9☆とある次女の帰り道
ちょっと長くなりましたZE←
最後まで読んでくれると嬉しいです^^
あ、どうも。藍堂家の次女、実景。
あたしは今、藍堂棗吾という名の馬鹿野郎でシスコンな兄貴からの頼みで、スーパーで買い物中。
今度あたしが料理当番のとき、棗兄が苦手な茄子の料理を振舞ってやろうと思う。だから、買い物かごには茄子がたくさん入ってる。
棗兄からのメールの内容には、今日買うもののリストがのってた。あたしはそれを見ながら、商品をかごに入れていく。
よし、全部入れた。後は…お菓子とかアイスとかも買おう。
……って、調子のってアレもコレもかごに入れてたら、山盛りになってた。
「~~~っ!」
かなり重い。レジまで後少し。気合いだ、あたし!
空いているレジの一歩手前まで来たところで、ババァに横入りされた。 すっげ腹立つ!
「ちっ…ざけんなクソババァあたしの後ろ並でろ」
って言ったらあたしに譲ってくれた。言ってみるもんだね。
お金を払い、袋に詰める。1袋で済んだけど…やたらとデカイし、重い。
よしっ。気合いだ、あたし!
袋を持つ。
「……?」
なんか…軽く感じる……ような気がする。
「なんでこんなに買ってるの…馬鹿でしょ」
「し、翔兄!」
ため息をつきながら、翔兄が半分持ってくれる。
「なっ、なんでここに…」
「馬鹿な妹のことだからね…余計なものたくさん買って、荷物が重くなってるだらうと思って来てみたら……」
ば、馬鹿な妹!? 翔兄は一言余計っ!
「案の定、君はこうしている」
「……悪かったね」
「はぁ。まったく、端から見てて馬鹿にしか見えない。で、その馬鹿が僕の妹なわけだよ」
あたしは、黙って翔兄の言葉を聞く。
「息を切らしながら家に帰ってくる姿を想像したら哀れに思えてね…こうやって半分持ってあげてるんだよ」
翔兄は普段すっごいイヤな奴だけど、たまにみせるこの優しさが好きだったり…。
「あああ哀れってなに! つか、頼んでないし! 1人でも帰れるし!」
また出た、あたしの悪い癖。こうやって優しくされると、素直になれなくて。
「ふうん。じゃあ、頑張って」
いきなり手を離した。
「ひゃあぁっ!?」
びっくりして、変な声が出た。普段のあたしじゃ考えられない声だったから、恥ずかしかった。ああ顔が熱い。
翔兄を見ると1人でスタスタと歩いていた。
コノヤロー。
恥ずかしかったけど、1人で持てる重さじゃなかったから、意を決して翔兄を呼んだ。
「しょ…翔兄っ!」
翔兄は止まって、振り向いた。
「……なに?」
ちょっと待て。なんでそこはかとなく笑ってやがる。楽しいか!楽しんでるのか!?
「な、なにって…その……」
あたしが言おうとしてること、分かってるよね!? この…S!
「早く言いなよ。じゃなきゃ、帰るよ」
確信犯っ! 余計顔が熱くなる。今のあたしは、きっとリンゴだ。
「荷物…って……」
声ちっさ! 自分でも分かる。今のは絶対小さい。
なんかもう恥ずかしすぎて翔兄の顔が見れない。
「なに言ってるの、聞こえない」
女は度胸! 言うのよ実景!
