4☆マジカルバナナ!その弐
マジカルバナナゲーム
脱落者――棗吾、実景、凛
生存者――梓、翔太、醍哉
優勝商品――1週間家事免除
4回戦目は、醍哉→梓→翔太の順番でゲームが始まる。
☆マジカルバナナ~4回戦~☆
「マ・ジ・カ・ル・バ・ナ・ナ!」
この瞬間、3人の目つきが一気に変わる。
「バナナといったら、く・さ・い」
(バナナの存在否定したよ。いや、嫌いだから当然なんだろうけど)
「臭いといったら、そ・う・ご」
実景は棗吾をチラっと見る。
(あ、ショック受けてる)
そこには、軽く白目を剥いた棗吾が横たわっていた。
「棗吾といったら、ヘンタイ馬鹿」
翔太の容赦ない言葉に棗吾はさらにショックを受け、身をよじり脚でつついてみても反応がない。
(これぞ、生きた屍!)←失礼
「ヘンタイ馬鹿といったら…え、棗兄しかいなくね!?」
「その気持ちは大いに理解できるわ…でも、醍哉脱らぁぁああく!!!」
梓はロープを握り、翔太はガムテープを手に取る。
「う…うわぁぁあああぁぁああぁあ!!!!!」
数分後、口にガムテープ、手足をロープで拘束された醍哉が完成した。
「ふがぁぁあああ!!!」訳:痛ぇぇえええ!!!
「うん。最高な眺めだね」
翔太はそう言い、凛の方に目を向ける。
(絶対凛も拘束しようかなって考えてる目だっ)
「姉貴、凛はいいのかい?」
(ほらね!ほらねほらね!この鬼畜っ)
「首輪つけようか、実景?」
(だよね。翔兄は全然鬼畜じゃない)
――残り、2人――
「翔太、悪いわね。この勝負、私が勝たせてもらうわ」
翔太を上から見下ろし、ふん、と鼻で笑う。
「姉貴が勝つ?有り得ないね。勝つのはいつでも僕だ」
そんな梓に対抗し、挑発する。
2人の間に、火花が散る。
☆マジカルバナナ~5回戦~☆
「マージーカールーバーナーナ!」
いつになく真剣な梓の声音に、思わず実景と醍哉は笑いそうになる。
「バナナといったら、さーる!」
「猿といったら、哺乳類」
「哺乳類といったら、にーんげん!」
「人間といったら、愚か」
(ええぇぇえええぇ!?翔兄も人間じゃん!愚かじゃん!!」
「愚かといったら、そーご!」
(結局、棗兄に行くんだな、あず姉は)
「棗吾といったら、メガネ」
「メガネといったら、萌えっ!」
「もっ………!?」
翔太に「萌え」というのはプライドが許さなかったのだろう、「も」だけ言って口を堅く結んでしまった。
「っしゃぁぁあああああ!!」
梓は拳をこれでもかというぐらい高く上げ、勝利の雄たけびをあげている。
「私は1週間自由だぁぁあああぁぁあ!!!」
「くっ…この僕が、負けた…?」
「萌え」を言えなかっただけ。
そして、梓はガムテープとロープを手に取る。
(え、やるつもり?)
「じゃあ…勝負に負けた翔太クン、大人しくしていなさいね?」
「………」
ショックから立ち直れない翔太は、梓の声が耳に届いてなく、遠い目をし、「僕が負けた…?この僕が姉貴に負けた…?」と呪文のように繰り返している。
――数分後――
「むぐっ!?」
正気を取り戻した翔太は、今の状況に頭が追いつかないようだ。
(まさか…姉貴!?)
梓を見ると、優雅に紅茶を飲んでいる。
「あ~!最高だわ…!最高に最高だわ!!」
醍哉はつま先でチョン、と翔太をつつく。醍哉は2回頷くと、「んがんが」と言った。
(ドンマイ…だと? 醍哉、後で覚えてろ……)
(つーか、いい加減縄ほどいて欲しいんだけど…)
駄目でもともと、略して駄目もとで声をあげ、梓を呼んでみる。
「んーんー!」
「なに?実景」
運よく、梓は実景に近づく。
「んん、んんんが!」訳:縄、ほどいて!
「縄、ほどいて!…って言ってるのかしら」
一字一句間違えないで言い当てた梓に、実景は勢いよく首を縦に振る。
「ん~…今ほどくのはもったいないわね」
(なにが!? つか、縄!痛い痛い痛い痛いっ!!!!」
再び激痛がおそいかかり、また涙が溜まる。
必死の懇願と、涙のパワー(←)により、やっと縄を解いてもらった。
(うわ…ガムテープ取るのこわっ!)
「ガムテープを取ってあげるわね」
ビリィッ!!!
「い゛っ!!??」
いきなり、思いっきり、剥がされた。
あまりの痛さに、口元を両手でおさえ、その場にうずくまる。
「~~~~っ」
(………)
(みぃ、ドンマイ。そしてうずくまってるみぃウケる)
「あらあら、大丈夫?」
(確信犯っ!!)
「で、解いてもらいたい人は?」
「「「………」」」
「そう?じゃあ私は有意義な1週間を過ごさせてもらうわ」
鼻歌しながら、軽快に階段をのぼっていく。
その後、棗吾・翔太・醍哉は実景に丁寧に開放された。
その日以来、藍堂家でマジカルバナナをする日は永遠になかったのは、言うまでもない。




