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現金無双オジサン  作者: めがねスライム
4/5

4:ニヤリ






 「おはよう、エリカ君。改めて来てくれて有り難う」


 「おはようございます。こ、こちらこそ宜しくお願いします」


 次の日


 お互い冷静になるためにも、昨日はすぐに解散とした。

 そして改めて今日の10時に同じ場所で待ち合わせをしていた。


 「早速ではあるのだけど、詐欺や騙しじゃない証拠に、これを見てくれ」


 ボクと彼女の座る間に置いたトランクケースを開いて、中身の3億円を彼女に見せる。


 「っ!!な、ひゃ、は早くしまってっ!分かりましたから!」


 バタンッと、覆い被さるようにトランクケースを閉めるエリカ。


 「ハハハ、大丈夫だよ。周りに余り人もいないし」


 「そういうことじゃありませんっ!し、心臓に悪すぎますっ!」


 キョロキョロと周囲をうかがいながら、気持ちを落ち着けている様子だ。


 「ああ、悪かった。けどこれで、昨日の話が嘘じゃないって信じてもらえたかな?もしそこのホテルの部屋まで来てもらえたら、このトランクケースと同じ物があと3つあるけど、見る?」


 ちゃんと補充はしてある。

 いくら昨日、口では宣言したけど、会って間もない女性をいきなりホテルの部屋へは誘えなかったので、ここに集合していた。


 「・・・いえ、もう信用していますので、これで十分です、ジュンペイさん」


 「そっか。じゃあ、少し肌寒いし、長くなりそうだからそこの店にでも入ろうか。いろいろと考えてきたんだ♪相談にのってよ」


 すぐ横にあるダリーズ。コーヒーや甘い物でも食べながらダラダラしよう。


 「はい、私も少し考えてみました。なんか悪巧みみたいで少し楽しいですね」


 うん

 その通りだ

 最優先は楽しむこと

 ちょっといろいろ試しながら遊んでいこう






 二ヶ月ほど経過した、ある大学のキャンバス




 「藤宮さん、ちょっといいかな?」


 珍しい

 彼女は確か、岡本さん?だったかしら、

 あ、岡本エリカ

 そうそう、そんな名前だったわ


 「え、ああ、もちろんよ。けど、どうしたの?珍しいじゃない」


 一言でいえば陰キャだ。

 そんな子が、4年連続ミスキャンバスの私に声を掛けるだなんて。


 「単刀直入で聞くわ。アナタ、お金は好き?」


 「っ!・・・・・大好きよ。けど、それがなによ」


 キャンバス内にあるカフェ。

 オシャレだけど値段も相応で、ここを利用するは暗黙の了解として大学内でもカーストの高いグループだけとなっている。

 さらに、その最奥のソファー席。

 つまり私のこの席は、その頂点ともいえるプライベートスペースだ。


 「ですよね。そう答えると思ったわ。座っても?」


 「・・・喧嘩売ってるの?ええ、どうぞお座りになったら」


 なによ、この女

 けど、なんか雰囲気違うわね?

 前はもっとオドオドしたイメージだったけど・・・

 って、ちょっと待って

 それ、最新のエルメスのバックじゃない!

 つか、さり気に全身ハイブランドばかりじゃないの!


 「流石に目ざといわね。けど、その方が話しも早そうだし助かるわ・・・結論から言えば、アナタ、私と一緒に働かない?」


 「・・・なんとなく察したわ。誰かお金持ちのパパでも見つけたの?でも残念、私、売りや媚びはしない主義なの。そんな話はアナタに言われなくても掃いて捨てるほどあるわ。でもね、こう見えてもそんな囲われるような生き、、、、、一十百千万、十万、百万、え、一千万!!??」


 差し出された小切手には、見たこともない0が並んでいた。


 「これはアナタが協力してくれた時の報酬よ。心配しなくても愛人的な話ではないし、法に触れるヤバイものでもないわ。信じられないでしょうけど、ただの遊びなの。もし、興味があるなら私についてきて。それだけで今日の報酬として十万さしあげるわ。けど、SNSや誰かに言えば、その時点で全て終了。それだけは守ってもらうわ」


