7.妖精神と白兎
…あれからどのくらい眠っていたのだろう。
目を開けると、そこには見慣れた木目は無く、土の天井が広がっていた。
「…ここは…?」
辺りを見回すと、壁や天井はすべて土でできていた。洞穴の中なのだろう。出口のような穴から外が見渡せる。外は夜で、森が一面に広がっていた。
しかし不自然なのは床で、その床は色とりどりの妖精で埋め尽くされていた。
「なんで妖精が集まって寝てるの…」
呆然としていると、外から誰かが入ってきた。
逆光でよく見えないが、羽があるのでやはり妖精なのだろう。
しかし、海の上で会ったあの妖精とは雰囲気が違う。
「…あれ?妖気が少ない…」
妖精は何かを呟いたあと、ふらつきながらこちらへ近寄ってきた。
逃げようとするが、妖精が体に乗っていたようで身動きが取れない。
しかし、すぐ近くで寝ころんで、そのまま寝てしまった。
「何だったの…」
私は、妖精を押しのけて外へ出た。
洞穴を出ると、すぐ横から声がした。
「おや、あんたは…妖精たちの親玉じゃないか。ようやく起きたのかい」
話しかけてきたのは、ピンクの服を着ていて、白い尻尾と耳が生えた少女。
「貴女は誰?」
「怪しいもんじゃないよ。私は因幡てゐ。見ての通り兎の妖怪さ。あんたの名前は妖精たちから聞いてるよ」
「妖怪…伊邪那岐の言っていたことは本当だったんだ…」
「誰だいそれは?それより、あんた、生きてたんだねぇ。200年も起きないから死んでるのかと思ったよ」
「私、200年も寝てたの!?」
「私が見つけたときは既に寝ていたから、もっと寝てたんじゃないかな」
どうやら、200年以上も寝ていたようだ。寝坊にも程がある。
その後、てゐからいろいろ聞き出したところ、いい情報が得られた。
・妖精たちは、ずっと私を守ってくれていた。
・最近、ある動物が爆発的に増えている。
・少し前、八ヶ丘が崩壊した。
「あんた、結構な量の妖力を持ってるんじゃないの?」
「持ってるには持ってるけど、それがどうかした?」
「いや、普通、力を持った妖怪なら他の生物を襲うもんでしょ」
封印してもまだ結構な量の妖力が残っているが、他の生物を襲ったことは1度もない。
他の妖怪はどのくらいの力を持っているのだろうか。
「私は襲われるまでは襲わないよ」
「へぇ、優しいんだね」
「そう?」
てゐと話していると、洞穴の中から声がした。
「宇巧様がいない!」
「本当だ!」
「大変だ!」
妖精たちが起きたようだ。
「あんた達、宇巧ならさっき目覚めたわよ。ほら、ここにいるでしょ」
「わぁ、本当だ~」
「宇巧様、お目覚めになられたんですか!?」
「ようやく起きたんだねぇ」
妖精たちがこっちに集まってくる。騒ぎで目が覚めた妖精たちも、ゆっくりと近付いてくる。
一番前に出てきたのは、昔海の上で見つけた妖精。
少し間をおいて話しかけてくる。
「おはよう、お母さん」
「お母さん?…それより、貴女喋れたの?」
「お母さんが眠ってから数十年で喋れるようになったよ。」
「寂しい思いをさせたね…」
「いいや、だんだん妖精達が生まれてきたから、寂しくなかったの」
「生まれてきた?」
「っと、そこは私が説明するよ」
てゐが割り込んでくる。
「あんた、寝てる間ずっと妖力を纏っていたんだよ。偶にその妖力が集まって、妖精が生まれた。ここにいる妖精達も、みんな同じように生まれてきたよ。だから、あんたがお母さんなのさ。」
少し複雑だが、私の妖力でここにいる妖精達が生まれた、ということでいいのだろう。
「つまり、ここにいる妖精は皆私の家族ってこと?」
「そうだね」
「じゃぁ、妖精たちは何人いるの」
「多分100は超えてるんじゃないかな」
大家族の域をとっくに越している。小さな村といっても過言ではないだろう。
「そうだ、妖精の村とか作ってみようよ」
「へぇ、面白いことを考えるねぇ」
「お母さん、その村はどこに作るの?」
ちょっとした冗談のつもりだったのだが、何故か乗り気な2人。
他の妖精たちは冗談として受け取ってくれるだろうか。
「…じゃぁ、皆はどうなの?」
「さんせーい」
「賛成です」
「宇巧様が仰るなら」
「いいんじゃないかな」
...etc
皆口々に言う。結局、誰一人として反対はいなく、本当に村を作ることになった。
冗談のつもりだったが、案外面白いかもしれない。
早速、いい土地を探しにどこか遠方を目指して旅立って行く。
大量の妖精を引き連れて。
~飛行中の会話~
「てゐもついてくるの?」
「面白そうなことがあるのについていかない理由はないでしょ」
「そこまで退屈だった?洞穴の暮らしは」
「特に変わったことが無かったからね。話し相手がいるだけでも私は満足だよ」
「成程…」
「ねぇ」
最初に出会った妖精に訊く
「訊くのが遅れたけれど、まだ名前を聞いてなかった」
「言ってなかったっけ?」
「あのころは名前なんて必要なかったからね」
「そうだったっけ。私はコキアっていうの。」
「いい名前じゃん」
「伊邪那岐に付けてもらったの」
暫く飛んでいると、湖があった。かなりの大きさの湖で、水は透き通っている。
「せっかく家を作るんなら、もっと面白くしてみない?」
と、てゐ。
「何かいい案でも思いついたの?」
「隠したりしてみたらいいんじゃないかな」
いい案だとは思うが、さすがに無茶がある。
しかし、神力を使えばできるかもしれない。
入り口だけ隠して、村は空間いじって創れば場所も取らないだろう。多少無理矢理でも大丈夫だと思うが、腕が鈍ってないかが心配だ。
「その案採用。」
「あんた、大きい村をどうやって隠そうっての」
「空間をいじって作ろうと思う」
「空間を弄る?そんな真似、大妖怪でもできやしないよ」
「まぁ見ててみなよ」
神力を使って、湖の中心に土を盛り、小さい島を作る。
その島に、直径3m位の縦穴を開けてゲートの代わりにする。
ここからが大仕事。宇宙に飛んで行って、封印の髪留めを外したら、神力を開放する。
そして、宇宙に岩で星を作る。大気も忘れずに用意する。
星に竪穴を開けて、地球の縦穴と空間を繋げれば完成。
髪留めを付け直す。
無事成功したことを確認して、てゐ達のところに降りる。
「あんた、どれだけの力を持ってるんだい…1000年生きた大妖怪でもそこまでいかないよ」
「確かに1000年なんて余裕で超えてるからね」
「…しかも妖怪じゃなくて妖精なんて。普通妖精は弱いものなのに」
「そんな常識、私には通用しないね」
「ほんとに規格外だよ、あんた」
長い。
文字数をもっと増やそうとした結果がこれだよ!(かかった時間的な意味で)
毎日、毎週1000文字投稿してる人の気がしれません。
どの作者も同じようなこと言ってるけど、実際書いてみたらわかる。
長い。