第7話 縺頑・ス縺励∩
※本作は一部に生成AI(ChatGPT)による言語補助を活用していますが、ストーリー・キャラクター・構成はすべて筆者が作成しています。
ご理解の上でお読みください。
1
まぶしい。
それが、ユウの最初の感想だった。
会場は光と音で満ちている。鮮やかな料理、グラスの触れ合う音、香水の匂い。どれも華やかなはずなのに、どこか薄っぺらい。
その中に――
(父さん……!?)
ロスティスラフの姿を見つけた瞬間、ユウの心臓が跳ねた。
少し離れた場所で、誰かと穏やかに言葉を交わしている。背筋はまっすぐで、どこにいても目を引く立ち姿。見間違えるはずがない。
(見つかったら…終わっちゃう……!!)
この国でのことも、今までのことも。
全部、父に知られてしまう。
考えるより先に、ユウは近くの長机の下へ滑り込んでいた。重たいテーブルクロスの中は、思ったよりも暗くて、少しムスク系の香水の匂いがこもっている。
息を潜める。
ヒールがいくつも、すぐ目の前を行き交っていた。
やがて、低い声が降ってくる。
「……まだか」
「もう準備はしているはずだ」
「予定より遅いな」
うめき声のように、喉の奥で押し殺した声。
何かを待っているのだろうか。
パーティーでの会話にしては、明らかに温度が違う。
(……なに?)
ユウは膝を抱えたまま、耳を澄ませる。
「今夜の"お楽しみ"だろう?」
「待たされた分、価値は上がる」
くぐもった笑い。
ぞわりと、背筋が冷える。
深桜での宴を思い出す。
あの時は、騒がしくても、どこか人の体温があった。
でも、ここは違う。
何かを――
消費する前の静けさ。
ユウは、テーブルの上から落ちてきた小さなスイーツを拾った。
色だけは華やかだが、ひとかじりすると、ほとんど味がしない。甘さも、酸味も、曖昧だ。
(おいしくないな……)
もぐもぐと咀嚼しながら、出口の方向を探る。
父はまだ少女と話している。
視線はこちらに向いていない。
(今なら……)
タイミングを計る。
だが、足音が増えていく。
ざわめきが、ひとつの方向へ流れ始めた。
「来るぞ」
誰かが、囁いた。
ユウの鼓動が速くなる。
何が来るのかは分からない。
けれど、ここにいてはいけないと、本能が告げていた。
味のない甘さが、やけに口の中に残っていた。
2
「皆様」
少女の澄んだ声が、会場の空気を撫でた。
「そろそろ、"お楽しみ"の時間となります。」
その一言で、ざわめきが止む。
ユウはテーブルクロスの隙間から、そっと外を覗いた。
現れたのは、顔を黒い布で覆い隠した従業員たちだった。
全員が同じ歩幅、同じ姿勢。手には銀の水さし。
中身は見えない。
だが、客たちの視線は、それに釘付けだった。
ごくり、と誰かが唾液を飲み込む音がする。
従業員は無言のまま、料理の上へと水さしを傾けた。
とろり。
透明とも、淡い虹色ともつかない液体が、スイーツや肉料理の上に落ちる。
瞬間。
空気が、変わった。
「……ああ」
誰かが、恍惚とした声を漏らす。
次の瞬間、客たちは一斉に皿へと手を伸ばした。
上品さも何もない。
フォークを握りしめ、皿を引き寄せ、口いっぱいに詰め込む。
「これだ……!」
「もっと、もっと寄越して!」
「やめたくない……!!」
目の色が、変わっている。
さっきまで虚ろだった瞳が、ぎらついていた。
まるで何かの枷が外れたかのように。
笑い声とも、喘ぎ声ともつかない音が広がる。
中には従業員の腕を掴み、水さしを奪い取る者もいた。
「待
て
な
い
!」
そのまま、直接口をつける。
喉を鳴らしながら、飲み干そうとする。
零れた液体が、床へと落ちた。
とろり、と。
それは、テーブルの下へと流れ込み――
ユウのすぐそばで止まった。
(……なんだろ)
鼻先に、甘い匂いが届く。
水あめのようでいて、違う。
花の蜜のようでいて、もっと濃い。
頭が、ふわりと軽くなる。
(甘くて……クセになりそうな……)
無意識に、体が前へ出る。
匂いの元へ、近づいた、その瞬間――
「……ユウ」
低い声が、頭上から落ちてきた。
心臓が、止まった。
ゆっくりと顔を上げる。
テーブルクロスの向こう。
影の向こうに立つのは――
父さん。
彼の視線は、静かで、そして鋭かった。
周囲ではまだ、貪る音が響いている。
だがその中で、父の目だけが、はっきりとユウを捉えていた。