 小切手をバックにしまい、代わりに封筒から半分顔を出している十万円をテーブルへとおかれる。


 「・・・・・確認なんだけ、本当にヤバイ話しとかじゃないの?あと、なんで私なの?」


 お金は欲しい

 正直、内定をもらっている芸能プロダクションは、金になどならない。

 将来、自分を高く売るためのステータスと、セレブたちと出会いのための就職だ。


 絶対に、もう貧乏なんかしたくない!


 「えぇ、そうなるよね。私もそうだった、分かるわぁ・・・けど、そこは安心して。絶対に身の危険は無いし、騙すようなことはしないから。あと、[藤宮カレン]を選んだ理由は簡単よ。派手だから。私は地味だし裏方がお似合い。自分でも分かってるわ。だから私たちの代わりに表舞台に立ってくれる人材を探していたからよ」


 「全然地味じゃなくなってるけどね、アナタ・・・いいわ、乗ってあげる。だからこの報酬は貰うわ。あと、ヤバイって思ったらすぐ逃げるからね!で、どこまで行く気よ」


 図々しいが、十万円は有無を言わさずカバンへとしまう。

 ヤッタ!これであのコスメが買えるわぁ~。


 「グランフロント。大学前にハマーリムジンを待たせているわ。それじゃ、すぐに行きましょうか」


 「え?」




 大学前のロータリーは。すごい人集りとなっていた。


 大きなサングラスをして、堂々と私の前を歩く岡本エリカは、誰からも岡本だとは気付かれてはいない。


 「え、ほら、やっぱりカレンじゃん」

 「そうだと思ったよ、藤宮さんしかいないよな、こんなの」

 「ねぇ、カレン、イベント?撮影?」

 「さっすがだよなぁ、どこ行くんだ?」


 巨大なハマーリムジンへと群がる学生たちは、私[藤宮カレン]を見つけて納得といった様子だ。

 次々に期待と憧れを込めた質問が飛んでくる。


 「う~ん、わ私も、よく知らないんだぁ~・・・しょ、招待?そう、招待されてるの!ホホホホォォ・・・」


 嘘は言ってない

 岡本も、、、よし、歩みを止めない

 セ~フゥ

 これでいこ♪


 私たちが車に近付くと、イケメン風のハンター的な青年が4人現れて通路を作る。

 そして車のドアは、キレイなスーツを着たオジサンが開けて一礼している。


 なに、これ?

 これが世に聞く、グッドルッキングガイ?というヤツなのだろうか?

 あれ?けど最後はイケメンじゃないんだ、笑

 運転手かな?

 

 芸能人のようにカレンコールをされるなか、車へと乗り込み出発する。


 ああぁぁ・・・

 気持ちいぃぃぃ

 ゾクゾクする

 やっぱり、チヤホヤされたり、セレブな行動は最高よね☆

 つか、広っ!

 なに、これ、電車なの?

 あ、よかった、

 グットルッキングガイは仕切りの前なんだ

 ここに来られたら、どうしようかと思ったわ


 って、

 岡本は?

 あいつ、乗ってないじゃん

 あ、

 後ろのタクシーに、オッサンと一緒に乗ってるわ

 てか、

 なに、放置してんのよぉぉ!

 こんなとこに一人乗せられて、ただの罰ゲーじゃないの!

 どうしろってのよ!?


 超ぉぉぉ落ち着かんわぁぁぁ!






 梅田の中心地、グランフロント

 JR大阪駅と直結した3つの高層ビル

 2つがショッピングモール兼オフィスビル。

 最後の一つがタワーマンションとなっている。


 「ねぇ?どこいくのよ」


 またもよく目立つ場所で、グッドルッキングガイに派手に見送られて、周囲から超注目されているなか、自分は目立たない場所からチョイチョイと手招きをする岡本。


 なにこれ?

