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カトリーヌとリリカのお茶会

「リリカさんはお城に住み続けるの?」


 事件後初めてカトリーヌが会いにやってきてくれた。

 うららかな日差しが窓から差し込む城の一室でリリカとカトリーヌは二人きりでお菓子を摘まみながらお茶を飲んでいた。

 事件から数日しか経っていないが、何か月も経っているような気分だ。

 久しぶりに見るカトリーヌは神殿に居た頃より元気になり輝いているように見える。


「どうでしょうか。田舎に帰りたい気もしますが……」

 

 お菓子を頬張りながら言うリリカにカトリーヌは上品に笑う。


「アレクシス様のお傍を離れるなんてできないでしょう?」


 はっきりと言われてリリカは顔を赤くしながら頷く。


「そうですね。やっぱりお傍に居たいです」


「素敵よね。二人は前世から恋人同士で、今も命がけで戦って愛を貫いたのだもの。巷ではその噂で持ち切りよ。イザベル聖魔女が居なくなったことよりもアレクシス王子と少女との恋愛話の方が盛り上がっているわね」


「えぇぇ。あれだけ黙っいてほしいって言ってたのに」


 まさか町の人まで知っているとは困るとリリカは悲鳴を上げる。

 

「それは無理よ。あの場に居た騎士が話すわよ、大きな事件だもの。それから尾ひれがついて噂が噂になってしまうのよね」


 神殿にいた先輩侍女達が噂をしている姿が容易に想像できてリリカは眉をしかめながら頷く。


「確かに、あの人達うわさ好きですから」


「解体されるって言われていたけれど神殿は残ることになったようね。聖女も希望者は残ることが出来るらしいわ」


「そうなんですか。カトリーヌ様も聖女として残るんですか?」


「私は辞退したわ。もともと聖女としての力はほとんど無いから。リリカさんこそ聖女になったら?力は相当あるでしょう?」


 カトリーヌい言われてリリカは軽く首を振った。


「聖女としてやっていく自信はありません」


 日々カトリーヌが勉強していた光景を思い出して到底自分には無理だ。

 カトリーヌはいたずらっ子のようににやりと笑う。


「そうね。それ以前にアレクシス様が聖女にはさせないわよね。王子の妻が聖女だったら政治的に利用しかねないし、リリカさんが忙しくなったら独り占めできないし」


「妻?まだ結婚していませんよ!王子様と結婚なんてできるかどうかわかりませんし」


 動揺しているリリカが面白くてカトリーヌは声を上げて笑う。


「すぐするわよ!アレクシス様ってばかなりリリカさんの事を一人占めしたいみたいだから。今日だって会うの大変だったのよ」


「へぇ?私毎日暇していますよ」


「アレクシス様が暇じゃないからよ。同席して私が変なことを言わないか見張りたかったようよ。前から思っていたけれど、独占欲強いわよね」


「そう……ですか?」


 独占欲が強いイメージなど無くリリカは首を傾げる。


「マーカス様に間に入ってもらってやっと今日リリカさんにお会いできたのよ。そうそう、私マーカス様と結婚する予定よ」


 カトリーヌの爆弾発言にリリカはのけぞって驚いた。


「そうなんですか?いい感じだなと思っていましたが急展開で驚きです」


「そうでしょう?聖魔女に命を取られていたんだと思ったら自分に正直になろうと思って!勇気を持ってマーカス様に言ったら彼も私が好きだって言ってくれたのよ」


 乙女のように目を輝かすカトリーヌにリリカは喜びで胸がいっぱいになりながら頷く。


「良かったです。……おうちの方は大丈夫なんですか?」


 カトリーヌから聞いた話ではとても父親が許したと思えない。


「リリカさんとアレクシス様の話を聞いて諦めたみたい。前世からの恋人同士の間に入る事なんてできないもの。それに、私も魔女に命を吸われていたと判明したらあのお父様が謝ったのよ。私の事なんて道具としか見ていないと思っていたけれど、あれで一応子供を心配する心は持っていたのね」


「それは良かったです」


 スッキリした顔をしているカトリーヌはとても綺麗でリリカも嬉しくなる。


「結婚式にはアレクシス様と出席してね。あ、リリカさんの方が先かしら」


「だから、全く決まっていませんってば」


 真っ赤になりながら否定するリリカを見てカトリーヌは声を上げて笑った。






お読みくださりありがとうございました。

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