4.盗賊殺し
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャッ!おいそこのお前、ここを生きて通りたければ、有り金と全部と女を置いていけっ!」
盗賊の首領が、下卑た笑みを浮かべて宣う。手下の盗賊達も汚らしい顔でゲラゲラと大笑いする。それを、グロムの隣で心底嫌そうな顔でエスカが睨んでいた。
この状況、当然だが、意図して陥った訳ではない。エスカを鍛えるにあたり、それなら町にでも言って武具を揃えた方がいいと思い至り、町へ行こうと街道に出た途端に盗賊が引っかかったのである。
「へえ。俺が置いていくのか?金と、こいつを?」
「ああそうさっ。人生には不幸な事は付き物だろ?なら、早めに俺らが授業料貰ってそれを教えておいてやろうと思ってよ」
「なるほどなるほど。確かに人生(竜生)何があるか分からないからな。不幸な事は若いうちに経験しておいた方が、長い人生(竜生)後々経験を生かして上手く生きていけるだろうな」
「ははっ、わかってるじゃねえか。ならとっとと―――」
寄越せ、と言おうとした途端、ボトリ、と盗賊の首領の両腕が落ちた。へっ?と間抜けな顔で肘から先の落ちた両腕を、盗賊の首領が見つめる。
「悪いな。俺も弟子に教えようと思ってたんだ。もし、同族である人間に襲われた場合、容赦なく切り捨てろと。いやー、命を懸けてウチの弟子の為に授業をしてもらって、悪いな」
にこやかに盗賊達に話しかけるグロムの目は一切笑っておらず、その手には微かに血がついていた。背後に控えているエスカは、突然の出来事に理解が追いつかないでいる。
「いっ、えっ、ギッ、ギャァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!う、うでっオデのウでガァアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「煩い」
泣き叫ぶ首領の首を手刀で刎ね、近くにいた盗賊に狙いを定める。
「ヒィッ―――」
流れるような動きで、次々と盗賊の首を刎ねていく。最後の一人を仕留めると、どうしていいか分からず固まっているエスカの元へと近づく。
「なあ、エスカ。いずれお前はそれなりの力を身に着けることになると思うが、力の振り方は今の内から考えておけ。どういう生き方を選ぶにしろ、意思のない力は、こんな風に、悪戯に寿命を縮めるだけだからな」
「えっと…………はい」
グロム、エスカの返事に頷いて、街道を先へと進んだ。