 わざとなの?

 わざと笑い者にしようとしてる?

 つか、こんなことならもっといい服着てきたのに!

 言っとけよ、岡本!!


 私の質問に全く答えることなく、スタスタ歩く岡本へとついて行く。


 人混みを抜け、タワマンへと入ったところで、受付?コンサルジュ?の方より一礼されている岡本。

 顔パスのように、エレベーターへと乗り込み、カードを認証させて最上階のボタンを押している。


 「ねぇ、いい加減なんとか言ってよ。最上階だなんて、なにがあるって言うのよ?」


 「なにもないわ、本当よ。いいから取り敢えずついて来てくれれば分かるわ」


 ペントハウスというのだろうか

 エレベータのドアが玄関であるかのように扉が開いた。

 広い玄関に豪華な廊下。

 ドアを開ければ、全面ガラス張りのリビングが広がっていた。


 「ほら、なにもないでしょ?」


 その通りだった。

 この広いリビングには不自然なほどになにも無い。

 出来たての室内のようなフローリングが広がっているだけだった。


 「すっごぉぉぉい!なにこの景色。最っ高っっっ!!こんな部屋見たことないわ」


 家具などはなにもないが、大阪を見下ろすこの景色は最高だ。

 思わずガラスに張りついて、周囲の景色を堪能する。


 「じゃあ、そのままでいいから状況を説明するわね。まず私はアナタの言うように、あるX氏に雇われて私設秘書のような立場にあるわ。けど、氏の名誉のために先に言っておくけど、アナタの言う愛人の関係ではないし、そういった行為も一切ありません。セクハラにも気を使っていただけるクリーンな環境よ。ただ、X氏は非常に変わった趣向をされているの。あ、変態ってことではなくて、面白さを追求されているのよ」


 広い室内

 家具が無い影響で、岡本の声は室内に反響している。


 「ふーん、なるほどね。こんなのまで見せられちゃったら信じるしかないわね。それで、X氏は紹介してくれるのかしら?」


 「いえ、X氏は私以外にお姿をお見せすることはません。私の仕事は彼の代弁者であり、影武者です。彼はあくまで状況を楽しまれているのです」


 スマホを取り出して誰かに連絡をする岡本。


 すると別室のドアが開き、数名が室内へと入室してきた。


 「紹介するわ。○△□弁護士事務所より出向していただいている[野上]さん。けど、もう彼も今年度で事務所を辞めて、私たちのチームに入ることになっているんだけどね」


 「え、超大手事務所じゃないですか!?エリートコースなのに、勿体ない」


 超イケメンのメガネ男子。

 20代後半のキレ者って感じだ。


 「初めまして、カレンさん?でしたよね。もし、アナタもこのチームに入れば分かりますよ」


 右手を差し出されて握手する。


 ハ、

 そんじょそこらの女子とは違うんじゃい

 この程度で、落ちはせぬよ、落ちは。


 「次にこの方は、小杉税理士事務所の[小杉]さん。個人経営の税理士さんなんだけど、もうウチの専属という形でお世話になっているの」


 ポワ~とした雰囲気の小さな女性だ。

 高校生くらいに見えるけど、服装からして年上だろうか?


 同じく右手を差し出されたので握手する。


 「私はぁ家庭があるのでぇ~、たまにしかぁ顔出さないけどぉ宜しくねぇ~」


 間延びのするゆっくりとした口調だ。

 え?

 39最!?

 二児の母???

