6☆平等鬼ごっこ
ちょっと長くなりました…
最後まで読んでくれたら嬉しいです(´Д`)
「実景が動き出したぞ!」
棗吾の掛け声に、梓と凛がキャッキャと騒ぐ。
「ボコボコにしてやるよ」
「みぃのキャラが変わったぜ!」
醍哉の掛け声に、梓と凛が色んな意味で騒ぐ。
「鬼はボコボコにする権利は一切ないよ」
「正論! 正論だけど路線ズレてるぜ翔兄」
なんかズレている翔太に、醍哉は冷静にツッコむ。
「あず姉死ねぇ!」
と実景が叫びながら、ターゲットを梓に定める。
「生きる!」
と実景に返事をしながら、必死に逃げ回る。
「違う…なんか違う!」
2人の会話に痺れを切らしたのか、棗吾が珍しくツッコミの立場に入る。
その間にも、実景と梓の間は縮まっていく。
「っしゃ! あず姉タッチ」
実景は梓を背後から余裕のタッチをする。
「最初に私を狙うなんて卑怯よ」
「凛じゃないだけマシだと思ってよ」
実景がジト目でそう言うと、棗吾が割って入る。
「そうだぞ梓!」
「棗吾テメッ、凛のことになると本当にうるっさいわね」
などと口論しつつ、鬼は実景から梓へと変わった。
「鬼になったら3秒数えろよ」
という、棗吾による新たなルールが追加され、数え始める。
梓の近くにいた棗吾と実景は、できるだけ離れようと猛ダッシュで逃げる。
数え終え、棗吾に向かってダッシュ。そんな梓の顔を見た棗吾は背筋が凍る。
「獣が…獣がいるぞおぉ!!」
「棗兄は獣じゃんか」
「さらりと上手い事言ったね」
棗吾を哀れむように言う実景に対して、翔太は誉める。
梓は運動神経はいいが、短距離はあまり得意ではない。 一見、不利にみえる鬼ごっこでも勝算はある。
それは、長期戦に持ち込む事。
いくら短距離が得意でも、全力疾走で何分も走るのは不可能。そう…作者の友加みたいに。
そこで梓は、ターゲットを地味に追いかけ続け、くたばった所でタッチ☆という作戦に出た。
なぜ、棗吾がターゲットなのか。ただ単に嫌いだから、という理由と、翔太は陸上部で醍哉はサッカー少年。2人とも、長距離は得意だから。
凛を狙う手もなくはないが、なんか気が進まない。
「これを機に死になさい、棗吾おぉおおおぉぉお!!!」
「冗談抜きで恐ぇ!」
目をギラつかせ、今までに出したことないくらいの速さで棗吾に迫る。
「あ、あず姉ちゃ……コワイ」
「あず姉の目、イッてるぜ」
「ホラー映画を見てるみたいだ」
「棗兄、南無」
と、キョウダイたちは思ったことを口にする。
今日の梓は速い。とにかく速い。どれだけ棗吾のことを毛嫌いしているかは分からないが、梓の眼中には棗吾しか映っていない。
「棗吾ぉ! 大人しく死になさあぁぁあぁい!!」
「俺は捕まるわけにはいかないんだ!」
2人の会話が、噛み合ってるようで噛み合っていない。
棗吾は、走りながら後ろを振り向き梓を見る。
「凛が見てるんだぞ!? 捕まる姿は絶対見せん!」
そう叫び、今度は左の方――凛がいる方を見る。
「俺は絶対逃げ切るぞ……凛、見ててく――」
と言いかけて、ちゃんと前を見て走っていなかった棗吾は、木の幹に勢いよくぶつかる。
「うわ、ダセェ」
醍哉が思わず漏らす。
そして、梓は最大のチャンスを逃すことなく棗吾をタッチ……というより拳をくらわす。
「ぐはあっ!」
顔面をグーで殴られ綺麗に吐血、鮮やかな棗吾の血は眼鏡と一緒に宙を舞う。
「凛、あれが棗兄の赤血球だよ」
「せっけっきゅう?」
実景の言葉に首を傾げる。
「血のことだよ」
翔太がゆっくり歩きながら2人に近づく。
「つか、なんで赤血球?」
醍哉の問いに一言、
「なんとなく」
(つまんねぇ!)
と醍哉は思ったとか思ってなかったとか。
「殺ったわ! ついに棗吾を殺ったわー!!!」
ノックアウトした棗吾の屍を見てはしゃぐ梓。
鬼ごっこから、かなり線がズレていることに気付かない。
「棗兄ちゃ……走れるの?」
不安そうに凛が言うと、誰かが答える前に棗吾が立ち上がる。
「もちろんさ! 俺は走り続ける漢だからな」
「最高にダサイよ! さすが棗兄だね」
「みぃ、テンション変だぜ」
などとやっている間に、残り時間はあと10分となった。
生き返った棗吾は、3秒数え始める。
「僕思うんだけど、」
逃げながら翔太が言う。
「なにを?」
棗吾をノックアウトさせた梓は清々しい顔で聞く。
「兄貴が凛をタッチする確率が3ケタきれるか」
「無理だな」
即答で答えたのは醍哉。
「もしかしたら実景のことタッチするんじゃない?」
「それはないよ。あたしが鬼になるのは、棗兄が鬼じゃなくなったときだから」
梓は納得したように頷くと、凛にドンマイ、と言いながら頭を撫でる。
撫でられた理由がイマイチ分からない凛は、ただ嬉しそうな顔をする。
「あぁずさぁああぁあぁ!! 凛から離れろおぉ!!!」
砂ぼこりをあげながら目をギラつかせた棗吾が迫る。相変わらず凛が好きなシスコンである。
「チッ‥‥生きてたのね」
当たり前。
今の棗吾は、凛にべったりしている梓にしか眼中にない。よって、凛から梓を剥がそうとしているのだが――。
「凛から離れろぉ!」
走ってくるなり、梓の腕を掴んで凛から離す。
「わっ!?」
まさか自分が掴まれるとは思っていなかった梓は、地面に尻餅をつく。
「やばいよ‥‥アレ、絶対あず姉怒る」
「いい様だよ。それより、鬼ごっこの敗者は兄貴でいいよ」
ルールを破って梓をタッチしてしまったから。
「そうだな。……にしても、棗兄もよく懲りないよな」
3人の視線の先には、梓に殴られ蹴られている棗吾がいる。
「……棗兄ってさ、ああされてるけど、仕返しとかしないよね」
「そうだな」
「やっぱり、そこにさ―――…」
実景の言葉は、その時吹いた風によってかき消される。
「なに、何て言ったんだい?」
尋ねてくる翔太に顔を赤くさせながら、
「な、なんでもいっ!何も言ってないし‥‥」
と言う。
とにもかくにも、この鬼ごっこは棗吾の負けとなった。
棗吾を除く5人は、軽い足取りで荷物を置いた場所へと戻る。
「花見の本番はこれからよ!」
「オーッ!!」
梓と凛の声が、響く。
★つづく★
お花見の話しはまだ続きます。
長いっすね←
次話は、藍堂家のランチタイムの予定です!




