豊かな胸という言わば別嬪さん。


家には2歳児の弟と、5歳児の妹と、小学校3年生の妹がいるらしい。

お陰で家事洗濯はお手の物。僕の身の回りの世話をしてくれる。

そのせいで僕はこの学園の教育モットーである『自立力を育む』というのを卒業するまで達成できることはないだろう。


はっはっは!ざまぁみろ!柊学園よ!

日暮凛をこの僕と同室にしてしまったら最後!この僕は一生自立力がつかないぞ!



まあ、いろいろと完璧な彼女だが、少し残念なところがある。

それはオカルトマニアだということ。

寮室には彼女の机の周りに大きな段ボールがたくさん置いてあって、その中身はすべてオカルトグッズかオカルト本だ。

オカルト絡みになると、もう誰も彼女を止めることができないのだ。


だから葉月が幽霊を見たと聞いたら一番に反応するのも不思議じゃない。



「あなた、本当に幽霊を見たの?!どんな感じだった?!詳しく教えて!」


今だって、怯える葉月の肩を揺さぶりながら幽霊の様子を聞いて…..ってちょっと待った!


「凛!葉月ちゃんから離れてあげて。怯えてるでしょ?」


僕は無理矢理凛を葉月から引きはがすと、席に座らす。



「ふーん….その話俺も聞きたいんやけど、ゆっくりでええから話してくれへん?」


キリに聞かれて小さく頷く葉月。そして震えながらも昨夜の出来事を話してくれた。


*******



「私は悲鳴をあげました。そりゃそうです。目の前に….髪を振り乱した…..女が…..」



「ちょっと待って。その髪を振り乱した女は何か言ってなかった?顔は?表情は?」


凛のマシンガントークならぬ、マシンガンクエスチョンに涙目で頷く葉月。


「『出ていけ….』って唸りながら、私の方に手を伸ばしてきて………顔は長い髪で隠れていてよく見えなかったですけど….私はその後すぐに、悪いと思いながらも、ルームメイトの友利さんを起こしてもう一度廊下を確認しに行ったんです。でもその時にはなにもいませんでした。」


僕の背中を寒気が走る。

もし葉月の話が本当だとしたら、僕はもう一生夜の廊下にでれないじゃないか!



「葉月、見間違いじゃありませんか?」


菜月が半信半疑という風に聞く。



「いいえ!確かに私は見ました!髪を振り乱した女の幽霊です!後から友利さんに聞いたのですが、私の今の寮室、菜月と私が編入してくる前は使われてない空き部屋だったそうなんです。そして夜になると、誰もいないはずのその部屋からうめき声が聞こえてくるとかなんとか…..もしかしたら、住み着いていた幽霊が私に出ていけって….」


真っ青な顔でプルプルする葉月。



「えっ?そうなの?私もまだ知らなかった噂ね….」


凛は悔しそうに言うが、二人が編入してくる前にそのことを知ったとしたら、きっと幽霊を捕まえるために一晩中部屋の前で張り込んでいたことだろう。

僕は心底ホッとする。



「葉月ちゃん、聞かせてもらうけど、幽霊を見たのは何時ごろ?」



「そうですね…..変な音が鳴りだしたのが12時半で廊下を覗いて幽霊を見たのが12時40分ぐらいですかね….その2分後ぐらいに友利さんを起こして廊下をもう一度確認しに行ったときにはもう、幽霊はいませんでした。」



「おもろいやん….」


隣でキリがボソッと呟く。

まるで新しいおもちゃを見つけた赤ちゃんのように目を輝かせて、口元に悪戯な笑みを浮かべる。


ああ….

僕の経験則から言って、こんな顔をしたキリはこの後、突拍子もないことを考えるのだ。


よし、巻き込まれる前に釘を刺しておこう。


僕はキリに近づいて申し訳なさそうな表情を浮かべながら言う。



「ねえ、キリ。幽霊に呪われたらたまらないから僕はここでドロンさせてもらうよ。」


ちなみに今のセリフを訳すとこうだ。


「おい、おしゃべりで好奇心旺盛なサルみたいな関西人!調子に乗るんじゃねーぞ。くれぐれも僕を巻き込むな!」



さてと、キリにもこの意味が伝わったようだし、今回は巻き込まれなくて済みそうだ。

僕は食べ終わった朝ごはんの食器をトレイ返却口に戻すため立ち上がろうとしたところをキリに押さえられる。



「なあに?まだ僕に用かな?」

(訳:「あ?なんだよ。また僕を巻き込む気か?!」)



「何言っとんねん。幽霊に呪われるわけないやろ。大体、さっき葉月ちゃんが話してくれた話のあの髪を振り乱した女。あれはれっきとした人間や。」



「ふーん…でももしかしたら幽霊かもしれないしね。万が一のために僕はここで…..」

(訳:「あっそ….別に僕には関係ない話だ。だから巻き込むな….」)



「ふふん、なっさん….このままやと、葉月ちゃんは幽霊が怖いゆーて夜は一睡もせんと寝不足で倒れるで。彼女を安心させるためにも、ちょっと手伝ってくれへん?」



「な…..なんだって?!葉月ちゃんが倒れたら困るな…よし!キリに協力しよう。」

(訳:「な…..なんだって?!葉月ちゃんの天使顔が拝めなくなったら困る!よし、キリに協力する!」)



「クククッ..おおきになっさん!」


ひまわりのような満面の笑みを浮かべるキリ。


しまった!と思ったときは時すでに遅し。

僕は今回もキリの口車に乗せられて巻き込まれてしまうのだった。



どうしよう!!

短く終わらせるつもりだったのに、書いているとどんどん長くなっていく....

すいません...もう少しお付き合いお願いします!


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