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勘違い6。これが主人公

「さぁ愚民共!拾え拾え!無能な領主から金を奪うんだ!」


「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」」」


巨大都市レクリアール。そこから少し離れた貧民街。所謂スラムと呼ばれる場所で金銀財宝がばらまかれていた。

ばらまいているのは2人。1人は声から男だと分かるが、もう1人は何も言わないので分からない。

しかし、スラムの人間達にとっては2人の正体などどうだっていい。なぜなら、正体よりも今ここで金を拾うことの方が大切なのだから。

とはいっても、スラムのモノたちも男の名前は知っていた。偽名だとは分かっているが、彼らは英雄たる男の名を叫ぶ。


「バグラー様ぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ありがとうございますぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

「バグラー様万歳!」

「「「「万歳!バグラー様万歳!」」」」


バグラート呼ばれる男は満足げに頷き、全ての金銀財宝をばらまいて去って行った。

その男の正体は一体……。


「シット」


「あっ。言っちゃうんだ」


そうでぇす。バグラーの正体は僕、シット君でぇす。

ちょっと色々やって金銀財宝を集めて、スラムにばらまくお仕事やってます!勿論手数料代わりにいくらかはもらってるけどね。


「伝説の義賊が、シット……・」


ばらまきに協力してもらったスフレちゃんは、うわごとのように呟いている。バグラーってちょっとだけ有名なんだよね。

悪徳領主みたいな人から金を巻き上げて、市民にお金を配る英雄みたいな感じで。


「僕としてはスラムがなくなることが理想なんだけど」


「領主からお金を盗んで?」


僕が理想を語ると、スフレちゃんは疑わしげな視線を向けてきた。

そうなんだよねぇ。僕がお金をばらまくとき、領主からお金を盗んじゃうんだよねぇ。そのお陰で、僕の活動した後の領土はひどい運営をされることが多いよ。お金がないから。

本当は領主がギリギリの生活をすればどうにかなるくらいのお金は残してあるんだけど...あま、無能な貴族は贅沢をやめられないよねぇ。


「さて、スフレちゃんは共犯者となったわけだから、もうやめられないよ」


「ん。やめない。……・でも、これはこれできつい」


結局どれもきつかったとスフレちゃんは肩を落とした。

それもそうだよね。スフレちゃんにも一緒にお城へ忍び込んでもらったから、生きた心地はしなかっただろうね。……ただ、見つかっても僕ならどうにでも出来るけどさ。


「きついだろうけど、他と比べて休みは多いから。基本的に活動は学校がない日の昼にやるよ」


「ん。分かった」


こういう忍び込むとか言うのは夜にやるというイメージがあるかもしれない。けど、収納魔法なんていうものも使える僕にとっては、警備が少ない昼の方がやりやすいんだよね。昼は来客が多いから、どうしてもそっちに使う人員が多くなるし。


「しばらくは休んで貴族の反応を見たいかな。入学まではゆっくりしようか」


「ん」


頷いたスフレちゃんはじっと僕のことを見つめてくる。何かを期待してるっぽい。

ここは当てに行かないといけないよね。好感度を上げるボーナスチャンスでしょ。とりあえず、


「…………ん」


唇を塞いでみる。するとスイッチが入ったみたいで、身体を擦り付けてきた。

当たってたって事で良いかな?今日はもう休みだし、お楽しみさせてもらおう。労いもかねて、優しくやってあげようかな。


……っていう事をしたわけなんだけど、


「……お腹空いた」


「あっ。そうですか」


スフレちゃんが求めていたものは食事だったらしい。それならそうと、10連戦する前に言って欲しかった。僕も楽しめたから良いんだけどさぁ~。

そんな生活をしていると、どんどん時は流れていく。どんどん月日が流れた結果、あっという間に入学式の日に。延期された日になったんだよ。

因みに王女のティーティアちゃんは忙しいらしくて、入学式の延期を伝えられて以降会ってない。権力争いは大変みたいだから、それも仕方ないんだけどねぇ。


「おい!そこのお前!」


僕がティーティアちゃんに思いをはせてると、誰かの大声が聞こえてきた。声の主は、小太りの男の子だね。いかにもお坊ちゃんって感じの雰囲気。ただ、服装とかアクセサリーはあんまり高いものでは無さそう。周りには取り巻き道穴子達がいるね。

そんなお坊ちゃんに話しかけられてるのは、


「何?」


「お前、ボクチンの相手をさせてやる」


「しない」


スフレちゃぁぁぁぁん!早速絡まれてるぅぅ!!????

