第5話 コントラスト
※本作は一部に生成AI(ChatGPT)による言語補助を活用していますが、ストーリー・キャラクター・構成はすべて筆者が作成しています。
ご理解の上でお読みください。
1
ホテルの正面に着いたとき、ユウは思わず足を止めた。
大都市スマラグドスでもひときわ眩しい建物で、ガラスと光が重なり合い、近づくだけで息が詰まりそうだった。
裏口から控えの部屋へ通されると、待っていた人たちが手際よくユウを椅子に座らせる。
服を替えられ、髪を整えられ、知らない香りをまとわされるたび、鏡の中の「ぼく」は少しずつ別の誰かになっていくようだった。
「……変じゃない、かな」
小さく呟いても返事はない。
誰もが忙しそうで、ユウの戸惑いには気づかないふりをしている。
やがて扉の前に立たされる。
きらびやかな音楽と人のざわめきが、扉の向こうから漏れてきた。
ユウは背筋を伸ばし、ぎこちなく一歩を踏み出す。
――ここが、選ばれた人間だけの宴の場所だ。
2
ホステルを後にしたミチルは、苛立ちを胸の奥に押し込めたまま、大都市を歩いていた。
昼頃の時間帯なのに、人の気配だけが不自然なほど薄かった。
これほどの大都市でありながら、生活の匂いがしない。
「……気味の悪い場所」
思わず漏れた独り言を、ミチルは自ら戒めるように口を閉ざす。
そのときだった。
不意に、肩に衝撃が走る。
「――っ」
反射的に振り向きかけたミチルだったが、ぶつかった相手は謝罪もなく、そのまま前へ進んでいった。
中年ほどの男。背を丸め、焦点の合わない目で、ふらふらと直線を描くように歩いている。
すれ違いざま、かすれた声が耳に残った。
「……マイ……アマ……」
意味を成さない呟き。
祈りのようでもあり、呪いのようでもある。
男は一度も振り返らず、狭い通りの奥へと溶けていった。
ミチルは、その場に立ち尽くす。
背筋に、ひやりとしたものが走った。
(……なんなのよ)
ミチルは何事も無かったかのようにまた歩き出した。
――これ以上、深入りするべきではないと、本能が告げていたからだ。




