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5☆お花見に行きましょう


「私、重大なことに気付いたわ」


マジカルバナナゲームから、3日経ったある日の夕食時間。不意に梓がそんなことを言った。


「なんだよ。あず姉、まさか今日から家事当番やってくれんのかよ?」


ご飯を口に運びながら、醍哉が問う。


「この柔らかい飯は、棗兄が炊いた米だな?」


醍哉は、不服そうな顔をしながら棗吾を睨み、


「もちろんだ。凛にも食べやすいようにだな、兄として考慮しているんだぞ」


棗吾は、メガネのフレームを持ち上げ自慢気に、


「柔らかすぎるね。ご飯というよりお粥だ」


翔太は、嫌味を言いながら棗吾のすねを蹴り、


「ねちょっててキモい」


実景は、顎を軽くしゃくらせながらご飯をかき混ぜ、


「そうかなぁ…食べやすいと思うよ?」


凛は、スプーンで掬いながら棗吾にエンジェルスマイル。


「聞いてた? 私、重大なことに気付いたわって言っのよ」


「聞いてた? 俺、あず姉、まさか今日から家事当番やってくれんのかよ?って言ったぜ」


そうだそうだ、と実景が言う。


「なワケないじゃない。私たち、今年……」


「今年、なに?」


梓が間をため、翔太が早く言えと言わんばかり先を促す。


「花見してないわ!」


「!?」


衝撃を受けたかのように、棗吾と凛が箸を落とす。


「たしかに、してなかった気がする」


「馬鹿ね実景。気がするんじゃなくて、してないのよ」


ふーん、と言いながら味噌汁を啜る。


「じゃあ決行は、今週の日曜日だ。各自それぞれ準備しておくように」


棗吾が言うと、梓と凛は嬉しそうに返事をする。


「兄貴、1ヶ月後テスト」


「あたしフルートの練習が」


「俺その日部活」


「そうかそうか。休め! 花見だ花見に行くぞ」


その後、凛からの必死の懇願で渋々承諾した3人だった。




そして向かえた花見当日。

藍堂家はバスに乗り込み、少し離れた大きくて広い花の丘公園へと出発した。


「あ、凛が寝ちゃったけど」


バスに乗り込み、早々藍堂家の眠り姫こと凛が寝たことに実景が気付く。


「うむ。寝顔もかわいいな」


「棗吾死んでくれない?」


「どうすんだよ。凛は寝たら起きねぇぜ」


「兄貴が担ぐに決まってるじゃないか」


「俵で使うような表現のしかたはやめたら?」


「じゃあ、実景が凛を運べばいいよ」


翔太はため息をつきながら言う。


「凛は俺が運ぶんだ!」


いきなり立ち上がり、大声で宣言する。


「次は~花の丘公園前~…」


ピンポーン!


「やりぃ!あたし反射神経いいわ」


「みぃは子供だな。そんなところもかわ……」


「バッ、もういいから!」

そんなこんなでグダグダしているうちに、目的の場所まで到着。


「凛は俺に任せろ!皆は荷物を頼むっ」


どこぞのアクション映画のような棗吾に対し、皆は無視する。


「着いたわよ!」


一番にバスから降りた梓は、嬉しそうに言う。


「場所探しは、実景と醍哉ね」


藍堂家恒例行事。それは、実景と醍哉による場所確保。2人があちこち走り回り、ベストポジションを見つけだす。


「ん。あず姉、荷物よろしく」


「毎年毎年メンドイぜ」


実景は梓に、醍哉は翔太に荷物を渡し、走りだした。



場所探しに走りだした2人は、ある重大なことに気がついた。


「桜がねぇ…」


「先週の台風のせい?」


そう。先週訪れた台風で、桜の花びらがほとんど散ってしまっていたのだ。


「あ……あそこはまだ桜が残ってる」


実景が指さした先には、大きな桜の木。他の家族もいるが、反対側を陣取れば問題はない。

2人はその場所へ行き、携帯で棗吾たちを呼ぶ。


――5分後――


「うん。なかなかいい場所を見つけたわね」


桜を見上げ、満足そうに頷く梓。


シート敷いて荷物を置き、靴を脱ぎ座る。

時間はまだ10時。お昼にするにはまだ早い時間給だ。そこで、時間までなにかする事になった。


「つか、みんな何持ってきたわけ?」


お菓子をつまみながら、実景が言う。


「私バドミントン」


「お約束じゃねぇか」


鼻で笑う醍哉に対し、梓はムッとなる。


「じゃあ、醍哉はなにを持ってきたのよ?」


「俺か? もちろんサッカーボールだぜ」


醍哉は自信気に少し胸を張る。


「このサッカー少年!」


梓は、あまり悪口といえないような悪口を言う。


ちなみに、棗吾は一輪車(凛に教えるため)、翔太は勉強道具とバトン、実景はフルートと野球をする道具。そして凛は、おままごとセット。


「え、凛てばそんなの持ってきたの?」


「うん! みんなで、やりたいから持ってきたの」


「僕は嫌だ」


「あたしも……ちょっと遠慮したい」


「俺も」


翔太、実景、醍哉の反対の声を聞き、梓は凛に近づくと目線を合わせるために座る。


「凛、今日は他のことして遊びましょ?」


納得がいかないのか、頬をぷくっと膨らませる。そんな凛を見て、棗吾がデレデレになる。


「じゃあ、今度おままごとしてね?」


「ええ。また今度、みんなでしましょうね」


梓と凛が指切りをし、今日はままごと以外のことをする事に。


話し合い、話し合い、話し合った結果、藍堂家は鬼ごっこをすることになった。


幼い凛が鬼になったら不公平ということで、凛には“鬼になったらタッチをせず、次の鬼を指名できる”というハンデを与えることになった。


さらに、鬼をタッチ(凛の場合は指名)する際、その人が連続での鬼にならないようにする。自分が鬼になってから、3回鬼のチェンジがあれば、その人をタッチできるようになる。

制限時間は30分。翔太のつけている腕時計のタイマーが鳴り終わったら終了、最後に鬼だった人が負けだ。


「ルールはこれでいいな?」


棗吾の確認する声に、全員頷く。


「ルール違反者と敗者は3日間の家事当番だ」


すると全員の目つきが変わり、闘争心を沸かさせる。


「ジャンケンで負けた奴が鬼だ。鬼になったらゆっくり10秒数えること」


棗吾がジャンケンをするためにグーを出すと、みんなも倣いグーを出す。


「よし……最初はグー!」


「「「「「「ジャンケン――」」」」」」




「はぁ……あたしジャンケン弱すぎ」


一番最初の鬼は実景。一発で完全敗北。実景チョキに対して全員グーを出したのだ。


(まいっか。あず姉辺りすぐタッチできるし)


そんな事を思いつつ、実景は目を瞑る。


「数えるよ!――いーち、にーぃ、さーん……」


みんなの走る足音が聞こえ始める。


「しーぃ、ごーぉ、ろーく、しーち……」


やがて足音も聞こえなくなり、実景の声が響く。


「はーち、きゅーぅ…じゅう!!」


鬼ごっこ、スタート。




★つづく★





次回は藍堂家のサバイバルです←



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