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君のためなら、何でもできる。   作者: 足早ダッシュマン
第2章 ─アイドルゲーム編─
18/39

第3話 白無窮へ

※本作は一部に生成AI(ChatGPT)による言語補助を活用していますが、ストーリー・キャラクター・構成はすべて筆者が作成しています。

ご理解の上でお読みください。


1

3人(+スマホ)と出会った場所から乗り心地の悪いバスに長い間揺られ、やっと目的地に着き、3人は並んで歩いた。道すがら話す声はまばらだったが、不思議と足取りは揃っていた。


古びた建物の前で、ピッピがくるりと振り返る。看板にはかすれて読みにくい字体で「ニニチキン」と書かれていた。周囲の建物よりわずかに沈んだその店は、まるで地面に飲まれかけた小舟のようだった。


「着いたよー、ここが私のバイト先。そしておうち」


「……ここが?」

ハナが眉をひそめる。ユウは逆に、目を輝かせていた。


「わぁ!秘密基地みたい!」


「でしょ?テンション上がるでしょ?」


ピッピがドアを押し開けると、鶏の香りがむっと鼻をついた。店内は狭く、カウンターに立つ中高年の男性がこちらに目をやる。無精髭に油じみた前掛け。店の空気を象徴するような風貌だ。


「ただいまー、あと、お客さんというか……仮の同居人?」


「おいピッピ、まーた勝手に連れてきたな」


男――店長は眉間に深いしわを刻みながら、手を止めずにフライヤーをいじっている。


「今回の子たちはアイドルゲームの参加者!一時的に泊めるだけだし、私の部屋使うからさ。ね、お願い」


「……部屋って、お前、また床にチラシ敷いたままだろうが」


「そこに布団敷くから大丈夫大丈夫、ほら、私掃除早いし!」


「はぁ……」


店長はひとつ大きくため息をつくと、やがてフライ返しをカウンターに置いた。


「オーディション当日までだぞ。それ以上いたら賃料とるからな」


「イエス、店長!鶏皮あげる時は倍カリで!」


「調理法で支払いするな!」


そんなやり取りの横で、ハナは軽く頭を抱えた。ユウはといえば、もうピッピの後について地下へ続く階段を降りていた。


階段の先にあったのは、古びた木扉と、その奥にある小さな半地下の部屋。天井が低く、窓も細く、空気はやや湿っていたが――


「うわあ……狭いけど、落ち着くかも……!」


「でしょー、秘密基地その2!」


ピッピが誇らしげに胸を張る。


「私の部屋だけど、今からしばらくは3人部屋ね。なに、適当に寝て、起きて、勝つだけよ」


「……あなた、何も考えてないでしょ」


ハナは溜息をつきつつ、部屋の隅に荷物を置いた。床の上には、本当にチラシが敷かれていたが、どこか妙に整然としていて、住人の雑な几帳面さがにじみ出ていた。


こうして、即席の3人暮らしが始まった。


2

翌朝、まだ眠たげなユウと無言で髪をまとめるハナに向かって、ピッピが明るく声を弾ませた。


「よーし、今日は白無窮観光、行ってみよー!」


「え…...当日までまだ日があるのはわかるけど……」


「だからこそよ。ここを知らずに何を歌うのさ。アイドルは“土地の色”を知らなきゃ!」

ピッピは両手を腰に当て、どこからか借りてきたような名言っぽいことを言った。


そして3人が最初に訪れたのは、古びた看板がぶら下がる古着屋だった。白無窮の若者たちが日常的に着る、カラフルでリラックスした服が所狭しと並んでいる。


「はいはい、2人ともそれ脱いで。上が白、下が黒とか地味すぎ~。せっかく白無窮来たんだし、着替えよ!」


ピッピの勢いに押され、ユウとハナは戸惑いながらも店内の試着室へ。数分後、明るい色味のシャツに柔らかい素材のスカートやパンツを着た2人が姿を現す。


「おお~!いいじゃんいいじゃん、超かわい~!店長、これ全部包んで!お代はあたし!」


「えっ……!?ちょ、ピッピ!?」


「気にしなーい!白無窮歓迎キャンペーンってことで♪」


その後、ピッピはノリノリのまま次の目的地、白無窮で有名なバーガーチェーンの本店へ2人を引っ張っていった。


ボリュームたっぷりのパティに、辛さが効いたタレが絡む「ファイヤーミートバーガー」は、確かに名物にふさわしい味だった。かぶりつきながらユウが目を丸くする。


「なにこれ、うま……!こんなのはじめて...!」


ピッピはバーガーの包み紙をくるくると折りながら、笑って答えた。


「ほんとはね、最初は数週間だけの期間限定メニューだったの。でも、統一前後のゴタゴタの時、こっち側の軍の幹部がこの店に立てこもってて、その時ずーっとこればっか食べてたの。で、その写真が出回ってから一気に話題になって、常設メニューになっちゃったわけ!」


