表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白竜グロムウェル(仮)  作者: 福田秋生
2/7

2.森の中での遭遇

 ―――ふむ。この森ならば人間も不用意に近づいてくることはないだろう。それに、食料となる物も多い。



 暗い夜の空を、一頭のドラゴンが飛んでいた。《白竜グロムウェル》それがこのドラゴンに与えられている名前である。前の住処を不用意に焼き尽くしてしまったグロムウェルは、新たな住処となる森を見つけ、早速大地へと降りた。その体躯と翼を折りたたみ、巨大な岩の様に丸くなって睡眠を始めた。



 …………。



 ……………………。



 ………………………………。



 ―――うん?この気配は…………人間か?それも、気配が弱いし薄いな。子供…………それもとても良いとは言えない生活を送っている者か。それと…………これは獣か?三匹いるな。人間の子供が肉食の獣に追いかけられているのか。知ってしまった以上、ただ放っておくというのも寝覚めが悪いか。仕方ない。



『人間の子供よ。聞こえているか?』


(誰っ!?)


『今は我の事などどうでもいいだろう。それより、助けてやろうか?』


(た、助けてっ!!まだ、死にたくないっ!!私はっ!!)


『そう慌てるな。此方の指示に従えば助けてやる。そうだな、お前から見て右に走るといい。少しすれば、白い岩の様な物(・・・・・・・)が見えるはずだ。そこに登れ。そうすれば、お前を追っている獣達を退けよう』


(…………っ)


 子供の気配が向きを変え、此方へと向かって動いてくる。体力が限界に近いのか、若干だが獣との距離が縮まり始めている。それでも、このペースならなんとか追いつかれる前に辿り着けるだろう。


 ドスッ、と子供の気配が翼の辺りにぶつかる。子供に逃げ場はなく、獣も徐々に近づいている。子供は助けてと泣き叫んでいるが、混乱して上に上る気配はない。



 ―――やれやれ、獣達は、目の前の獲物(・・)に気が行き過ぎて、私がいることにも気が付いていないようだ。本能に従っていれば、その命を散らすこともなかっただろうに。



 ムクリと、子供に注意しながら身体を起こす。ようやく気付いたのか、三匹の()も腰が引けた姿勢で牙を剥いて威嚇してくる。正直、滑稽だ。子供も混乱が行き過ぎて呆然としているが、今はそれでいい。軽く腕で薙ぎ払い、最初の命を刈り取る。次に地面に叩きつけ、二つ目を刈り取る。最後の一匹は鋭利な爪を一振りし、狼の首を切断する。そして、子供の方を見ると、明らかに怯えた表情で、一歩踏み出しただけで恐怖のあまり気絶していた。



 …………ちょっと締まらんな、と内心思ってしまったのは一人(一竜?)だけの秘密である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