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現金無双オジサン  作者: めがねスライム
5/5

5:ダサくないっすか?







 「なんだ、これ?」


 マクドルナルドの二階フロア。

 一人用カウンター席の端に座り、外を見下ろすガラスとカウンターとの細い隙間に、小さな封筒が挟まっているのを発見する。


 オレは20歳、学生だ。

 今日の夜は、友人に誘われた3、3の合コンの日だ。

 べ、別に楽しみすぎて、こんな4時間も前から一人で街に出てソワソワしていた訳ではない。

 断じてない


 「・・・・・」


 なにも書かれていない、どこにでもある茶封筒。

 感触からして、なにかが入っているように思える。


 別に封がされている訳でもないし、、、


 「チッ、札じゃないか・・・」


 一万とはいわないが、金ならラッキーと期待していた。

 入っていたのは、三つ折りにされたB5サイズのコピー用紙。


 紙を開いて内容を確認する。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

おめでとう。

まずは、これを発見できた人はスタートラインに立てたのです。

参加するかどうかは君たちが決めてください。


ステージ1:

観覧車より、水滴の顔の下を最大ズームで調べよ

そこに、徳川が残したとされる埋蔵金の手掛かりが残されている、かも


ファントムより

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 「・・・なんだ、これ?」


 ま、ありがちな悪戯だろう

 バカなことをしてるもんだ

 ・・・ん、もしや?


 突然、振り向いて周囲をうかがう


 なにもないか・・・

 一瞬、ユイチューブとかの企画か?と思ったが、隠し撮りをされている様子はない。


 「はぁ~、、、けどこれ、ピチュン君とかいう看板のことだよな?」


 [水滴の顔]とあるが、梅田に慣れている者ならワザワザ観覧車に乗らなくてもこの大きな看板についてはすぐに分かるだろう。


 「しかし、なんか雑、なんだよな・・・」


 用紙を見ながらダメ出しをする。


 問題が簡単すぎてワクワクしない。

 フレーバーテキストの徳川埋蔵金ってのも雰囲気に合わない。

 かも、って、どんな世界観?

 真面目にやりたいの?

 ふざけてんの?

 参加させる気あんの?

 中途半端なんだよ、作り込みが!

 で、なに?

 この、[ファントムより]って

 ダサ

 徳川なんだから、せめて和風にしろよ

 ファントムって、怪盗とか神出鬼没なイメージであって、

 ストーリーテラーとかには会わないって。

 つか、手紙か!

 いらんだろ、差出人

 入れたいなら、普通に[ミスターX]くらいにしとけって。


 ツッコミどころが多すぎて、逆に楽しめている気がする。


 ま、けど、この最大ズームでっては、スマホカメラのことなんだろうけど、ここはチョット気になる。


 どうせ4時間も時間余ってんだし、今日の合コンの話のネタにもなりそうだから、ちょっと看板だけでも調べに行ってみるか。




 「・・・マジ、かよ」


 観覧車に乗るには結構金が掛かるので、看板がよく見えそうな場所から、指示通り最大ズームで調べてみる。

 

 そこには、最大ズームでギリ見える程度の次なる指示書が張り付けられていたのだが、あんな場所に忍び込んで指示書を張り付けてる時点で、お遊びの域を超えている。


~~~~~~~~~~~~~~~

よく参加してくれた、礼をいう。


ステージ2:

一刻館で、味噌ラーメンを注文してください。必ず箸で食べて下さいね

                         

ファントムより

~~~~~~~~~~~~~~~~




 徳川埋蔵金はどうしたんだよっ!

 写真に収めた指示書を見て、思わずツッコんでしまう。


 くっそぉ、このパターンか。

 えっと、一刻館?・・・ああ、あった、これだろう。


 検索してみると、すぐにヒットした。

 梅田の外れにある純喫茶だ。

 店内の写真や雰囲気から、なかなかこの注文はハードルが高そうに思う。


 あああぁ、

 くっそ、ここで問題がムズかったり、面倒なら迷いなく止めんのに、中途半端に行けちゃうような場所かよ!