「へぇ……」


ハナが小さく感心したように呟く。まだぎこちないが、先ほどよりは少し柔らかい表情になっている。


「さて!お腹もいっぱいになったし、次は~……コスメショップ行こっか!」


と、ピッピが元気よく立ち上がるが、その瞬間、財布の中を覗いて固まる。


「……ん?あれ?おっかしいな……?最後の千クレジットどこいった……?」


「使いすぎでは?」


と冷ややかにハナが言い放つ。


「うぅ……じゃ、今日は一旦帰ろっか!お風呂入って、作戦会議だ~!」


「あの、作戦って?」


「アイドルゲームのよ!あたしたち、もう“チーム”なんだから!」


白無窮の午後の街並みを、3人の足音が並んでいく。


冗談めかしつつも、どこか本気のトーンが混じるピッピの笑みに、ユウは素直に頷き、ハナは少し眉をひそめつつも従った。


3

半地下の部屋に戻ると、夕暮れの赤い光が窓の隙間から射し込み、薄暗い室内にオレンジの影を落としていた。冷蔵庫の前でピッピが炭酸水を口にし、ベッドにどさりと腰を下ろす。


「よし、そろそろ作戦会議といきますか!」


ユウとハナも布団に腰かけ、ピッピの話に耳を傾ける。


「第1回戦は、まず“ビジュアル審査”、そのあとに指定された課題曲の披露。で、ポイントは――デビュー済みのアイドルと素人で審査基準が違うってこと!」


「違うって……どういうこと?」とユウ。


「プロは歌唱力、素人は見た目よ。ビジュアルのインパクトで勝負が決まるの」


その言葉に、ハナがわずかに身をこわばらせる。ピッピは気を遣うそぶりもなく、肩をすくめた。


「悪いけど、正直ハナちゃんのままだとちょっと……まあ、あたしがあっち側行ったとき思ったんだけど、半世紀くらい時代戻ったかって感じだったしね。髪型も制服もまじめ~で表情も硬いし、うん、正直に言ってバラエティは薄め!」


「……」


ハナがわずかに視線を伏せた瞬間、ユウがそっとバッグを開け、手のひらほどの白と青の不思議な物体を取り出した。


「……じゃあ、これ、使おうか」


「ん?それなに?」


ピッピが身を乗り出す。ハナも、思わず目を細める。


ユウは軽く息を吸ってから、そのデバイスに向かって語りかけた。


「2人をアイドル顔負けな見た目に変身できる?」


すると――。


(了解!ユウとお2人さんの為に、この機能はどうかな?)


突如として、どこからともなく聞こえてきた女の子のような声。それも、直接、脳に。


「うわっ……今の何!?」「頭の中で……誰か喋った!?」


ピッピとハナが同時に後ずさり、パッと互いに顔を見合わせた。


ユウはスマホを軽く持ち直しながら、にこりと微笑む。


「これすごいんだよ。これさえあれば、

なんでも出来るんだ!」


画面には、2人の全身スキャンらしき映像が流れ、次々と提案される衣装やメイクのサンプルが3Dで浮かび上がっていた。ときおり、スマホが補足する。


(こちらが“華やか”カテゴリ。こちらは“可憐”、こちらは“ミステリアス”……)


故郷では見た事なかった超技術に戸惑う

ハナ。


「な、なに……?魔道具……?」


ピッピの目がきらりと光る。


「……ねぇそれ、私にも使わせて?」


ユウは小さくうなずいた。


「もちろん。これで、2人ともアイドルと見間違えるくらいに整えられると思う」


ハナはしばらく画面を見つめていたが、やがて静かに頷いた。


「……なら、お願い。見た目の差で落とされるのは、イヤだから」


「おっけー。じゃ、明日は課題曲の練習をしよっか。」とピッピが口笛混じりに言いながら、ユウのスマホを興味津々に覗き込む。


こうして、最新技術と旧時代が交わる、不思議な準備期間が幕を開けた。


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