 見えねぇぇぇ

 化け物か

 

 「ええ、びっくりするよね、小杉さんには。これで中学生の息子さんがいるのよ。で、こちらが武藤さん。リストラで途方にくれていたところを私が拾いました。だから私の助手として雑用を任せています」


 「初めまして、宜しくお願いします」


 先ほどハマーのドアを開けていたオジサンだ。

 差し出された右手に、一瞬反応してしまった私に気を使ったのか、すぐに右手は引っ込めて一礼するオジサン。


 悪気は無かったけど、これでは感じが悪くなってしまうので、こちらから右手を差しだして握手を待つ。


 「あ、スミマセン。こんなオジサンに触れさせてしまって。情けないですがエリカさんには感謝しています。ボクも家庭があるので夜にはいませんけど、ハハハ」


 軽く私の手を握り、すぐに距離をとるオジサン。

 気遣いは出来るが、自信の無さがにじみ出ているような人だ。


 「以上が私たちのチームよ。実はこの下のフロアも全て買い取っているのよ。その一つを事務所として使っているわ。ま、下のフロアは4軒に分かれているから、一つは私が住まいとしても利用させて貰ってるんだけどね」


 「なっ!岡本っ!!アンタそれマジ!?愛人ジャン!?やっぱ、アンタ、愛人ジャン!そうじゃなきゃこんなタワマン上層に住めるだなんてありえねぇぇ!!つか、アタシも住みたい!愛人なるぅぅぅ!こんなの、一千万どころじゃないじゃないっ!羨ましぃぃ」


 錯乱する

 思わず地の自分をさらけ出してしまった。


 「・・・カレンさん、気持ちはよく分かりますが、エリカ姫にその事実はありません。確かに僕たちですらX氏にお会い出来る機会はなかったのですが、逆にエリカ姫の行動は大体把握しています。そんな機会はありませんでした。ゆえに、そのようないかがわしい関係はありませんっ!」キリッ


 「ほんまもんのストーカーやもんねぇ、野上君。その為に野上君も同じフロアの事務所から帰らずに寝泊まりしてるもんなぁ~」


 初手から爆弾を投下する人々


 「うぉいっ!オープンやったら許される思うなよ?キリッってなんやねんっ!あ、武藤さん、すぐに通報してください」


 ミスキャンバスモードは早くも崩れ落ち、地のカレンでツッコミを入れてしまう。


 「はぁ~、、、私はそんな関係になりたいんですけどね。X氏が頑ななんですよ。だからまだ愛人にはなれていません」


 「な、」

 スマホを落とす武藤さん。


 はい、察し


 岡本 → X氏

 野上、武藤 → 岡本

 小杉 → 家庭


 の、図ですね、こりゃ


 「はいはい、なんかイロイロ理解しました。で、アタシが誘われた理由を聞かせてよ」


 今更なので、猫かぶりは止めて素で岡本へと質問する。


 「ああ、そうですね。状況はもう理解出来たと思うのですが、外向けの交渉やスカウトなどをお任せしたいのですよ。私が今まで担当していたのですが、これからの動きでは、企業以外の人にも声を掛けるので私には難しいのです。さらに私が裏方になることで、X氏を探ろうとする輩に、私をX氏と勘違いさせる思惑もあります」


 「え、それではエリカ姫が危険になるんじゃ?」


 これは野上くんも初耳の内容のようだ


 「いえ、そうなった場合は私がシンプルにX氏になります。そうなれば危険と言うより、面倒が増えるだけにしかなりませんし。もちろん、カレンさんにはそうならないように振る舞ってもらいますが」


 淡々と答える岡本だが、言っていることには納得だ。

 少し考え込む私に、岡本が続ける。


 「X氏よりの最初のミッションは、この最上階を希望通りの内装に仕上げることです。その為の縛りプレイとして、業者への依頼は不可。その道のスペシャリストを自分たちでスカウトして内装を仕上げなければいりません。またその為の費用として1億円を預かっています。期限は暫定ですが1ヶ月。まずはインテリアデザインと電化製品などに詳しい人物を捜したいと考えています」


 改めて発令する岡本エリカに、全員が大きく頷く。


 なるほど

 利益を求めない、金持ちの道楽スタッフという訳か


 しかし、

 面白いっ!


 この金銭感覚の無さが、ウズウズと悪巧みを感じさせる。



 「ねぇ?私がやる役割って、着飾る必要があると思うのだけど、それって自費?」



 「いえ、間違いなく必要経費です。好きなだけ揃えて下さい」



 ニヤリ








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