早い。早すぎるよ。僕じゃなくちゃ見逃しちゃうね。

と、そんなふざけてる場合じゃない。流石に貴族ともめ事を起こすと、平民のスフレちゃんじゃ分が悪いね。学校ではお互い奴隷と主人の関係は忘れようってことにしてるけど、ここは助けに行った方がよさそう。


「……あっ。ごめんねぇ。その子、僕のなんだぁ」


「ん。シット」


「ん~?何だガキ。その女はボクチンのものだぞ。お前のものだって言うなら献上しろ」


うわぁ。偉そう。僕とは違う方向の悪役かな?

……いや。違う!この子、主人公じゃない?ここで悪役の僕にボコボコにされて、どん底から這い上がるタイプの。主人公だから、悪役である僕の奴隷を取ろうとしてるんじゃないかな。


「ごめんねぇ。これでも僕、こういう者なんだよ」


僕はシナリオの流れに乗って、この子を打ちのめすことにした。ここはきっと、冒頭の絶望シーンなんでしょ。原作がそうなら、僕がいじめても仕方ないよね。


「なっ!?」

「『王権の証』!?」

「お、お前が殿下の剣!?」


僕がお坊ちゃん達に見せたのは、1つのバッジ。『王権の証』って名前で、ティーティアちゃんからもらったバッジなんだ。これを持ってると、子爵と同じ権力が持てるんだって。流石に領地とかは持てないけどね。

ただ、どちらかと言えばお坊ちゃんの取り巻きはティーティアちゃんからもらったという所に驚いているっぽい。バッジの下には渡した人の名前が刻まれてるんだけど、それを見たんだろうね。


「ふ、ふん!だからなんだって言うんだ!大人しく献上しろ!ボクチンは公爵家の長男なんだぞ!」


だよねぇ~。知ってた。流石に僕もティーティアちゃんと関係を持つにあたって、その辺の貴族は調べてあるよ、

でもね、


「君の家、ティーティアちゃんとは敵対派閥でしょ?流石にティーティアちゃんの剣である僕が屈することは出来ないかなぁ」


「うるさい!ボクチンに従え!平民は貴族に従う義務があるんだ!」


おぉ。そんな義務があるのをバカっぽいのによく知ってるね。さすがは主人公って感じかな?都合の良いところは覚えてるタイプの。

でも、僕は子爵と同程度の権力があるからね。平民とはちょっと違うんだよ。権力の適用範囲の対象外さ。


「これ以上ティーティアちゃんの剣である僕にたてつくなら、ティーティアちゃんに報告しちゃうよ。取り巻き君達の顔も覚えたし、……家が残ると良いね」


僕は笑みを浮かべて脅してみる。今の貴族社会で、ティーティアちゃんはかなり恐れられてるからねぇ。普通の貴族だったら、ティーティアちゃんの関係者には全力で媚を売りに来るんだけど。

でも、さすがは主人公。そんな権力には屈しないみたいで、


「ティ、ティーティアが何だ!あんな無能に恐れるところなんて無い!ボクチンの方が偉いんだ!」


「そ、そうだ!ティーティア王女が何だって言うんだ!」

「あんな無能女、王家の恥だ!!」


さすがは主人公だね。怯えてた取り巻き達を奮い立たせたよ。これが主人公のカリスマって言うやつかぁ~。

でも、残念だね主人公君。そんなことを言っちゃったら、


「今の発言、しっかりと聞かせて頂きましたよ」


「「「っ!ティーティア様!?」」」

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