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なろうラジオ大賞

「おいしい」寝言

作者: 地野千塩

 新婚二ヶ月目。私は毎日夫にお弁当を作っていた。


 夫の年収は普通。仕事も工場で食品の袋を印刷・製造していた。無口で趣味もポイ活という地味っぷりで、周囲の女友達からは「もっと理想高くした方が良かったんじゃ? 妥協した?」なんて言われるが。


 余計なお世話。私は毎朝、こうして夫の為にお弁当を作るのが楽しみだったりする。もはや趣味。今日はオーソドックスなのり弁。フライもちくわの天ぷらも綺麗にあがり、満足。ニコニコ笑いながら会社に行く。


 それでも。


 会社で一人、のり弁を食べながら考える。無口な夫はお弁当についてノーコメントが多い。そもそも仕事も忙しく、深夜に帰ってくる事もあり、仕方ないとはいえ、不満……。


 サクッとあがっているフライを食べながら、ちょっと欲深い自分が顔を出す。


 そして今夜も夫は仕事が忙しく、夜に帰ってきたら風呂に入ると、すぐにベッドへ。スマホを右手に持ちながら寝落ち。


「ちょっと郁弥くん! スマホ持ちながら寝落ちしないでー!」


 ベッドで隣にいる私は、一応注意はしたが、もう夫は夢の中。それにしても夫はメガネを外すとまつ毛も長く、横顔も綺麗でイケメンだ。「妥協した?」と笑う女友達に見せてやりたいと思った時。


「香澄、弁当うまかったー」


 寝言が聞こえた。


「は?」

「むぅ、おいしいぃ……」


 何この寝言は。顔はデレデレと締まりがなく、本音ただ漏れという感じ。いつものクールで真面目、無口な夫は一応どこへ?


 その上、夫はスマホに私の弁当の画像を保存していたらしい。わざと見たわけではない。夫の手からスマホがずり落ち、見えてしまった。


「これは困ったわ……」


 私が赤面しながら呟いていた事は、夫は何も知らない。


「まあ、明日もお弁当作り頑張りましょう」

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