新米冒険者
俺はあの後マリンさんにある程度注意をもらってから、解放された。
あまり目立たないほうがいいそうだ。ファンタジアに見つかる可能性が高まるからだそうだ。
俺は疲れてるのに客・・・お客様がやってきた。俺は短く「いらっしゃいませー」と言って、雑務に取り掛かろうとした。そしたら、
「おーいソラ、新規登録者だ。相手してやってくれ」
「んー」
適当に返事をした後、その人に向かう。
「お、おお願いしましゅ・・・します」
「おー」
どんだけ緊張してるんだ?見たところ高校生ぐらいか?高校生からギルドに登録できるんだっけ?学校行ってないから分からないや。
「・・・」
「・・・」
え、何この子怖い。なんで黙ってみてるの。そこに登録用紙があるから書けばいいのにな。
「私、アルゴ。15歳。聖セントシュタイン学園で今年1年になったばっかりです。彼氏はいません」
うわっ、いきなりなんだ。・・・自己紹介?ここは合コン会場じゃないぞ。君に彼氏がいるかなんて興味ない。興味がいる奴なんていないだろ。
「あの子彼氏いないみたいだぞ」
「うちのパーティーに誘おっかな」
・・・前言撤回。興味あるやついたわ。
「俺はソラ。一応冒険者だけどここで雇ってもらってる」
「へー、そーなんですか」
「うん、そうだよ」
早く終わらせよう。たぶんこの子は面倒なタイプだ。
「あっ、そうだ。あの、私の最初の依頼一緒に受けてくれませんか」
「はぁ!」
何を言っているのだ、こいつは。そんな面倒なこといやだね。
「オー、それはいいや。ソラ、お前働け。このままじゃヒモになるぞ」
「え、いや」
「嫌とかいうんじゃねぇ。反論は俺が認めん。いろいろレクチャーしてやれ。もしもこれ以上嫌というなら、ここからは出てもらうしかねえなぁ。お客様にちゃんとした態度をとれない従業員はいらんからなぁ」
くそ、芝居だとわかっててもこいつの言うことは怖い。
「・・・分かったよ」
「やりましたー!」
なぜかアルゴがすごい喜んだ。そんなにレクチャー受けたかったのかよ。まぁいいけど。
「よし、じゃあ行くか。なんか依頼を受けといてくれ・・・俺たち二人でできそうなやつな」
「分かりましたー」
そう言って、走っていった。なぜこんなに心配なのだろうか。俺もここに来てから一か月とちょっとぐらいしか経ってないからなぁ。よくわからんのだよ、この辺のこと。
「依頼受けてきましたよー」
「そっかー、じゃあ行くか」
そう言って、俺たちは草原に向かった。
完全に油断していた。まさかアルゴがこんな難易度の依頼を受けてくるなんて。
依頼の内容はゴブリンの討伐。ゴブリンも強いやつは強いんだが、弱いやつは弱い。ファンタジア(ファンタジアの治める国)の近くには弱いやつしか出てこないから初心者の練習相手にゴブリンが狙われるらしい。
アルゴが受けたのは、ゴブリンの群れの討伐だ。・・・無理に決まってるだろ。こっちは二人だよ。普通に考えて勝てるわけないじゃん。
「な、なにあれ」
アルゴがおびえた様子でゴブリンの群れの中を指さしていた。君が原因だけどね。
まぁ、いつまでもアルゴを攻めるのは疲れるし、意味もないので止めよう。
俺はアルゴが指をさしてる方向を見てみた。
そこにいたゴブリンを見て思わずしかめっ面になる。
そのゴブリンは冠を頭に乗せたゴブリンの王、ゴブリンキングだった。