1.白竜グロムウェル
ドスッ、ガキッ、ダンッ、ザンッ。
―――煩い。
ガブッ、ガシッ、ゲシッ、ドンッ。
―――煩わしい。
急げっ!こいつが眠っている間に仕留めるんだっ!
グゥルルルルルル!
ちっ!有り得ないくらい固いぞこいつ!
ドラゴンなんだ。その辺の魔物と一緒なわけがないだろう!
へへっ。こいつを仕留めれば、鱗を売って俺らも金持ちの仲間入りだなっ!
―――調子に乗るなよ人間共。貴様らなんぞ、我の力で一捻りにしてくれるわっ!
「う、うわっ!?ドラゴンが目を覚ましやがった!?」
「に、逃げろっ!俺たちにゃあこいつを倒すなんて無理だっ!」
「キャインッ!?」
眼下には、剣を握ったまま立ち尽くす二人の男と、調教されているらしい森狼がいる。先程、執拗に無駄な攻撃を加えていたのは、この二人と一匹で間違いないだろう。欲に駆られなければ、もっと長生きできただろうに…………。
『さらばだ、人間。もし次の生があるならば、自身の分を弁え、慎ましやかに生きることだ』
口を開き、中から1000度近くもあるブレスを吐き出す。三つの生命は一瞬で焼き付き、二人と一匹の延長線上にあった木々にも火が移る。周囲の温度も数百度近く上がり、小動物や弱い魔物が住むのは不可能な場所へと成り果てていた。
『…………やりすぎたか。まあ、いい。どうせ、これだけ目立てば何者かがこの辺りに立ち入ろうとするだろう。殺したと言えども、人間に見られた以上ここに長居することも出来ないしな』
ドラゴンにとって、その象徴ともいえる巨大な体躯、巨大な翼を羽ばたかせ、《白竜グロムウェル》は天へと昇り、とある山奥から姿を消した。