「荷物! 一緒に! もも、持ってよ」
「まったく、もっと素直になりなよ。かわいくないから」
そう言いながら、半分持つ。
「うるさい余計なお世話黙れ」
「あっそ。離すよ」
「だ、ダメっ! 離さないでよ」
あたしは、咄嗟に空いている手で翔兄の左手を押さえた。
「「………」」
え、なにこの沈黙。翔兄も、なにそんなに驚いてんの。
「……嘘だよ」
「~~っ、知ってるよ」
翔兄から手を離して、2人並んでスーパーから出る。
「ね、聞いて聞いて」
薄暗い道、あたしは翔兄に話し掛ける。
「?」
翔兄は、不思議そうにあたしを見る。
「数学の小テストで、あたし満点取ったんだ」
「……あり得ない」
翔兄はすっごい目を丸くさせた。
「アリエナイなんてことはアリエナイ。だよ」
ニヤリ、と笑ってみせる。
「なにがあったんだい?」
「占いで1位だった」
「……」
しばらく黙ったあと、長い長いため息をついた。
「さすが、僕の妹だけあるよ」
「そうでしょ……!?」
いきなり翔兄が頭に手を置いて、ちょっとしてから離した。
(薄暗くて、よかった…)
なんて思ってると、誰かとぶつかった。
「いってえぇ」
ぶつかった相手の声が聞こえた。絶対痛くないだろ。
翔兄を見てみる。うわっ、顔恐いよ。
「おいおい、大丈夫かよ?」
大丈夫に決まってんだろ。つか、痛くないし。擦ったぐらいだろうよ。
「やっべ、これ骨折れたな」
「大変じゃねぇか」
「慰謝料くれよぉ、病院行ってくっから」
「そっちの彼氏さんは交通費な」
ぎゃははは、と3人の男は笑う。
「「………」」
あたしと翔兄は、数秒見つめ合った。
「おいおい、俺達無視でラブラブですかぁ?」
「お熱いねぇ」
「これだから最近の若いもんは……」
また、汚く笑う。
「あ、これあたしの兄だから」
「勝手に決めつけるの、やめてほしいね」
一瞬止まった笑い声は、またすぐに響いた。
「嘘はいけないぜぇ」
「それはアンタたちでしょ」
今度こそ、笑い声は止まった。
「あん? なんだって?」
「なに、君たち耳でも遠いの?」
今度は、あたしたちが笑う。
「骨折かあ…それは大変。あたしたちが連れていってあげるよ」
「もちろん、僕たちが払うよ。カネ」
男が一歩後ろに下がった。
「っ、生意気なガキだな…」
「やっちまえ!」
あたしに向かってきた1人の男に背負い投げを食らわせてやった。
がっ、と呻き、
「ね、聞いて聞いて」
薄暗い道、あたしは翔兄に話し掛ける。
「?」
翔兄は、不思議そうにあたしを見る。
「数学の小テストで、あたし満点取ったんだ」
「……あり得ない」
翔兄はすっごい目を丸くさせた。
「アリエナイなんてことはアリエナイ。だよ」
ニヤリ、と笑ってみせる。
「なにがあったんだい?」
「占いで1位だった」
「……」
しばらく黙ったあと、長い長いため息をついた。
「さすが、僕の妹だけあるよ」
「そうでしょ……!?」
いきなり翔兄が頭に手を置いて、ちょっとしてから離した。
(薄暗くて、よかった…)
なんて思ってると、誰かとぶつかった。
「いってえぇ」
ぶつかった相手の声が聞こえた。絶対痛くないだろ。
翔兄を見てみる。うわっ、顔恐いよ。
「おいおい、大丈夫かよ?」
大丈夫に決まってんだろ。つか、痛くないし。擦ったぐらいだろうよ。
「やっべ、これ骨折れたな」
「大変じゃねぇか」
「慰謝料くれよぉ、病院行ってくっから」
「そっちの彼氏さんは交通費な」
ぎゃははは、と3人の男は笑う。
「「………」」
あたしと翔兄は、数秒見つめ合った。
「おいおい、俺達無視でラブラブですかぁ?」
「お熱いねぇ」
「これだから最近の若いもんは……」
また、汚く笑う。
「あ、これあたしの兄だから」
「勝手に決めつけるの、やめてほしいね」
一瞬止まった笑い声は、またすぐに響いた。
「嘘はいけないぜぇ」
「それはアンタたちでしょ」
今度こそ、笑い声は止まった。
「あん? なんだって?」
「なに、君たち耳でも遠いの?」
「っ、生意気なガキだな…」
「やっちまえ!」