 ふん

 ヒマじゃねぇーんだ

 ここまでで、十分話のネタになんだろ・・・





 「えぇっと、、、味噌ラーメンなんて、あります?」


 「はぁ?ありませんよ、そんなメニュー・・・」


 それなりに広い店内

 教科書通りの純喫茶といった店内で、老夫婦とキツめのオバチャンが切り盛りしている。

 半数ほどの席が埋まっている状況で、もちろんメニューにラーメンなどは存在しない。


 「ですよねぇ~、じゃあもちろん、味噌ラーメンなんて、出来ませんよね~・・・えっと、なににしょうかな、えっと、ちょっと待って下さい・・・」


 顔が真っ赤になっているのが分かる。

 恥ずっ

 パラパラとメニューをめくり、慌ててちゃんとした注文を探す。


 「・・・・・マスターに聞いてみるよ、待ってな」


 オバチャン店員さんは、ため息を吐くように席から離れていった。


 うぅぅわ、

 マジじゃん、これ

 どうすんだよ、完全にヤバイ奴だと思われちゃったよ。

 常連さん?、みんなこっち見てるし。

 ハズぅ・・・




 「お待たせしました・・・」


 もう帰ろうかなと本気で思い出していた頃、オバチャン店員がシレッと商品をテーブルへと運んできた。


 ホットケーキだ


 「え?、味噌ラーメ、」

 「ご注文のホットケーキです。ごゆっくりどうぞ」


 困惑するオレに、有無を言わさぬ勢いでホットケーキだろ?これで間違いないよね!と、視線でマウントされる。


 ああぁぁ、もう無理

 これ以上ゴリ押しは無理

 おとなしく、ホットケーキ食って出よ。

 普通に美味そうだし・・・


 フワフワじゃない、昔ながらのホットケーキだ。

 ナイフでバターを塗り、メープルシロップを全体に垂らす。

 うん、オレ、こっちの方が好みだ。


 ナイフで切り分けながら、ふと思った。



 「・・・・・・スミマセン、お箸ってありますか?」


 近くを通っていたオバチャンに声を掛ける。


 「・・・少々お待ち下さい」


 少し睨まれた気がしたが、すぐに奥へと引っ込むオバチャン。


 「どうぞ、お箸になります」


 スゥっとテーブルに差し出されたお箸の下には、茶封筒が置かれていた。


 「っ!・・・」


 慌ててオバチャンへと振り返ったが、何事もなかったように振る舞っている。

 

 まぁそういうことなのだろう。

 つまりは、オレは正解したんだ。


 封筒を開いてみる。

 最初に、番号の付いた鍵が入っていた。

 たぶん、ロッカーのキーなのかもしれない。


 きな臭くなってきた。

 同封の三つ折りの手紙を開いてみる



~~~~~~~~~~~~~~~~~

よくぞここまでたどり着いた。

そんなキミには褒美を与えよう

○△□ビルのロッカーだ。探してくれたまえ。

ファントムより

~~~~~~~~~~~~~~~~~



 少し怖くなってきた。

 だが、報酬と言われれば行かない選択肢はないだろう。


 ホットケーキを食べながら、○△□ビルを検索してみると、風俗街の外れにある雑居ビルだと思われる。


 急いで食べおれてビルへと向かう。




 昭和のスナックなどが密集した雑居ビル。

 コインロッカーは二階の廊下の奥にあった。

 周囲を探ってみても監視カメラなどは見つからない。


 オレは、恐る恐る番号の鍵を差し込み扉を開けてみた。


 「嘘、だろ・・・」


 中には、むき出しの百万円が置かれていた。


 そしてさらに、またあの茶封筒も置かれている。


 震える手で、手紙を取り出して内容を確認する。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

コングラッチュレーション

おめでとう、その百万円はキミのものだ。

ただし、最後にキミに選択肢を与えたい


ステージ4:

このまま報酬として百万円を受け取り、このゲームを終了するか、

百万円は受け取らずに、私のスタッフとして協力するか、


どちらを選んでも不利はない。

その扉を閉めた時の行動が、答えだと判断しよう


ファントムより

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 ドキっとしてまたキョロキョロと周囲を探るが、誰も居ないし隠しカメラも発見できない。


 うぅぅぅんぅぅぅぅ・・・・


 百万円を受け取るのは簡単だ。

 けどこれは、完全に金持ちの道楽だろう

 こんなことをしている金持ちのスタッフになれば、百万円なんてすぐに超える報酬がもらえるんじゃないか?

 なにより、チョット楽しかった

 今もまだ、ドキドキしてるし・・・




 オレは、百万円には触らずにコインロッカーの扉を閉めた。


 「・・・・・・・ん?、それで、どうやって接触するんだ?」


 「大丈夫よ。ようこそ、私たちの遊び場に。歓迎するわ」


 真後ろの寂れたスナックのドアが突然開いて、妖艶な美女に声を掛けられる。


 勧められるがまま店内を覗いてみると、美女の他にも数名のオッサンや同年代の女性など5、6人が拍手で迎えてくれた。


 放心状態でフリーズしているオレに、一人のオッサンが声を掛ける。


 「我々がファントムだ。キミも我々の一員になりたいってことでいいかな?」


 中央にいたオッサンが立ち上がってオレに問いかける。




 「・・・・・まずなんですけど、ファントムってダサくないですか?」



 場は、凍り付いた。






 

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