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君のためなら、何でもできる。   作者: 足早ダッシュマン
第3章 ─泡沫の姉弟編─
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第0話 閉鎖

※本作は一部に生成AI(ChatGPT)による言語補助を活用していますが、ストーリー・キャラクター・構成はすべて筆者が作成しています。

ご理解の上でお読みください。

 「……先ほど、リン様より音声連絡が届いております」


 透明な貝殻でできた通信端末が、小さな震えとともに微かな光を放つ。

 その場にいた女中のひとりが、丁寧に身を屈めてから、録音された音声を流した。


 ――『このたび、ミチル様のために“陸の文化・教養・マナー”をお教えできる適任の家庭教師を手配いたしました。陸で生まれ育ち、実に有能な青年です。ご期待ください』


 声の主は、リンという名の商売魔女。

 深桜でも怪しげな商いをすることで知られた人物だったが、なぜか彼女は石蛇家とも浅からぬ縁を持っていた。


 貝殻の音声が止まる。

 ミチルはゆっくりと、仮面越しの視線を、部屋の向こうの水の窓へ向けた。

 そこは壁のような水圧に守られながら、人工光に照らされた海底都市を見下ろせる場所――


 だが、彼女の視線はさらにその先、遥か上にある“陸の世界”を意識していた。


 「……余所者が、来るの?」


 誰に向けたわけでもない呟きだった。

 仮面の下、ミチルの口元にわずかな嫌悪が浮かぶ。


 海の民――とくに石蛇家のような名家の血を引く者たちは、生まれながらに“陸”に対して明確な境界を引いて生きていた。

 体内に巡る水圧の適応細胞、微細な感覚毛、柔らかく発光する皮膚。

 なにより、“石化の眼”を持つ一族としての誇りと孤独。


 そんなものを、陸の人間に理解されるはずがない。


 「文化、教養、マナー……?」


 ミチルは小さく鼻を鳴らした。


 「誰が誰に、何を教えるというの」


 窓の向こう、ゆらめく水と光の狭間に、人工太陽が照り始めていた。

 今日もまた、泡の中で始まる一日。

 陸の者の足音が、もうすぐこの“静けさ”を破ろうとしていることに、彼女は小さな苛立ちを覚えていた。


    君のためなら、何でもできる

     第3章─泡沫の姉弟編─

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