あたしに向かってきた1人の男に背負い投げを食らわせてやった。
がっ、と呻き、残りの男2人は驚いている。
「っンのクソガキィ!」
あたしにぶつかった方の男(以下男A)と、もう1人の男(以下男B)が殴りかかろうとしてきた。
「オレ達の家族に手ぇ出すとは…とんだ命知らずだなぁ?」
「ああ、まったくだ」
不意に、後ろから聞きなれた声が2つした。
「棗兄っ、醍哉!」
「なんでここにいるの?」
2人は、お互い帰り途中にバッタリ会ったんだって。
「なっ、なんだお前たち!?」
それは愚問ってヤツだよ、オニイサンたち。
「俺達は…家族だ!」
棗兄が代表して言った。
「あら、私たちはノケモノ? それはないんじゃない?」
「凛たちも、家族っ!」
また後ろを振り向くと、あず姉と凛もいた。
「なあに絡まれてんのよ。帰りが遅いから様子見にきたら…」
「みんなそろってる!」
いや、うん。絡まれたよ。揃ってるよ。でも、そこに――
「次から次へと…なんなんだよ!?」
と、男B。
「構わん! やっちまえ!!」
と、男Aがそれぞれ叫ぶ。
「なに、やる気? 上等だね。かかってきなよ」
翔兄、挑発するねぇ。
「オレがまとめて相手してやるよ」
醍哉も言うねぇ。
なんて呑気なことを考えてたら、また違う声が聞こえた。
「ちょいと、アンタたち藍堂さん家の子だよねぇ!? なに、絡まれてるのかい?」
「田中のおばさん!」
あず姉が、口元を抑えながら言う。てか、相変わらず声大きいなぁ。
田中のおばさんは、あたしたち藍堂家の隣に住んでる優しい人。よく煮物とかを作って持ってきてくれる。これが美味。
「ちょっとちょっと、大丈夫かい?」
田中のおばさんは買い物帰りらしい。あたしと同じスーパーの袋を提げていた。
「大じょ……」
「なんだって!? 藍堂の子供だちが絡まれてる!?」
「裕次おっちゃん!」
てやんでい!とか言いながらあたしたちに近づいて来るのは、魚屋の佐久間裕次おじさん。みんなは裕次おっちゃんって呼んでる。
「なんだんだ?」
「なにか事件でもあったのか!?」
「あれ、実景じゃん! ちょっと、大丈夫?」
「醍哉後輩じゃねーか。どうした、なにがあった?」
と、わらわらと色んな人が集まってくる。
男AとBを見る。かわいそうに。完全にビビってるよ。2人で抱き合ってるし。
あたしたちは、かくかくしかじかで~とみんなに事情説明。それを聞いたみんなは、男たちを責める。
「…アンタたら、この子たちのこと知らないのかい?」
田中のおばさんが男たちに聞く。
「しししし、知らねーよっ!」
「俺たちは、藍堂家だ」
棗兄が胸をはって言う。
「藍堂家って…まさかっ……!」
男たちは顔を蒼白にする。そのまさかだよ、オニイサンたち。他の地域にも言い伝えとかあるでしょ。
“藍堂家には近づくな・絡むな・逆らうな”
あたしたちに痛い目を遭わされた人たちが口を揃えて言うこと。それが広まり、不良や暴力団やらに恐れられてる…らしい。ここ数年でそういった数が激減したそうな。
トドメに、こう言ってやる。
「分かったらさぁ、謝ってくれないかな?」
「ひぃぃぃっ!!!」
「す、すいませんでしたあぁっ」
男AとBはCを抱えて逃げていった。
一件落着。
その後はまあ、みんなとちょっと話して各々解散となり、最後に残ったのはあたしたち藍堂家。みんな、黙ってお互いを見る。
「…ぷっ」
なんかおかしくなって…あたしは笑った。吊られたように、みんなも笑い出す。
「帰ろ。あたしたちの家に」
翔兄に荷物半分持たせる。嫌がってたけど、ちゃんと持ってくれた。荷物は、すっごく軽かった。翔兄の方が身長あるからかもだけど…やっぱり、優しい。
みんなで馬鹿やりながら、帰宅。夕食の時間も、笑いが絶えなかった。
なんだかんだ言って、みんながみんな好きなんだ。
あたしはベッドに入りながら、改めてみんながいてよかったと思った。好きだと思った。
(たまには占い、信じていいかも……)
あたしがニュースの占いに感謝したのは、秘密って方向で。
★つづく★




