第二章・・・予兆(3)
いくらか積み上げられた屍。
血の匂いも、辺りには嗅覚を麻痺させるほど充満していた。
点々と鮮やかな赤が散った雪景色の中を、シュラはアマテラスの姿を探しに自らも殿内を探索していた。
大将が陣の奥で座っているだけというのは性に合わない。普段から先陣を切って戦い、名前通りの戦神ぶりを発揮しているのだから。
後の撤収や四天王同士の連絡などは全て老師に任せ、勝手知った宮殿内を走る。勿論、君主としてすれ違う兵士達への労いは忘れない。
(これだけ探してもいないとなると、姉上にはやはり逃げられたか。)
そうこう考えながらも、足は自然とある場所に向かっていた。
通称・太陽の塔。そこは、アマテラスとごく一部の者しか入る事が許されない施設。自分がこの宮殿内で育った時ですら、片手で数える程しか足を踏み入れたことは無い。
それでも、何故かシュラの頭に躊躇いはなかった。アマテラスがいつなら、もうこの塔以外には考えられなかった。
堂々と聳え立つ塔の中を駆け上がり、最上階に辿りついた。
分厚い合金が壁を作っている中、最上階への扉を開けた瞬間、世界はがらりと変わる。
そこは、女王の私室の品格が漂っている。壁や床には暖かみのある木材が使われ、本来は冷たい窓を、趣のある障子や簾が隠していた。
しかし、廊下を照らす明かりは心細く、ひっそりと灯る蝋燭や行灯のみ。太陽の女王である彼女へと続く道がこう薄暗いのは、少し滑稽な話である。
シュラは一つ息を吐いた。最奥に控える障子。その向こうが、アマテラスの部屋だ。
刀を抜いて中に入る。
と、シュラはそこに待ち受けていた人物に我が目を疑った。